アフターコロナの地方創生

垣根を越えて協働 新たなビジネスを 日経地方創生フェス「 DAY2:官民連携と共創」〜地域産業の担い手とともにビジネス発信〜

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地方創生 ウェルビーイング

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超高齢化や過疎化による人口減少は地方が直面する深刻な社会問題で、地域経済の衰退を克服するには、地域産業に関わる様々なプレーヤーが官や民の垣根を越えて連携し、ビジネスを共に創造することが求められている。東京ミッドタウン八重洲カンファレンス(東京・中央区)で10月11日開催された「日経地方創生フェスティバル」2日目は、「官民連携と共創」をテーマに、著名人、企業経営者、自治体関係者、さらには各地で地元に根付いたまちおこしに取り組むプレーヤーたちが集まり、それぞれの立場から、現在の地方創生に関する最新の取り組みを紹介・議論した。

 

【基調講演】本気の発想転換が必要

古川 國久氏 シップヘルスケアホールディングス 代表取締役会長

地域の成長なくして国の成長はない。地域の中核病院の新設や移転増改築をサポートするなど、医療・保健・福祉・介護分野におけるニーズに対応し、トータルソリューションサービスを提供している。日本の地域医療をもっと強くしたい、と会社を含めて奮闘している。

子どもが減り、高齢者も減り、全人口が減るという厳しい現実に直面しており、地方自治体はこれまでの発想を転換する必要に迫られている。

とはいえ、頭を柔らかく、まっさらにして、つまり『こんにゃく頭』で知恵を出し合い、絞り続ければ、大抵のことは解決できるし、何とかなる。しかし、本気でやらないとだめだ。官と民とで知恵を出し合う。「何か良い話ありませんか?」では前には進まない。

広く地域と協力

官民連携の仕事も多く手掛けてきたが、本当にこれだけで良いのか、我々はもっとやらなければいけないのではないかと、活動の幅を広げている。人々がより良く生きるためには、医療、介護、健康、環境、教育まで含めてトータルで地域と協力して考えていかないとだめではないかと、だんだん思うようになってきた。

我が社はグループ全体で70社を数えるが、70社の全員がこのことにフォーカスし、何らかの地域貢献ができるのではないかと日夜研さんしている。70社をまとめ上げるというのは大変な仕事だが、意義ある仕事でもあり、プロ領域の人間を育てることと併せて、地域貢献ができればと思っている。

 

【鼎談】重要性増すウェルビーイング

北村 俊樹氏 ライズ・コンサルティング・グループ 代表取締役社長 CEO
石川 善樹氏 公益財団法人Well-being for Planet Earth 代表理事
内藤 佐和子氏 徳島市長

石川 予防医学という分野で、わたしの父の代から「健康づくり」をテーマに地方自治体と関わってきた。今回はウェルビーイングの話を進めたい。

内藤 大学時代から起業したり、いろいろな人と関わりを持ちながら、地元の徳島をふと振り返ったときに、「高校時代に比べ、ひどく寂れてしまった」と気づいた。まちづくりに関わるうちに市長になったというのが経緯だ。

石川 ウェルビーイングは、よい状態と定義され、客観指標と主観指標から構成される。客観指標としては、「教育(平均就学年数)」「健康(平均寿命)」「所得」などがある。主観指標は、「生活満足度」が代表的で、いま内閣府でも使われている。言葉としてウェルビーイングは新しく聞こえるが、指標の中身をこうしてみてもらうと、決して本質的に何か新しいというものではなく、地方創生の文脈でも十分に馴染みやすい考え方だと思う。

北村 事業会社を運営している立場でいえば、社員の幸せや持続的なやりがいへの目配りが欠かせないということだ。

待遇面など定量的な指標は当然重要だが、デジタルの進化に伴い、より個人にフォーカスする、より個々の幸せに寄り添っていくことが求められる社会になるのではないか。それらを測る仕組みが欠かせない。

デジタル人材育成を

内藤 所得水準でいえば、東京や大阪といった大都市には敵わない。徳島に限らないが地方の課題は若者の定着。故郷を離れた人材が帰りたい、関わりたいという雰囲気作りも急務だ。

徳島を盛り上げる地方創生を目指し、阿波おどりを筆頭に人を巻き込み、まちを変えられるという人を増やす試みを一つひとつやっている。

また、コロナ禍もあり、地方では、非正規の女性や子育て中の女性に経済的な打撃が生じた。彼女たちが安定的な収入を得るためには、中長期的に見てどういうことをやっていけば良いのかを考え、これからはデジタル人材の育成ということで、東京の企業と連携し、彼女たちを稼げるデジタル人材に育成していくシステムを作った。

