ヒットの軌跡

チョコモナカジャンボ、なぜ強い パリパリ伝説の秘密 森永製菓「チョコモナカジャンボ」(上)

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年間に国内で約2億個が出荷されているという、単品では日本で最も売れているアイス(氷菓)が森永製菓の「チョコモナカジャンボ」だ。板状のチョコをバニラアイスではさんで、モナカでくるんだこの商品を知らない人はまずいないだろう。1972年に「チョコモナカ」の名前で発売されてから51年目の夏。日本のアイス市場を代表するビッグブランドが「パリパリ」の食感でファンを増やしてきた軌跡をたどる。

最初は「ジャンボ」ではなかった。72年の初代商品は「チョコモナカ」。既に当時からモナカ皮で包むタイプのアイスは他社の先行商品が存在していた。「モナカで包むのは、冷たさが歯に直接伝わるのをやわらげる、日本的な工夫」と、森永製菓のマーケティング本部冷菓マーケティング部アイスクリームカテゴリー担当の中村望ブランドマネジャーはみる。

「チョコボール」や「小枝」などで知られる通り、森永はチョコの加工技術に強みを持つ。モナカの内側にはチョコをスプレーした「チョコモナカ」は「森永らしいアイス」として開発され、モナカの表面には板チョコ風の凹凸があしらわれた。

「まだセンターに板チョコは入っていなかった。板チョコが入ったのは『チョコモナカジャンボ』と名前を改めた1995年から」と、中村氏は歴史をひもとく。今との違いはパッケージにもある。今は横長のパッケージだが、当初は縦型。自動販売機での取り扱いを意識して、縦型が選ばれたという。

シリーズの進化は名前に映し出されている。最初の変化は80年に訪れた。価格が100円の大台に乗ったタイミングで「チョコモナカデラックス」と名前を改め、「センターにチョコレートソースを入れた」(中村氏)。

「デラックス」と格上げした理由はチョコソースだけではない。サイズは1.5倍に大きくなった。外側もモデルチェンジし、モナカの山が12に増えている。ただし、「まだ板チョコではない、ソースタイプのチョコ」(中村氏)。パリパリの食感も前面に押し出してはいない。

実はこまめにバージョンアップを加えてきた。80年代後半にはモナカのパリパリ感をアップ。88年にはチョコの塗り方を改良。食感を高めた。「モナカの内側にまんべんなくチョコをスプレーするのは、アイスの湿気を封じ込めるうえでとても大事」(中村氏)。92年にはチョコを30%も増量している。売り場の環境変化に伴い、パッケージを横型に変えたのはこの年。そして、いよいよ95年に今と同じ「チョコモナカジャンボ」を名乗り始める。

72年に売り出されて、既に20年が経過。はやりすたりの激しい菓子分野では実際、この頃には売上実績が伸び悩んで、存続の危機を迎えていたという。「チョコモナカジャンボ」の登場は生き残りをかけたビッグチャレンジだったわけだ。検討を重ねた末のリニューアル商品だけに、「チョコ」と「ジャンボ」の両面でアピールする戦略を仕掛けた。

最大の変更ポイントはセンターのチョコレートを板タイプに変えたところ。「パリパリ感がぐっと高まった」(中村氏)。モナカの山も1.5倍の18山に増やし、「ジャンボ」の名前にふさわしい形に。95年は実質的な「ジャンボ元年」にあたる。この大がかりな見直しが成功して、「チョコモナカジャンボ」は今に至る成長軌道を描き始めた。

 

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