日経SDGsフェス

リターンと社会変革を両立 「プライベートエクイティの未来像を考えるプロジェクト」基調講演・企業プレゼンテーション

SDGs ESG 金融

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持続可能な開発目標(SDGs)への取り組みが企業に求められる中、PE(プライベートエクイティ=未公開株)ファンドへの期待が高まっている。昨年12月、「日経SDGsフェスティバル日本橋」で開かれたシンポジウム「プライベートエクイティの未来像」では、PE関連の第一人者たちが集結。投資先企業のESG(環境・社会・企業統治)経営を推進し、企業価値向上を図るPEファンドの役割と、その可能性が語られた。

日本経済新聞社と日経BPは2022年12月5日〜10日、様々な立場の人々や企業とともに、経営、投資、環境、ジェンダーなど多様なテーマについてSDGsの実現を議論する国内最大級のイベント「日経SDGsフェス」を開催しました。

このうち、12月8日に開催したトラック「プライベートエクイティの
未来像を考えるプロジェクト」の模様をダイジェスト版でご紹介します。

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【基調講演】ガバナンス改革に本領

林 竜也氏 日本プライベート・エクイティ協会 会長 

投資家から資金を集め、会社を売り買いし、得られた利益を還元するのが、PEファンドの仕組みである。ただし、会社売買は、我々の仕事の入り口と出口の〝点〟に過ぎない。重要なのは、その間の企業価値の向上である。

例えば、様々なスキルを持つ人物を広く求め、投資先企業の経営者とともに議論を行い、新たなアイデアを生む。あるいは、成長戦略に必要な経営資源を調達し、調整・運用を行う。こうしたガバナンス(企業統治)改革による企業価値向上がPEファンドの本領だ。

PEファンドによるガバナンスがよく機能する理由は、ファンドを運用するGP(ジェネラルパートナー)と、投資家であるLP(リミテッドパートナー)とのパートナーシップ構造にある。

GPの責任者は、個人的な資金や時間をファンドに注ぐなど、これに深く「コミットメント」し、投資家と「リスクとリターンを共有」する。業務の意思決定はGPが握る一方、多くの出資経験を持つLPの知見がGPへの助言という形で生かされるなど「役割分担」ができている。こうしたパートナーシップは、投資先経営者とGP間にも成り立つ。

PEファンドはESG推進に適した仕組みでもある。上場企業の株主とは異なり、GPは投資先企業のガバナンスの主導権を持ち、その改革が容易だ。また、中堅・中小企業では、従業員の就業環境整備などが企業価値向上の要だと、GPは経験的に知っており、以前からこれに注力している。

現在、GPはガバナンスのみならず環境問題や人権問題、ジェンダー平等など、幅広いESGの課題に関与し、社会変革への寄与を広げている。

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【企業プレゼンテーション】

SDGsへ資金力活用

ソフィー・ウォーカー氏 EQT プライベート・キャピタル サステナビリティ責任者

鬼塚 哲郎氏 EQT パートナー

鬼塚氏 EQTはスウェーデンに本拠を置く世界屈指のPEファンドである。運用資産は16兆円強。「企業の持続的成長と社会をよりよく変える」を社是とする。

持続可能性の追求は、当社の根幹となるコンセプトであり、自社はもちろん、投資先企業やその取引先を含め、①気候変動対策②公正なビジネス③説明責任のあるリーダーシップ──の3つを推進する。

具体的には、①ではパリ協定が求める「科学と整合した目標設定(SBT)」による温暖化ガス(GHG)排出基準の順守や再生可能エネルギーの使用などに、②ではDEI、すなわち「ダイバーシティ(多様性)」「エクイティー(公平性)」「インクルージョン(包括性)」の実現に、③では適切なガバナンス整備やESGデータの取得などに取り組む。

ウォーカー氏 当社の投資先の1つに世界最大の食品着色料メーカー、オテラ社がある。

2021年の投資以降、同社は原材料を人工素材から天然素材である黒にんじんや赤ビーツ、藻の一種であるスピルリナなどに転換。持続可能性が高く、環境に配慮したビジネスを展開している。

また、農作物の生産に伴う土壌管理や農薬、水、排水についても環境に配慮。責任あるトレーサビリティーにも注力する。

これらはSDGsにおける「飢餓をゼロに」「つくる責任つかう責任」「気候変動に具体的対策を」などに相当する。

気候変動対策やDEI、人権などが重視される社会の実現を目指し、当社は今後とも投資を行っていきたい。

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投資先と同じ目線で

二井矢 聡子氏 インテグラル パートナー

当社は「ハイブリッド投資」と「i─Engine」という2つの特徴的手法を業務に用いる。前者は、投資先企業にファンド資金だけでなく、当社の自己資金も並行して投資する仕組みだ。自己資金はファンドとは異なり、投資回収(エグジット)の期限がなく、長期的な企業との関わりを可能とする。後者は、投資先企業に当社社員を派遣、常駐させ、中長期の経営戦略の立案や実行を支援する仕組みである。

この2つによって、インテグラルは投資先企業の経営陣と同じ目線、同じ時間軸を持つ。これらを駆使し、投資先企業から「信頼される投資家」とされることを会社の理念としている。

現在、投資先企業は29社。その多くでESG関連の施策を行う。

プラントの設計・調達・建設(EPC)事業を行う東洋エンジニアリングもその1つ。同社の5カ年中期経営計画の策定では、i─Engine常駐者がESGやSDGsをその中心に据え、経営陣と議論を重ねた。

