日経SDGsフェス

女性リーダー育てよ 突破力で課題を解決(1) 「ジェンダーギャップ会議」WAW! セッション・基調セッション・基調講演

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日本経済新聞社と日経BPはリアルとオンラインのイベント「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト」のジェンダーギャップ会議(後援・内閣府)を2022年12月9日に東京都内で開催した。「女性リーダー育成を止めない、ダイバーシティー経営の本気」をテーマに、女性活躍の先進企業が取り組みを紹介した。パネル討論では人材育成に力を入れる企業の実例のほか、ダイバーシティー(多様性)の推進者が課題解決への突破力についてそれぞれ話し合った。今回の催しは日経SDGsフェスの一環。(肩書は開催時点)

日本経済新聞社と日経BPは2022年12月5日〜10日、様々な立場の人々や企業とともに、経営、投資、環境、ジェンダーなど多様なテーマについてSDGsの実現を議論する国内最大級のイベント「日経SDGsフェス」を開催しました。

このうち、12月9日に開催したトラック「ジェンダーギャップ会議」のプログラムから、WAW! セッション・基調セッション・基調講演をダイジェスト版でご紹介します。

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【WAW! セッション 】意思決定層への参画進めよ

外務省総合外交政策局女性参画推進室 室長  古本 建彦 氏(リモート登壇)

12月3日に開催された「国際女性会議WAW!2022」はジェンダー平等と女性のエンパワーメントを国内外で実現するための取り組みの一環として2014年から開催している国際会議だ。コロナ禍で3年ぶりの開催となった今回のメインテーマは「新しい資本主義に向けたジェンダー主流化」だ。

ジェンダーギャップ指数が世界の中でトップのアイスランドの大統領は「ジェンダーの問題は平等、人権だけではなく、企業の成長と国の繁栄のために大事」であると基調講演した。

モルドバ共和国の大統領は「女性の政治参画の拡大が様々な問題を解決する道筋をつけた」と指摘した。モンゴルの外務大臣からは「ジェンダーのステレオタイプによって、差別がもたらされている。男性の意識改革が大切」という発言があった。さらにシンガポールの社会・家庭振興大臣は「男女ともに希望する仕事に就業できる社会づくりが重要」と指摘した。

女性の健康と経済など、10のテーマについて分科会が行われたが印象に残ったのは、男女の賃金格差の是正やSTEM(科学、技術、工学、数学)やデジタル分野における女性割合の低さ、女性の平和・安全保障への参画の重要性などだ。ジェンダー問題をリーダー層が認識していく「アウェアネス」が重要であり、女性の意思決定層への参画を進めることが必要である。

国際女性会議、議論多彩に



 女性の権利拡大やジェンダー(性差)平等を目指し日本政府が主催する国際女性会議が「WAW!(ワウ)」だ。World Assembly for Womenの略称。女性が活躍できる取り組みを議論するため世界各国・地域からトップリーダーや有識者が参加する。

 2014年、女性が輝く社会を重要政策に掲げた安倍内閣が開始した。岸田文雄首相も22年12月に開かれた6回目の会議に参加。23年5月に開かれる主要7カ国首脳会議(G7広島サミット)にもその成果をつなげる考えだ。

 会議ではセクハラやパワハラ対策、育児と仕事との両立支援のほか、男女の賃金格差の解消など女性を取り巻く多くの課題解決について議論した。

 22年の会議には、男女平等の進み具合をランキングする世界経済フォーラムの調査で連続1位を続けるアイスランドの大統領が来日、話題になった。

 今回のジェンダーギャップ会議は、WAW!2022 WAW!ウィークスの公式サイドイベントとして開催された。

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【基調セッション】将来の妊娠に備える健康管理

妊活研究会主宰 プロゴルファー  東尾 理子 氏

国際医療福祉大学 大学院 教授 山王病院 名誉病院長 堤 治 氏

堤 プレコンセプションケアとは将来の妊娠のために健康管理を提供するという意味だ。日本は体外受精で生まれる子どもの割合が世界でも多い国だ。しかし、実績は多くても1回あたりの妊娠率は最低レベル。40代で不妊治療を受ける人が多いのが原因だ。

東尾 私は34歳で結婚し、人工授精にトライしたものの結果が出ず、体外受精で3人の子どもを授かった。病院に通えばすぐに授かると思っていたので、ショックだった。

 女性には自分が産みたい時に産み、産みたくない時には産まないリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)という権利がある。しかし、卵子はエイジングの影響を受けやすく、年齢とともに妊娠率が下がるのは生物としての宿命だ。女性の社会進出の陰にリプロダクティブ・ヘルスの危機的な状態がある。不妊治療にかかわらず、プレコンセプションケアはD&I(ダイバーシティー&インクルージョン)組織に不可欠な概念だ。

東尾 妊活研究会というコミュニティーを主宰しているが、妊娠治療と仕事の両立が難しいという意見は多い。

 不妊治療に取り組むために離職する女性は多い。これは優秀な人材の流出。企業、国、自治体でサポートする必要がある。卵子のエイジングの時計を戻すことはできないが止めることは可能。卵子を凍結し妊娠を希望した時に体外受精で妊娠する卵子凍結をプレコンセプションケアのひとつの方法として考えたい。

東尾 約半分の女性が不妊治療していることを会社にカミングアウトしていないという調査もある。フレキシブルな時間の休暇の取り方など、会社や上司の理解は治療と仕事の両立に不可欠だ。妊娠に適した年齢は、健康寿命が延びても変わらない。

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【基調講演】ダイバーシティー、トップが思想を

East Meet East, Inc. 創業者 兼CEO  時岡 真理子 氏 (リモート登壇)

ニューヨークに拠点を置く当社は女性、LGBTQ(性的少数者)が共に30%おり、様々な人種が働くダイバーシティー企業だ。その効果は数多くあるが、まずイノベーションが起きやすいことだ。多様な人種、女性、男性、LGBTQが混在する環境では、多彩な視点やプロダクトの考え方、マーケットの視野が広がる。そこで議論することで、イノベーションが生まれ、生産性が高くなると実感。次に顧客サービスのレベルが高くなる。米マッキンゼーの調査でも女性が経営する企業は顧客満足度が高いという数字が表れている。採用にも有利だ。LGBTQに無理解な企業から転職してくる優秀な人員の獲得に成功している。同じテクノロジーベンチャーの業界の他社と比べると、離職率が低いことも、ダイバーシティーの効果だと感じる。

ダイバーシティーで重要なのは、トップがバリューを持ち、思想があること。そしてそれがその人のパーソナリティーと合っていることも大切だ。私も過去、白人の男性社会の中のアジア人女性ということで仕事の自信を喪失した苦い経験がある。そこから生まれたのが当社の行動規範「Be yourself」。周囲に合わせることなく、自分の価値観を信じてありのままの自分でいること。これが、バックグラウンドが異なる人たちが安心して働ける場づくりにつながっている。不可欠なのは、対話を深めること。宗教や国籍によって祝日も異なるので選択制 の祝日を設けるほか、LGBTQやネーティブアメリカンに関するクイズを行うなど、それぞれの認知向上、相互理解が深まるようなイベントも開催している。

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