NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム

よみがえれ! マングローブ 地域の人々と共に取り組む 30年間のプロジェクト

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海洋保全 脱炭素 気候変動

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商船三井グループは、インドネシア南スマトラ州のマングローブ林の再生・保全を行うブルーカーボンプロジェクトに2022年1月から参画している。既存林の保全に加え、エビ養殖のために伐採されて荒廃した土地に30年間かけてマングローブを植林し、大気中のCO2を吸収・固定する「ブルーカーボン生態系」を復活させる壮大な事業だ。プロジェクトの担当者に事業にかける思いを聞いた。

マングローブ林を再生してブルーカーボン生態系を創出

商船三井は企業理念に「青い海から人々の毎日を支え、豊かな未来をひらきます」とうたう。海が起点の社会インフラ企業として事業領域を広げながら新たな成長を目指すため、グループ経営計画「BLUE ACTION 2035」をスタートした。

23年4月には同社の環境戦略である環境ビジョンを更新し、35年に輸送における温室効果ガス排出を19年比で45%削減、50年にグループ全体でネットゼロ・エミッションを達成する目標を設定した。海運は陸運や空運と比較して効率的な輸送方式だが、国際海運全体のCO2排出量は世界の2.1%を占める。

商船三井は、自社のバリューチェーンからの排出の削減を行うと同時に、大気中のCO2を除去・貯留するネガティブ・エミッションの規模拡大に取り組み、ネットゼロを目指す。その取り組みの一つがインドネシア南スマトラ州でのブルーカーボンプロジェクトへの参画だ。

発端は、エネルギー営業本部エネルギー営業戦略部カーボン事業チームでチームリーダーを務める香田和良氏が社内新規事業提案制度を活用した提案だ。「当社は海運業を通じて世の中の基盤を支えているという自負を持っていますが、私たちにとって重要なステークホルダーは今を生きる現代世代だけでなく、将来の世代も含まれるべきではないのか。そうした問題意識から、マングローブ林の再生を地域と共に推進することを提案し、22年1月から本格的に活動を始めました」と話す。

インドネシアの南スマトラ州ではエビの養殖が盛んであり、養殖池の開発のためにマングローブ林が大量に伐採されてきた過去がある。

マングローブは、大気中のCO2を光合成によって取り込み、有機物として隔離・貯留する。こうして取り込まれた炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれ、枯死した後も土壌中に堆積することで炭素が蓄積され続ける。

熱帯林などと比較してもマングローブ林は多くのCO2を吸収し、気候変動の影響緩和に大きく貢献している。「伐採されたマングローブ林はそのままでは復活しません。再生には地域の人々と共に、放棄された土地に植林して、育て、保全していくことが必要となります」(香田氏)。

地域の文化と考えを理解し課題解決に共に取り組む

商船三井はインドネシアでのマングローブ林保全の実績を持つワイエルフォレストをパートナーとしてプロジェクトを進めている。森林の再生・保全事業を推進する同社は現地での幅広いネットワークを持つ。商船三井はこの事業のスポンサーであると同時に、事業のマネジメントをも担う。それだけではなく、実際にチームのメンバーが定期的に現地を訪れ、地元の人々と共に汗を流す。

同チームの池永邦彦氏は、そのプロジェクトの苦労を語る。膝までつかるぬかるみの湿地で地域住民と共に、採取したマングローブの種子を手作業で植える作業を繰り返す。100人規模で植林作業を実施するが、すべてがうまく根付くとは限らない。植林に適した季節は雨期に限られる。首都ジャカルタから植林地までの移動はほぼ1日がかりだ。自然を相手にした作業のため、柔軟な対応が求められる。

「マングローブ林の再生には30年、50年という長い年月がかかります。地域の人々の文化や考え方を理解し、課題を共有しながら共にプロジェクトを続けていくことが重要です」と池永氏は話す。

プロジェクトでは30年間で約9500haの土地にマングローブを植林していき、1万4000haの既存林を保全する計画だ。さらに、香田氏はその先も見据えている。「植林や森林保全に取り組むだけでなく、マングローブ共生型の養殖なども導入し、現地の人々が自然の恵みを実感できるようにしていきたい。そうした活動を通じて、人々がマングローブ林の価値を再認識し、自発的に大切にすることで、両者が共存できるような社会にしていきたい」という。

池永氏も「このプロジェクトを続けていくことで、こうした取り組みに対する賛同者が増え、気候変動などさまざまな社会課題の解決につながるような動きが出てくること、自然資本や生物多様性といったテーマへの関心が増え、社内外にインパクトを与えていくことが、私たちカーボン事業チームの目的です」と続ける。

まだ始まったばかりの事業だが、商船三井という企業の枠を超えて地球の持続可能性を高めるインパクトを与え始めている。

【日経からのお知らせ】NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム
海の環境を守り、その資源を正しく利活用する方策や仕組みを考え、内外に発信していく目的で、日本経済新聞社と日経BPはNIKKEIブルーオーシャン・フォーラムを設立しました。海洋に関連する多様な領域の専門家や企業の代表らによる有識者委員会を年4回のペースで開き、幅広い視点から議論を深めて「海洋保全に関する日本からの提言」を作成します。

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