結果、「環境調和型社会を目指す」「人々の暮らしを豊かにする」などを、重要経営課題(マテリアリティ)として定め、この実現に向けて「新技術・事業開拓」と「EPC強靭化」を両輪とする戦略を練り上げた。

また、マテリアリティに直結する事業領域から「廃プラのリサイクル」「二酸化炭素(CO2)貯留」「メタンハイドレート生産技術検証・簡素化」といった具体的な技術・事業テーマを設定。目標に対するKPI(成果指標)を定め、業績、人事評価と連動する仕組みを作っている。

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利他の心が成功の鍵

津坂 純 氏 日本産業推進機構 代表取締役社長・マネージングパートナー ESGコミッティー議長

PEファンドの最大の使命は、投資家として誇れるリターンを出すことだが、同様に重要なのがESGへの貢献である。

NSSKは、なかでもダイバーシティとインクルージョンを重要テーマと位置づける。例えば現在、当社の31の投資先では、合わせて1万2000人を超える従業員が働くが、うち67%が女性だ。また、これら企業の管理職も33%が女性。さらに最高経営責任者(CEO)あるいは最高執行責任者(COO)は、その40%を女性またはマイノリティーが占める。

こうした成果は当社の働きかけもさることながら、投資先企業の経営者の尽力のたまものと深く感謝している。

投資先企業に中小、あるいは地方企業が多いのも当社の特徴だ。1500億円の運用資産残高(AUM)の活用で、地域企業の成長支援や地域経済の活性化を狙う。この取り組みは、全国77の地域金融機関との連携によって、さらに強化している。

この推進にあたり、当社は社内に9人のメンバーからなる「ESG多様性&インクルージョン委員会」を設置。月1回、当社および投資先企業のESG戦略や、遂行の仕組みづくりについて、討議を重ねる。

また、投資先企業に対してはESG監査役による監査を実施、さらにESGについてのKPIリポートを制作する。

ESG投資に必要なのはソフトウエアやハードウエアの提供だけではない。成功の鍵はビジネスに「利他の心をベースとした生き方」を注入すること──。つまりハートウエアだと考えている。

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ESG推進で価値向上

永利 敦氏 ニューホライズン キャピタル マネージング・ディレクター

20年を超える業歴、2200億円を超える投資総額、100件を超える投資経験、さらにはハンズオン(伴走型)での投資先支援、そして独立系であること──。ニューホライズンはこの5つの特徴を生かし、社会的意義のある投資に注力する。

当社の主な投資対象は中堅・中小企業だが、こうした企業が自らSDGsに取り組むことは現時点では多くない。上場企業の場合、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)などによってガバナンスを利かせられるが未上場企業にはそれがない。

しかしPEファンドがこうした企業に出資し、議決権の過半を握ればSDGsを意識した経営を資本の側から促すことができる。

SDGsおよびESG投資は運用成果の改善と相反するものではない。むしろ投資家への忠実義務や善管注意義務に即したものだ。

当社は創業来、あらゆる利害関係者に対して価値を届けることを重視しており、その投資先支援活動はSDGsに貢献する。例えばDEI(多様性・公平性・包括性)を意識した経営も投資先に促している。投資先であるウィルミナ(旧かがやくコスメ)は、投資後に、代表取締役を始め主要ポストに多くの女性が就いた。役職員が自ら企業の存在意義(パーパス)を定義し、新事業にも前向きに取り組んでいる。

今後も経営者と共に悩み成長しながらも、あらゆる利害関係者に価値を届ける経営を求めガバナンスを利かせることでSDGsへの貢献が叶うと考える。

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投資先間で施策を共有

木村 雄治氏 ポラリス・キャピタル・グループ 代表取締役社長 日本プライベート・エクイティ協会 前会長 京都大学経営管理大学院 客員教授

投資先企業を「しがらみ」から解き放ち、その非連続的成長をサポートする。これがポラリスのコンセプトで「起業家精神の回帰」と「ビジネスモデルの刷新」が方策だ。

ESGの推進は「自社」「投資先」「教育面」の3方向からアプローチする。自社の取り組みとしては、18年のESGポリシー制定、21年の社外取締役への女性の登用、22年のチーフ・サスティナビリティ・オフィサーの設置と、同ポストへの女性の着任などが挙げられる。

投資先での取り組みは、ダイバーシティ活動の推進や、GHG(温暖化ガス)排出量測定の実施などがある。

前者では、投資先の11企業よりダイバーシティ推進責任者を集め、情報交換やディスカッションを実施。施策の水平展開と共有を目指す。後者では、GHG排出量算定・ 可視化クラウドサービス事業者との包括的契約を通じて、全投資先でのGHG排出量削減などを行う。教育面では、京都大学での寄付講座にてESG投資を取り上げている。

PEファンドがESGに取り組む意義については、PE協会前会長として3点挙げたい。1点目は投資先、とりわけESGマインドが比較的薄い小規模事業者にESGを浸透させ、同時に投資家にも浸透させること。2点目は、ESGマインドの高い海外投資家のリスクマネーを国内に呼び込むこと。3点目は、投資によって社会課題解決に資する企業の成長を促し、ESG推進と投資リターンを両立させることだ。

これらは投資先企業の経営に深く関わるPEファンドだからこそ可能である。

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