実際に正規職員として就労が決まった人もいるし、自分たちが学んだことを第2期のプログラム生に教えるというエコシステムも確立されてきている。

地産地消で次世代の女性たちを教育・育成し、このまちに人材や消費者として還元していく。お金を稼ぎ、このまちにお金を落としていくことで誇りを持てるように変わってきている。

徳島だけですべての問題を解決することは厳しい。外から応援してもらい、最後に自前で回せる仕組みができれば、それが一番ではないかと思う。

石川 来年の国連総会の大きなテーマは「ビヨンドGDP」。世界経済全体が成長経済から成熟経済へと移っていくなかで、ウェルビーイングも大事にしていこうという、ビヨンドGDPという国際潮流がある。

地方創生のひとつの指標として、ウェルビーイングが取り上げられることが多くなるはずだ。

 

【基調講演】地方は宝の山

杉原 博茂氏 ジオテクノロジーズ 代表取締役社長 CEO

米国のIT(情報技術)企業で40年以上働いてきたが、地方創生は米国も事情は同じだ。オレゴンやアイダホなどの地方は、ニューヨーク、サンフランシスコ、シリコンバレーといった大都市と比べると、相当なデジタルギャップがある。

では、日本での地方創生にどう取り組むのか。弊社は神社仏閣やビル、病院はもとより、ラーメン屋がどこにあるかという情報や、高速道路や道を含めたあらゆる情報を、すでにデジタルデータとして持っている。人や車、自転車の動いているデータもデジタル化している。「北海道や九州の何々町のデータが欲しい」といわれたら、すぐに提供することができる。たとえば集客予測。イベントにどれくらいの人が来て、どう警備すればいいのかを検討する際、利用することも可能だ。

我々が持っているマップデータの量は、突出している。おそらく日本の企業の中では1、2を争うデータ量だ。

提案するのは、稼ぐ地域をいかに作るか。実は、メタバースの世界からすれば、地方は宝の山だ。例えば、まちの神社仏閣やお城をデジタル化して世界に配信する。お城のアイコンを取引サイト「Open Sea(オープンシー)」に出したら即売。1個、5000円だ。海外では日本の文化的なものに価値を見いだす。渋谷区のNFT地図アートも世界で売れた。何を売ったかといえば、デジタル地図をアート化し、世界に向けて販売しただけだ。

地域の現状を理解し、「何をやりたい」かを明確にし、マネタイズする。このステップを分かりやすく、一気通貫にできれば、稼げる自治体になるはずだ。

 

【企業講演】空き家を再生・有効活用

新谷 晃人氏 バリュークリエーション 代表取締役
中野 浩氏 サンソニック 代表取締役
小柴 泰弘氏 TWC 代表取締役
田中 佑弥氏 バリュークリエーション 執行役員

新谷 地方創生の実現に立ちはだかる課題のひとつが、増え続ける空き家だ。

2038年には全国の3軒に1軒が空き家になると予測され、政府も対策に本腰を入れ、23年6月には「改正空き家対策特別措置法」が成立。周囲に著しい悪影響を及ぼす空き家は「特定空き家」、特定空き家予備軍ともいうべき空き家は「管理不全空き家」とされ、固定資産税の優遇措置の対象外となる。

優遇措置を受けられなくなると、金銭的な負担が増加し、建て替えや解体など空き家の利活用が増えるのは確実視されている。24年4月からは相続した不動産の名義変更も義務化される。

空き家対策に欠かせない解体事業の現状や事業者の取り組みを紹介する。

中野 解体事業を手がけているがここ2〜3年、解体を検討する方が増えた実感がある。

小柴 解体するという選択肢だけではなく、古民家として生かせるように改装したり、建て替えることができない再建築不可物件に新たに命を吹き込むような部分解体による作り直しの必要性も感じている。

田中 マーケティングとデジタルトランスフォーメーション(DX)を軸にした事業展開するベンチャー企業として「解体の窓口」というサイトを運営、空き家問題に取り組む。解体したいユーザーと解体業者とのマッチングを提供、各分野の専門家と連携し「解体コンシェルジェサービス」も提供している。

解体希望者の費用負担はゼロで、サービス開始から3年足らずで2万人を超えるユーザーに利用いただき、加盟業者は約1600社だ。

新谷 活用が困難な空き家は、撤去するのが望ましい。解体の円滑化のためにも空き家の所有者の判断を迅速化する取り組みも欠かせない。

行政と解体に関わる民間企業を含めて、空き家は個人ではなく地域全体の問題であるという認識を共有することが大切だ。

 

