サバイバル経営Q&A

CSV・ESGとは? SDGsは謎の用語多すぎます サバイバル経営Q&A 白井旬・職場のSDGs研究所代表

持続可能性 SDGs ESG

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SDGs(持続可能な開発目標)にデジタルトランスフォーメーション(DX)……。ビジネスの現場には次々課題が降ってくる。先んじて対応できればよいが、時には対応が難しく右往左往することも。あなたの職場は持続可能ですか。変化の時代にビジネスパーソンが直面する悩みや疑問に専門家が答えます。第2回はSDGsの関連用語が多すぎて困惑する経営者に、職場のSDGs研究所代表の白井旬氏が考え方を伝授します。

会社としてSDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みを始めようと情報収集を始めました。ところが「CSV」「ESG」など、似たような専門用語がいくつもあり、意味の違いがよくわからず一歩目を踏み出せません。経営者として何から手を付ければよいでしょうか。

まるで4年前の私のようです。SDGsには一目でわかるような明快な基準や正解があるわけではない上、アルファベットの似たような専門用語が多くあります。理解ができていないと、取り組みに不安を感じるのはもっともなことだと思います。私が登壇するセミナーでは、CSVやESGといった用語の説明を始めると、参加者のみなさんが一斉にメモを取り出します。不安があるからでしょう。でも、説明を進めていくと、いつも参加者から安堵感のような反応が返ってきます。それはSDGs関連の用語には「持続可能性」という共通点があること、そして「三方よし」など日本型経営の考え方と親和性が高いことを伝えた場面です。

それでは、用語を説明していきましょう。

CSV=「共有価値の創造」 近江商人の「三方よし」と共通点

CSVはCreating Shared Valueの略で「共有価値の創造」という意味で、近年よく耳にする「両利きの経営」のベースにもなる考え方です。これまで企業活動では経済的利益や短期的な事業目標が優先され、環境破壊や人々の間の格差拡大を招くことが少なくありませんでした。それに対し、企業がその事業で社会課題を解決して社会的価値を生み出せれば、経済的価値(企業利益)と両立できるとする考え方がCSVです。近江商人が大切にしてきた「三方よし」や、「日本資本主義の父」渋沢栄一が追求した経済と公益の両立(道徳経済合一説)に通じます。

沖縄県の食品卸、三大食品(沖縄県南城市)の取り組みは、CSVの意義がよくわかる事例です。4年前、同社は県内への観光客ラッシュに伴いホテルや居酒屋への食品配送件数が急増し、社員の長時間労働や配達車両の燃料費とCO2排出量の増大に直面しました。そこで決断したのは「ライバル企業との共同配送」。競合2社と県内を分担して共同配送することで、車の移動距離や労働時間の大幅圧縮に成功しました。

ライバルとの協力は、自社の利益に固執するとなかなかできない決断です。しかし、共通の利益という視点を持ち協力することで、CO2削減や長時間労働是正という「社会的価値」と、ガソリン代や残業代の節減という「経済的価値」が、無理なく両立できたのです。

ESGは経営の評価指標 環境・社会・統治をバランスよく

ESGはEnviroment(環境)、Social(社会)、Governance(統治)の略語で、3つの要素の進捗で企業経営を評価する指標として提唱されています。3要素にバランスよく配慮して経営を進めていくことが、企業の持続可能性や成長のカギになるという考え方です。

環境や社会という言葉だけとらえると、一企業には荷が重いと感じる人が多いかもしれません。そこでおすすめしたいのは、身近なところから発想することです。たとえば、マグロ漁船を多数保有する漁業会社臼福本店(宮城県気仙沼市)のESG施策の出発点は、子どもたちでした。

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