日本経済新聞社と日経BPはリアルとオンラインのイベント「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」のジェンダーギャップ会議(後援・内閣府)を2022年12月9日に東京都内で開催した。「女性リーダー育成を止めない、ダイバーシティー経営の本気」をテーマに、女性活躍の先進企業が取り組みを紹介した。パネル討論では人材育成に力を入れる企業の実例のほか、ダイバーシティー(多様性)の推進者が課題解決への突破力についてそれぞれ話し合った。今回の催しは日経SDGsフェスの一環。(肩書は開催時点)
このうち、12月9日に開催したトラック「ジェンダーギャップ会議」のプログラムから、パネル討論をダイジェスト版でご紹介します。
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【パネル討論】現場を整え女性活躍推進
ARTISTIC&CO.GLOBAL 代表取締役 金 松月 氏
エリクソン・ジャパン 代表取締役社長 ルカ・オルシニ 氏
日東電工 専務執行役員 人財本部長 大脇 泰人 氏
大脇 女性リーダー育成プログラムを実施しており、様々なリーダー像があって良いことを伝えている。価値観が変わったと前向きな声が多い。
オルシニ 女性がより高いレベルで仕事するためには、社会、組織、個人のバリアーを壊す必要がある。メンターシップとコーチングが重要だ。
金 会社の空気が平等なことが一番ではないか。当社は性別を理由に引け目を感じなくていいように配慮を徹底している。加えてロールモデルがいることで、女性も上を目指す雰囲気をつくっている。
オルシニ 文系卒でも学習意欲があればコーチングやオンザジョブトレーニングのスキル開発で幅が広がる。技術企業だから女性を雇えないなどの言い訳を許さないことだ。
大脇 環境に優しい製品は作る人にも優しい製品であり女性活躍の場の創出につながった。豊橋工場では女性中心に製造ラインを立ち上げようとしている。明るく清潔感があり、まもなく稼働する。
オルシニ コミュニティーも重要。当社ではスウェーデンで1993年に女性社員のコミュニティーが生まれ成果が出て世界に展開している。
大脇 会社全体で意識を変えていくためには、拠点間の横のつながりとトップダウンをミックスすると効果的だ。
オルシニ 国籍や言語などの多様性で成功してきたが性別も同じだ。CEOになるつもりで頑張ってほしい。
金 女性だから、男性だから、日本人だから、外国人だからと、できない、やらない理由を探さずに、可能性にチャレンジしてほしい。
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【パネル討論】格差解消の主役は男性だ
PwC Japanグループダイバーシティ リーダー PwCあらた有限責任監査法人パートナー 梅木 典子 氏
明治安田生命保険 執行役員 人事部長 片山 圭子 氏
伊藤 女性の部長、執行役員を増やすには母集団となる課長、係長を育てることが第一だ。女性の能力を引き出し生かすには、男性や管理職のバイアスを除くことも大事だ。
梅木 インクルージョン(包摂性)がより重要であるためI&D(インクルージョンとダイバーシティー)と表現している。大きなブレークスルーは、ダイバーシティー促進などの企業文化を醸成するための週間イベント実施を通して、また、ジェンダー平等の主役は多数派の男性だと明確に打ち出したとき起こった。今期は採用、人事評価、育成プログラムなど主要機能にI&Dを組み込んだ。
片山 制度を利用できる風土が醸成されているか。管理職登用はプーリング(一元管理)する必要がある。社長が繰り返し経営課題だと伝えたこと、組織運営、女性管理職目標の社外公表などの取り組みがブレークスルーだった。
梅木 KPI(成果指標)を見直しジェンダープロポーショナリティ(性別割合)と男性育休取得率のモニタリングを強化した。昇進者の女性比率は母集団の女性比率と同じであるべきだ。
片山 働き方をさらに柔軟にできないか。まず年功的要素を廃止したい。
伊藤 本気度を示すため役員報酬の項目に従業員エンゲージメントを入れた。やりがいなどにコミットすることで、社員が成長を実感でき、企業の持続的成長につながる。
梅木 インクルーシブ(包摂的)なカルチャーがない企業は今後選ばれなくなって成長できない。
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違和感、声に出せる環境を
「これって、どうなんだろう」「なんだかおかしい。変じゃないか」。日ごろ感じているが、思い切って口には出せない。ためらって我慢している。日本経済新聞はそんな世の中のモヤモヤした言葉を集め、2022年9月に広告紙面で紹介した。
「女性だけお子さんが小さいからとプロジェクトから外されるのマジで謎」や「男性上司と同じように厳しくすると、女性上司はより冷たい印象を持たれる」など、女性の胸のうちを切り取ってきた。
違和感は男性にもある。「出世したいならゴルフやりなよって言われる。僕の趣味は筋トレです」「面談で育休取れますか?と聞いたら偉くなりたくないの?と言われた」
日本経済新聞は今後も企業や個人から小さな声を集める予定だ。「固定観念にとらわれない」社会を実現し、その人らしさが十分発揮できる社会へと進めるようメッセージを送り続ける。
女性も男性もより多くの人たちが違和感と向かいあい、声に出していける環境を生み出せば、もっと暮らしやすい世の中に導ける。
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