【企業講演】中小企業の飛躍が不可欠

高野 雅彰氏 DG TAKANO 代表取締役

地方創生には、地域経済を支える中小企業の飛躍が不可欠だ。では、その中小企業がジャンプアップするには何が必要か。ひとつは「デザイン経営」を視野に入れることだ。具体的には米国企業のアップルやテスラなどをイメージすればいい。創業者のスティーブ・ジョブズやイーロン・マスクのように、やりたいことやつくりたいものがあって、必要な技術を世界中から集めるという発想だ。

最大95%の節水率を誇る、超節水ノズル「バブル90」を開発した当社は、日本では珍しいデザイン会社と自負している。世界の水不足問題を解決しようと考え、製品化した東大阪の町工場発のベンチャーだ。多くの大手レストランチェーン、スーパーで導入が相次いでいる。

日本の中小企業は、技術や基礎研究で世界でトップ級の素材を持っているにも関わらず、部品提供にとどまっているのが現実だ。その中小製造業の技術を社会課題の解決に結びつけるようなデザイン化ができたら飛躍的に成長を遂げ、雇用や納税を通して地方創生に貢献できる。

 

【対談】文化や伝統の発信をアシスト

中田 英寿氏 JAPAN CRAFT SAKE COMPANY
福田 典子氏 テレビ東京アナウンサー

福田 2006年に現役引退後、世界中を旅した元プロサッカー選手の中田さん。帰国後は47都道府県を巡り、15年にJAPAN CRAFT SAKE COMPANYを設立し、世界中に日本酒の魅力を発信している。

中田 引退後、新たな自分のパッションとなるものを探すため、まずは世界を回ろうと、3年ぐらいほとんどノンストップで世界中を回った。どこに行っても日本のことを聞かれ、改めて自分が日本人であることを意識したが、同時に、自分が日本のことを全く知らないことにも気付かされた。

日本に戻ってきて、まず日本の文化について知ろうしたとき、「文化は生活の積み重ねである」とひらめいた。各地の気候風土に適応した暮らしの中から独自の文化が生まれ、伝統として根付いてきた。それらを知るため、沖縄県の波照間島から北海道の宗谷岬まで47都道府県、約20万キロを車で走破した。

福田 日本全国を巡られて、日本酒に着目された。

中田 この旅では、地域の暮らしに結び付くもの、伝統のある産業を見ていくのが良いのではないかと思い、農業・工芸・酒造を中心に見て回った。

多くの伝統産業に接して感じたことは、魅力ある商品があっても、その価値を伝え、流通させ、販売する人材が不足しているということ。そのとき、自分に何か手助けできることはないだろうかと考え、まずは、日本ならではの商品として海外展開も視野に入れることができる日本酒でやるのが良いのではないかなということで、会社を立ち上げた。

品質管理と情報発信

福田 自ら監修した日本酒情報検索アプリ『Sakenomy(サケノミー)』やサイト運営も大変好評ですね。

中田 日本最大級の日本酒データベースとして、情報を欲していた国内外の皆さんに利用されている。

流通・販売に関しては、すでに実績のあるワインを参考にした。日本酒はワインと同じ繊細な飲み物なので、適温で管理をしないと悪くなる。きちんとした情報を収集し、教育するなど、管理方法も含めて全部作っていかない限り、世界での日本酒は伸びないだろうということで始めたのが、海外でのコールドチェーンづくりだ。今はコールドチェーン+ブロックチェーンで、室温何度の場所に何日間商品があるかを全部トラッキングできるようにしている。それによって、酒蔵は安心して商品を海外輸出できるようになる。

ブロックチェーンの性質上、各拠点で何本保存されているとか、何本売れているということが1本単位で分かるので、データをきちんと集めて提供することで、酒蔵の製造計画等にも活用できる仕組みを作っている。

福田 日本酒や伝統工芸のほかに、オリジナルの日本茶ブランドも立ち上げたとか。

中田 日本茶に至った経緯の一つは、新型コロナウイルス感染症や健康志向などの影響もあり、世界的にアルコールの消費量が減ってきていること。日本酒を手掛けているから、気に掛けている。アルコール消費量が減って困るのは、アルコール飲料の利益率が高い飲食店だ。そこで、アルコール飲料に代わるものとして、日本茶に可能性を見いだした。

福田 最近は高級店での中国茶・台湾茶を使ったペアリングも増えてきた。

中田 僕は日本の文化を背景にしたいので、日本茶でそういった味わいを作っている。お茶の専門家ではないので、茶師というお茶を作る専門家やソムリエとチームを組み、食事に合うブランド茶を開発している。

