NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム

海洋保全、社業起点の長期戦略で レンゴー 代表取締役社長 兼 COO 川本 洋祐 氏

海洋保全 インタビュー 循環型経済 オープンイノベーション

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海洋汚染の深刻な原因となっているプラスチックごみをどう減らしていくか。日本経済新聞社と日経BPが主催する「NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム」でも議論されているテーマを巡り、有識者メンバー企業、レンゴーの川本洋祐社長は、生分解性の包装材の開発を展開する自社の取り組みを紹介。海洋保全をはじめとする環境問題には、あくまで社業を起点にするビジネス視点で長期的な戦略を探る必要があると呼びかけた。

祖業の段ボールから脱プラ包装推進

創業時から手掛ける段ボールをはじめ包装材を広く扱う企業として、リサイクルや省資源を進めてきた

レンゴーは段ボールに使う原紙の製紙から製函まで一貫生産しています。製紙業界は早くから古紙を回収して再利用するシステムを構築してきました。資源の有効活用を進めており、わが社の段ボール板紙のリサイクル率は98%以上です。国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」や、「ESG(環境・社会・企業統治)」の概念が定着する前から、経営に取り入れてきたと自負しています。

製紙工程では河川の水や地下水を大量に使うので、排水を処理施設で再生、繰り返し利用することで新たな取水量を減らしています。水の使用をできるだけ減らすことにも取り組んでいます。異常気象で渇水になった際に操業を続けるための事業継続計画(BCP)対策にもつながります。

環境問題への対応に関しては、他の企業をリードするくらいでなければならない。原材料製造や調達の川上から、最終製品の川下まで、一貫して環境に対応することが経営課題であると考えています。

海に流れるプラごみを解決するため、リサイクルや生分解性素材の開発に注力する

海は母親の胎内にある「羊水」と同じように生命を育むものです。海があるからこそ、様々な生物が存在できる。だから、経済活動を高めて暮らしを豊かにするためには、海の汚染が進むのはまずい。包装を手がける会社として、海の保全に貢献するのは責務なのだと考えています。

祖業の段ボールを起点に紙製の容器や袋、プラスチックフィルムの軟包装材に事業を広げてきました。紙製品はかなり回収して再資源化できていますが、プラスチックの軟包装材は改善の余地があります。

使用済みの包装が河川や海に流出するのを防ぐには、ポイ捨てをやめてもらうのが大前提ですが、リサイクルをもっと推進しなければなりません。グループを挙げ「リデュース(Reduce=発生抑制)」「リユース(Reuse=再利用)」「リサイクル(Recycle=再生利用)」の3Rに取り組んでいます。

リデュースとしてはフィルムを薄くしたり、紙やバイオマス素材を使ったりという技術開発を行っています。一例を紹介するなら、バイオマスプラスチックと紙を組み合わせたサンドイッチ用の包装というものもあります。

リサイクルの例では、飲料用ペットボトルのラベルやアイスクリームの蓋にリサイクル素材が使われるようになりました。再資源化をさらに進めるには、包装用フィルムを原料に戻すケミカルリサイクルやモノマテリアル化が必要で、そのための研究開発も進めています。複数の素材を組み合わせずに1つの材料で同じ機能を発揮させることができれば、モノマテリアル化が実現し、リサイクルしやすくなります。

この取り組みは私たちだけではできるものではありません。化学など異業種の企業の研究陣とも協力しながらオープンイノベーションで進めていて、私たちが手がける全ての包装資材を循環資源とすることを目標にしています。

5ミリメートル以下のマイクロプラスチック問題解決にも挑戦する

マイクロプラスチックは水質汚染を起こすだけでなく、食べた魚を人が摂取すれば「食の安全」にも関わってきます。その中には、プラごみが海に流出して粉々になってできるもののほかに、化粧品など製品の微粒子に由来するものがあります。

木材由来のセルロースが球状の微粒子になった「ビスコパール」という製品があります。生態系などを守りつつ適切に管理された森林から産出されたことを示す「FSC認証」を受けた木材から作っています。土壌だけではなく海水中でも生分解するという特徴があり、2021年に海洋生分解性の国際認証である「OK biodegradable MARINE」を取得しました。

環境保全に向けた取り組みは企業の社会的責任として意味が大きい

22年には、金津工場(福井県あわら市)で年産120トンのプラントを新設しました。環境保全に役立つプロジェクトに対して金融機関が融資する「グリーンローン」で、必要な資金を調達しました。

日本の河川は昭和の後半までは汚れていました。例えば、製紙工場が多い静岡県では汚水によるヘドロがたまって問題になっていました。大阪市の道頓堀川もメタンガスがポコポコわきあがっていました。数十年かけて行政や企業の努力によってよみがえりました。

私たちは森林資源を有効活用しながらビジネスを展開しています。その活動を通じて森林の保全につながっています。森林を守ることで、その栄養分が川や海に流れ込み、海の豊かさを守ることになります。私たちの製品が、それを利用してくれる企業の製品価値を高めて、消費者に使っていただけたらいいと考えています。顧客企業と協力しながら社会的責任を果たしていきたい。

短期的に利益を追求するやり方、あるいは逆にビジネスを離れた視点では、環境問題の解決につながりません。長期的な視点で取り組めるように収益を上げるビジネス戦略を考えることも、企業の社会的責任ではないでしょうか。

記者の目 植物系素材、再評価進む


脱プラスチックで世界の動きは活発だ。2018年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)は、プラスチックごみ削減の数値目標を定めた「海洋プラスチック憲章」を採択。法的拘束力を持つ国際条約も24年の採択を見込む。

20世紀は石油の世紀だった。自動車などの燃料としてだけでなく、石油化学製品も生活に不可欠になった。丈夫で加工しやすく、安価なプラスチックはあらゆる商品に使われる。一方、河川や海に流出するプラごみ問題が深刻になり、植物成分のセルロースが注目され始めた。

セルロースは土壌や水の中で微生物によって比較的短期間で分解される。使い捨て製品の減少とリサイクルの徹底が最優先だが、河川に流れ出てしまうのをゼロにはできないため、生分解性素材代替品開発が進む。

植物は主にセルロースとリグニンという物質からなり、特にセルロースは地球上に1兆トンあるとされる。円安などで高騰した輸入木材に代わる国産資源の流通増加も追い風だ。端材などの活用で資源の有効活用も期待できそうだ。

セロハンもセルロースから作られ、生分解性が高く見直しが広がる。ストローやフィルムに採用する企業が出てきており、古い素材が環境という新たな価値で再評価される流れは強まっていくだろう。

(編集委員 青木慎一)

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