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「もったいない」が生む循環型経済 信頼と利便性で オークネット、中古品2次流通のノウハウを企業に提供

SDGs 循環型経済 エシカル消費

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高度成長期のなごりだろうか、日本人は新品が好きだといわれてきた。一方で、昔から「もったいない」という心の持ちようを長く受け継いでいる。SDGsの時代、母語にこんな言葉があるのは誇らしい。ちょっとしたナッジ(軽くつつく)で、中古品のリユースなどの循環型経済はもっと大きく回り出し、環境にやさしくなれるのではないか。

2年ほど前に取材で訪れた学生服リユースチェーンの、千葉県の店で出合ったひとこまを、折に触れて思い出す。

「子供が着たものだからゴミで捨てる気にならないの。こんなお店があると本当に助かります」。娘さんの制服を持ってきたお母さんはカウンターで袋から取り出しながら、そんなことを問わず語りで店の人に言っていた。

自分の部屋もそうだから気持ちがわかって心に残ったのだ。仕事で使う本などで散らかり、動き回るのも不自由。水たまりをよけてつま先で歩くような動作になってしまうのだが、押し入れの相当部分は子供が小さい頃に使ったおもちゃで埋まっている。処分して本などを収容すればいいのだが、実行しようとなかなか思えない。

しかし、うまく誰かの役に立ててくれるような手軽な仕組みに軽く背中を押されれば、もう使わないのだから、それに出すと思う。

行動経済学で言う、そんなナッジに必要なのは、仕組みの信頼性や安心感だろうか。それから、面倒なく実行できる利便性。最近は、大半の人がゴミの分別をあたりまえにやっているくらいに意識が変わっているから、環境に役立つ感覚も持たせてもらえるとよさそうだ。

業者間の中古品オークションを仲介するオークネットは、自動車やオートバイ、ブランド品、パソコン・携帯電話等の電子機器など、取り扱う商材の幅を広げながら、40年近くにわたって取引の信頼性や利便性を追求してきた。BtoBのマーケットだから、求められるノウハウのレベルも高かったのだ。

そのオークネットが最近、「Selloop(セループ)」という事業を始めた。メーカーなどに中古品の二次流通のノウハウを提供し、黒子になって一緒に仕組みを考える。売って終わりの時代が終わり、何かできることはないかと考えているから、興味を持つ企業が多いという。

第1号の通販の千趣会との事業は、段ボール箱に入れて簡単に古い洋服などを送れる。買い取り対価やポイントが得られ、なにより古着はどこかで生きることもあって、顧客の満足度も高い。もっといろいろなモノで、便利な仕組みができたらいい。

(編集委員 深田武志)

 オークネット・藤崎慎一郎社長「事業の環境貢献度、数値化し公表」


中古品のリユースに関わる私たちの仕事は環境に役立っている感覚がなんとなくありました。そこで2021年に「GCV(Gross Circulation Value=総循環型流通価値)」という独自の指標を作り、数字として社内外に打ち出す試みを始めました。「経済的な価値」である取扱高に、温暖化ガス削減効果などの「環境価値」を加えたものです。
手作りですが、ひとりよがりになってはいけないので東京大学エコノミックコンサルティング(東京・文京)に客観的な評価をしてもらったほか、独立機関から第三者保証も取得しました。社内では、我々は創業時からずっとSDGsなのだから、もっと胸を張ってやっていこうよと打ち出して理解を深めてもらいました。数字は役員報酬を決める要素にもしています。
GCVと同じ概念から生まれたのが、Selloopという新しい事業です。
幅広い商材を扱って蓄積したノウハウを生かし、これまで流通していなかったモノをマッチングしたり、メーカーなど顧客の問題意識に沿って、こうすればいいんじゃないか、こんなことができるのではないかと考えたりする。
手前味噌ですが、世界を見渡しても、そんなお手伝いの仕事ができる会社はそんなにありません。事業と環境貢献の両立感覚を持っているので、現実的な提案ができる強みもあると思います。
GCVも一層ブラッシュアップし、これってどれだけ環境に貢献できるかなと考えながら仕事をする会社になっていきたい。日本はもったいない文化の国ですから今は欧州などに遅れているとしても、浸透し始めればリユース経済は一気に進むのではと期待しています。

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