僕はずっとお茶の産地を回っているが、茶葉の単価はお茶のペットボトル化によって下がり、この50年で小規模な生産農家の数は10分の1以下になっている。食事中にきちんと飲める高付加価値の日本茶が広まれば、少しはこの状況を改善できると思う。

福田 中田さんがやっていることは、地方創生につながるものでは。

中田 もっといいものを作りたいと思っているけれどそれができない環境があり、それが仕組みで解決できるのなら、仕組みを作ってあげるべきだと思う。僕らがデジタル技術やデータ、人材などを活用して仕組みを作り、生産者がそれを利用することで、伝統産業や文化が存続していく一助になるのであれば、うれしいことだ。まあ、僕自身は、日本の文化や伝統産業にとても魅力を感じていて、好きでやっているだけなのだが。

 

【鼎談 / 対談】地域全体の活性化を

山田 桂一郎氏 JTIC.SWISS代表/地域活性化センター シニアフェロー
山中 哲男氏 トイトマ 代表取締役社長

山中 「食」「宿」「人材」の3方面から地方創生や地域活性化に取り組んでいる。最近では、淡路島にレストランやホテル、バーベキュー場などを備えた施設を立ち上げた。繁忙期における観光地の人手不足も表面化しており、急激な需要増で人材が不足する北海道や沖縄などへの人材派遣も手がけている。

山田 スイス・ツェルマットから全国各地の地域振興や経済活性化に携わっている。

山中 まちづくりには、地域のビジョンやテーマ設計、コンセプトを明確にすることが重要だ。失敗理由は3点に集約される。

1 自分たちの利益だけを目的としたまちづくり

2 どこかにあるようなものを作ってしまっている

3 補助金頼りのまちづくり

山田 観光の本筋は「感幸」だ。住民と旅行者、双方が幸せを感じることができなければ豊かな地域にはなれない。もちろん、観光産業だけでまちづくりや地域振興が成功するわけではない。一次産業である農林水産業や二次産業である伝統工芸品など、多様な地元産業との連携や協働が必要だ。自立と持続可能な地域マネジメントとブランディングが重要になる。

山中 まちづくりには、魅力的で持続可能なコンテンツが欠かせないが、アドバイスを。

山田 テーマやコンセプトは地域の思想、哲学、美学であり、自分たちの信念に反したことは止めるべき。地域性、個性、創造性を生かすことでしか魅力あるものはできない。

そのためには自分たちの持つ本質的な価値が何かを認識することが肝心だ。

 

【鼎談 / 対談】オリーブで小豆島磨き

柳生 敏宏氏 小豆島ヘルシーランド 代表取締役社長
柳生 忠勝氏 小豆島ヘルシーランド 取締役副社長
秋吉 浩気氏 建築家メタアーキテクト/VUILD 代表取締役CEO

柳生(敏宏) 私たち兄弟は、瀬戸内海の小豆島で栽培しているオリーブで化粧品や食品などを製造・販売している。全国の顧客は50万人を超える。弟とともに「オリーヴ兄弟」と自称しているように、所有している樹齢1000年の大きなオリーブの木が自慢だ。

柳生(忠勝) オリーブ栽培に加えて、小豆島の空き家を再生し、妖怪美術館というコンテンツを作る取り組みもしている。

観光客が増え、年間1万人超が入館するようになると、周辺の空き家を借り上げて飲食店やカフェ、民泊などに投資が始まる。自分たちがひとつ火種を作ることで、周りがそれを見て商機があると思えばビジネスとして参画し、まちを磨いていく。まずやってみて人が集まるようになったらどんどん入ってきてくれる。そういったチャレンジをすることが僕らの役目なのかなと思い取り組んでいる。

秋吉 私は誰もが作り手になれるような社会を目指し、デジタル木材加工機、ショップボットを販売している。価格はおおよそ500〜600万円。林業家や製材所、自治体へ販売しており、今では約190カ所に導入されている。森林資源は豊富だが、二次加工や流通、商品化、マーケティングは全て地域の外に流失しているのが現実だ。稼ぐ力をなくしてしまったことが、戦後以降の建築の歴史である。

最先端のデジタル加工機を導入、1本1000円の材料を1000円で売るのではなく、自分たちで6次産業化し商品化し10万円にして売ることを支援している。

柳生(敏宏) 1908(明治41)年にオイルサーディンを作るという当時の農商務省の政策のもと、小豆島でオリーブの栽培が始まった。

私たちも2003年からオリーブの栽培を開始。オリーブを訪ねてイタリアへ旅をしたが、樹齢300年を超える木でもまだ収穫されている姿を目の当たりにした。収穫に携わっている人も多くいて、丘の上から見た時には虹も射し込み、感動した記憶は今でも忘れることはない。

