――求職者側についてもうかがいます。3月の特集の反響はありましたか?
河合 他の特集と比較して特別な反響はなかった。ただ、直接的に反響があろうがなかろうが、やり続けていくことが大事と考える。
なぜなら、SDGsはグローバルにビジネスを展開する企業にとって、避けては通れないテーマだからだ。仮に「自社はグローバルな取引をしていない」という企業であっても、どこかで必ずつながっていて影響を受けるだろう。
SDGsの達成はすべての社会課題を解決するわけではない。脱炭素にしても、SDGsの達成が国際目標だからといって、政府が掲げる「2050年カーボンゼロ」が本当に達成できるかどうかは、また別の問題だ。ただし、達成できるかどうかとは別に、様々な改善が求められているのは確かだ。だから、SDGsについては、どんなルールで世界が動いているのかをまずはよく理解し、そのうえで自社はどう戦うのか、という見方をするのがよいと思っている。
そうした見方に立てば、求人をする企業にとっても、求職者にとっても、SDGsは積極的にかかわっていく方が得であるとご理解いただけるだろう。
取り組みをPRしない場合は理由の説明を
――再び、意識調査に戻ります。冒頭でご紹介したように、転職先選びで企業のSDGsへの姿勢や取り組みを「重視」という層は全体の65%に上りました。その人たちの情報源は、図3のように「企業ホームページ」が圧倒的です。SDGs関連でキャリア採用などを進めたい、と考える企業にアドバイスはありますか。
河合 「SDGsウオッシュ(見せかけだけで実態を伴わないSDGs対応)」という言葉がある。企業によっては「そこからは一線を引きたい」と考えて、実際はSDGsの達成に向けた取り組みを進めていても、あえてPRはしないというケースもあるだろう。ただし、今回の意識調査で浮き彫りになったように、求職者側はSDGsへの意識や取り組みを重視する層のほうが多数派だ。
もう1つ、お伝えしたいことがある。自社では、就職・転職を希望する方々に対して、各企業の社員・元社員が自社について書き込む「Lighthouse(ライトハウス)」という、年間5000万ユーザーが利用する企業に関する口コミプラットフォームを運営・管理している。こちらのデータを基に、従業員満足度と相関の高い項目を調べたところ、「仕事を通じた社会貢献」は「経営陣の手腕」と並び、満足度との相関が特に高いと分かった。
従って、実際にはSDGsの達成に向けた取り組みを進めながらもアピールは控えたいと考える企業の場合は、求職者に対して、自社がそう考える理由などをきちんと説明できるように準備しておくことが大切だろう。
反対に取り組みを求職者に伝えたい場合、求人サイトには企業紹介ページがついている。そこでSDGsへの取り組みなども書き込んでおくことは、優位になると思う。
人材紹介サービスを利用する人は必ず、企業ホームページを閲覧する。ただし、企業ホームページは必ずしも中途採用に合わせて最適化されているわけではない。メーカーなどでは製品紹介がメインで、SDGsへの取り組みやパーパスなどがなおざりになりがちというケースもよくみられる。手前みそにはなるが、自社では、専門知識が一切不要な、ウェブに求人を掲載するためのツール「engage(エンゲージ)」を無料で提供している。こうしたツールもご活用いただき、自社のSDGsの取り組みについて求職者に伝えるべき情報を準備しておくことが、採用成功につながると考える。
(佐々木玲子)