フィンテックサミット2023特集

次世代の価値をパートナーと共創〜みずほFGがDX加速 みずほフィナンシャルグループ 取締役兼執行役副社長 梅宮真氏が講演

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日本の転換期にある今、長寿社会において将来不安なく生き生きと生活できる環境づくりや、日本経済を再度成長軌道に復帰させること、グローバルなサステナビリティー実現など社会課題が山積している。FIN/SUM2023では、顧客・社会・経済への「豊かな実り」の提供を理念とするみずほフィナンシャルグループ(FG)から、デジタルを活用したイノベーション創出に取り組む梅宮真氏が登壇。同グループの強みと社外ネットワークや先進技術を組み合わせた新規事業など、様々な共創事例を交えながら、デジタルトランスフォーメーション(DX)による課題解決について講演した。

当社がDXで注力するのは組み込み型金融や決済・送金、ブロックチェーンなどを活用した新たなビジネスに取り組む「金融DX領域」、環境・社会・ガバナンスの課題をデジタルで解決する「ESG(SX)領域」、メタバースや非代替性トークン(NFT)など先進技術を取り込んでいく「Tech起点領域」の3領域です。

決済基盤を外部アプリに提供 〜金融DX領域〜

まず「金融DX領域」の事例をご紹介します。当社は現在全国170以上の金融機関が加盟するQRコード決済基盤「J-Coin Pay」を有していますが、2022年夏、この決済基盤を活用して、他社アプリなどに決済サービスを組み込む「ハウスコイン」をリリースしました。企業・自治体が自社の店舗やサービスに限定して利用可能なチャージ型の独自コインを簡易に導入でき、ユーザーへのポイント還元施策なども行えます。

こうしたハウスプリペイド市場は、25年には7兆円規模に伸びることが予測されています。企業と顧客間だけでなく、自治体による住民への給付金支払い、大学・学生間の奨学金など、様々な決済シーンを取り込み、この市場でのプラットフォーマーとなることを目指しています。

第1号案件として、ヤマト運輸公式アプリと連携し、昨年9月、スマホ決済サービス「にゃんPay」の提供を開始しました。導入後は宅配現場を含めた業務の効率化が進み、宅配便の運賃12%割引という形で利用者へ還元しています。企業・利用者双方にとっての課題解決につながった案件です。

他にも、従来紙で発行していた地域振興券をWEBアプリで発行する「デジタル地域振興券」を通算50件以上発行し、顧客利便性や発行体の事務負担軽減とともに、利用・販売データの利活用につながっています。またブロックチェーン技術を活用した「デジタル特典付き社債」は、発行体が投資家と直接接点を持つことが可能なデジタルプラットフォームになります。投資家とのエンゲージメント強化の意味でも取り組む発行体が増えています。

自治体の課題をデジタルで解決 〜ESG(SX)領域〜

「ESG(SX)領域」では、自治体のDX支援を通じた社会課題の解決に取り組んでいます。みずほ銀行、みずほリサーチ&テクノロジーズ、東京都八丈町の3者は22年に包括連携協定を締結し、八丈島の課題を技術実装により解決する「スマートアイランド」実現を目指しています。J-Coin Payの基盤を活用した新型コロナの給付金対応や地域経済活性化のためのキャッシュレスキャンペーンを展開してきました。今後も観光・水産業・防災減災・行政のDXとデータ連携基盤の導入を推進し、データ利活用の推進を通して持続可能な地域社会構築に向けた取り組みを進めていきたいと考えています。

北海道の更別村とも23年2月に包括連携協定を締結し、「更別スーパービレッジ構想」を支援しています。更別村はスマート農業や自動運転車によるデマンド交通など、少子高齢化や人材不足をデジタル活用で解決し、さらに村民の生活がより快適になる取り組みを推進しています。その基盤となるデジタル環境の整備に向け、J-Coin Payの機能を使ってマイナンバーカード取得者に域内のみで使えるデジタルマネーをポイントとして付与する取り組みをスタートしました。健康づくり施策のインセンティブにも横展開が可能で、マイナンバーカード利活用の推進も今後支援していく予定です。

メタバース進出を加速 〜Tech起点領域〜

「Tech起点領域」では、邦銀としていち早くメタバース領域への取り組みを本格化し、非対面の顧客接点として育てていく構想です。メタバースの特性を生かしたビジネスチャンスを探るため、メタバース事業を手掛けるHIKKY社と連携して実証実験を行っています。資産形成、住宅ローン、相続に関する個人のお客様向けコンサルティングサービスのほか、為替相場、産業動向などのセミナーの開催や、法人のお客様同士の交流、就職内定者向けイベントなど様々なシーンでの利用が候補として挙げられており、可能性を探っているところです。

また著名ゲームクリエイターが率いるJP Games社を中心に、各金融機関、その他事業会社が連携し、異なるメタバース間の相互運用を可能とする「オープン・メタバース」基盤づくりにも参画しています。長年金融サービスを提供する中で培ってきたノウハウやJ-Coin Payの決済基盤を生かし、「メタバースコイン」提供などの分野で役割を担ってまいります。

今回紹介した事例の多くは、米シリコンバレーのベンチャーキャピタルWiLと設立したBlue Lab発で実現したプロジェクトです。ベンチャー企業、事業会社、自治体、大学といった多様なパートナーとのオープンイノベーションを推進し、金融領域にとどまらず、メタバース、教育、生成AI(人工知能)、地域DX、医療、宇宙など、あらゆる領域で新たなテクノロジーを用いた次世代のビジネスモデルの創出拠点となっています。

みずほグループならではの価値創造

みずほのグループ会社「みずほリサーチ&テクノロジーズ」や「みずほ第一フィナンシャルテクノロジー」には、AIをはじめとした専門知見やIT実装力など、多くの技術知見が蓄積されています。加えて、高い技術力を持つスタートアップ企業や、各分野で最先端の取り組みを行っている大企業との幅広いネットワークも我々の強みです。この強みを生かしながら、多彩なパートナーの皆様とともに、お客様や経済・社会に対し「豊かな実り」を提供し続けてまいります。

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