それをきっかけに、「1000年続くオリーブの森を作ろう」と社内外で公言し、11年にはスペインから樹齢1000年を超えるオリーブの木を移植した。翌年から実をつけ、12年経った今もその木から実がなる。

今回、秋吉さんと共に取り組んだ「千年オリーブテラス for your wellness」は、VUILDが掲げる建築の⺠主化を体現した建築。この周辺をオリーブを通じてマインドフルネス体験ができる場として育てていきたい。

 

【鼎談】社会課題をビジネスチャンスに

脇 雅昭氏 よんなな会発起人/神奈川県 知事補佐官
長井 伸晃氏 オンライン市役所運営/神戸市企画調整局 課長
平尾 悠樹氏 内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局 参事官補佐

 介護や貧困の問題など公が抱える課題を行政だけでは解決できない時代になっている。

神奈川県では、オンラインコミュニケーション事業を手掛けるHelte(ヘルテ、千葉県柏市)と連携し、高齢者等の生きがいづくりに取り組む。Helteは海外の日本語学校の学生とデイサービスに通っている高齢者をインターネットで繋ぐサービスを提供する。学生は実践的な日本語の勉強に役立ち、高齢者は会話が楽しみになり、それが生きがいにつながる。

行政が社会課題として扱っていたことも、企業にとっては、ビジネスチャンス(財産)に変わる。そう考えると地方ほど財産がある。

一方、行政の中で課題を共有したいという思いで始まったのが、よんなな会だ。よんななとは47都道府県の47で、各都道府県の地方公務員と国家公務員が繋がる場所。フェイスブック上で運営されるオンライン市役所は約6000人が集い、様々なナレッジ共有を行っている。

地域課題に向き合う公務員が集まるプラットフォームは、官民連携を推進するためのコミュニケーションツールにもなると思う。

長井 官民連携には、オープンマインドと事業化までのプロセスが大切。

行政課題と民間サービスをマッチングさせ、新たな価値に繋げられるかが、官民連携の肝だと考えている。行政は地域からの信頼や課題を把握できる手段を持っていることが強み。一方で民間企業は課題に対するソリューションを持っていることが強み。注意したいのは、官民連携はあくまで手段であり目的ではないということ。その連携事業を通じて、地域のどのような課題をクリアできるのかがポイントになる。

官民連携の原点は取材にある。地域の課題は何か、民間サービスの強みと実現したいことについて取材し、腹を割って対話する。

できる・できないは気にせず、地域に何が最適・最善か、あるべき施策の実現に向け、行政の関係部局と民間企業の間の通訳として最大限の調整をする。

行政は失敗を恐れがちだが、まずはやってみる。やってみることで、課題やニーズの検証ができるだけでなく、新たな仲間が現れることもある。期間やエリアを限定するなどスモールスタートのうえで、面的・持続的に展開していくビジョンは常に持っておく。

協定期間は永続的ではなく2年程度に区切り、最終的には民間で自走することを前提に連携をスタートすることが多い。

平尾 企業版ふるさと納税は、自治体が行う地方創生の取り組みに企業から寄付をいただいた際に、法人関係税を税額控除する仕組み。個人版ふるさと納税との違いは、返礼品を贈ることは禁止。「寄付をいただきました」と自治体のホームページで紹介するのは構わない。

各自治体が地域再生計画を内閣府に提出。認定されれば、企業版ふるさと納税を活用できる。ただし、制度対象外の自治体も一部ある。

企業から寄付と併せて人材を派遣する仕組みも始まった。行政の経験が企業の人材育成にも寄与するという。また、寄付のうち優れたものに対しては表彰制度もある。昨年度は地方公共団体部門・企業部門、各3団体が表彰された。

寄付が本業に寄与する例もある。JR東日本が宮城県のワイナリーを中心とした地域活性化の取り組みに構想段階からタッグを組み寄付した例だが、ワインツーリズムの活発化が本業の鉄道事業にも寄与した。

◇ ◇ ◇

※本フェスティバルのアーカイブ視聴はこちらから

日経地方創生フェスティバル
DAY2:官民連携と共創 〜地域産業の担い手とともにビジネス発信〜
【主催】日本経済新聞社
【後援】内閣府
【特別協力】三井不動産
【協力】よんなな会

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