NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム

持続可能なブルーオーシャンの実現へ行動の時 NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム設立記念プレイベント

SDGs 海洋保全 持続可能性

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2025年開催予定の大阪・関西万博において、「海洋保全」は最重要テーマの一つ。日本経済新聞社は2022年12月6日に、ブルーオーシャン・イニシアチブ、NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム設立記念プレイベント「2025年大阪・関西万博を機に産官学で取り組む海洋保全」を開催した。西村明宏環境大臣の「ブルーオーシャンは人々の生活を豊かにすると同時に、CO₂を吸収するブルーカーボンによって脱炭素社会の実現にも貢献する」という旨の挨拶で始まったイベントは、海洋汚染の現状、海洋資源の適切な利活用の在り方や関連産業の活性化などについて、幅広い領域から集まった有識者が意見を交換した。(登壇者写真は順不同)

日本経済新聞社と日経BPは2022年12月5日〜10日、様々な立場の人々や企業とともに、経営、投資、環境、ジェンダーなど多様なテーマについてSDGsの実現を議論する国内最大級のイベント「日経SDGsフェス」を開催しました。

このうち、12月6日に開催したNIKKEIブルーオーシャン・フォーラム設立記念プレイベント「2025年大阪・関西万博を機に産官学で取り組む海洋保全」プログラムから「セッション」「基調対談」をダイジェスト版でご紹介します。

                       

大阪・関西万博セッション

坂 茂 | 建築家
原研哉 | グラフィックデザイナー、日本デザインセンター代表取締役社長、武蔵野美術大学教授
髙科淳 | 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 理事・副事務総長
更家悠介 | サラヤ代表取締役社長、特定非営利活動法人ZERIジャパン 理事長
モデレーター:戸田顕司 |日経ナショナルジオグラフィック社長補佐

海の可能性・潜在力示し 来場者の行動変容促す

大阪・関西万博は、大阪市の人工島・夢州で開催される。四方を海で囲まれた場所での万博開催は初めて。「会場全体を新たな時代を予感させるイノベーションの塊にして、未来社会のショーケースを目指す」(髙科氏)。同博に、2019年6月の「G20大阪サミット」で共有された「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」の実現に取り組むZERIジャパンが、海洋保全をテーマに「ブルーオーシャン・パビリオン」を出展する。

会場は、世界初のカーボンファイバー構造と紙管、竹を使った3タイプのドームで構成。坂氏は「万博終了後に杭を抜くような無駄な工事や廃棄物を出さない軽量建築に取り組む」と説明した。展示内容は危機的な海の汚染状況について知り、考えてもらうと同時に、海の持つ可能性や潜在力を示す予定だ。原氏は「来場者の行動変容を促すような感動体験が得られる場をつくる」と意気込みを語った。

髙科氏は「大阪・関西万博を一過性のイベントに終わらせず、レガシーとするために、海洋汚染に真正面から取り組んでいるブルーオーシャン・パビリオンへの期待は大きい」と話し、更家氏は「このたびブルーオーシャン・イニシアチブが設立された。我々は大阪・関西万博でのパビリオン展示をマイルストーンに、ネットワークをより一層拡大し、ブルーオーシャン実現に向けて継続的に取り組んでいく」と決意を述べた。

 

ブルーカーボン・ブルーファイナンスセッション

香月康伸 | みずほ証券 サステナビリティ推進部 SDGsプライマリーアナリスト
中空麻奈 | BNPパリバ証券 グローバルマーケット統括本部 副会長
枝廣淳子 | 大学院大学至善館 教授、ブルーカーボン・ネットワーク代表
モデレーター:渡邉敦 |公益財団法人 笹川平和財団 海洋政策研究所 上席研究員(ジャパンブルーエコノミー技術研究組合 理事)

一石二鳥の気候変動対策 鍵は資金提供の仕組み

海草や海藻は生長する際に、海中でCO₂を吸収する。こうした海洋生態系に蓄積される炭素を「ブルーカーボン」と呼ぶ。海や沿岸環境を活用した経済活動「ブルーエコノミー」の中で、森林よりも効率よくCO₂を吸収できる方法として、ブルーカーボンは非常に大きな可能性を持っている。「熱海モデル」と呼ばれる藻場の再生プロジェクトに取り組む枝廣氏は「海の豊かさを取り戻すと同時に、気候変動対策ともなるブルーカーボンは一石二鳥の取り組み」と訴えた。

課題は資金。現状ブルーカーボンをクレジットにしたプロジェクトは規模が小さく、ファイナンスの対象とはなりにくい。そこで中空氏は「関連技術や取り組み状況など、プロジェクトを判断する定義の確立と、正しい資金提供を行う仕組みづくりが不可欠」と主張。香月氏は「資金の流れを促していく上で、地方自治体が積極的に関わり、事業のアピールやコーディネートする役割を担うことが必要」と述べた。

漁師など地元の理解や、人材の育成が欠かせないこと。観光やレジャーとしての活用、教育や研究の場としての利用といった多様な便益へとつなげていくことの重要性なども指摘された。最後に渡邉氏が「多様な技術を持ち、海に囲まれた日本にとって、サステナブルなブルーオーシャン実現に向けた基盤づくりが急がれる」とまとめた。

 

基調対談 グローバルコモンズとしての海洋を考える

ピーター・トムソン | 国連事務総長海洋特使
石井菜穂子 | 東京大学 理事、未来ビジョン研究センター 教授、グローバル・コモンズ・センター ダイレクター

生物多様性を守る経済へ 自然資産価値の市場化を

地球規模で人類が共有している資産(グローバルコモンズ)の中で「海は世界で1つ」とトムソン氏。「生物圏の20%の酸素を作るとされる海洋バクテリアのプロクロロコッカスに対するマイクロプラスチックの影響をもっと知る必要がある。私たちは自然の中に住んでいるのであり自然を支配しているわけではない」と話した。

「カーボンニュートラルとネイチャーポジティブはコインの裏表」と説く石井氏は、生物多様性を守る経済システム構築では「食生活の変更と自然資本の価値付けと市場化がインパクトを与える」と指摘。トムソン氏は「無駄な食品消費は短期間で改善可能。また、途上国任せではなく、海洋を含む自然資産の収益化を図る投資スキームの構築が、先進国には求められる」と応えた。

プラスチック・資源リサイクルセクション

澤田道隆 | クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA)会長、花王 取締役会長
釣流まゆみ | セブン&アイ・ホールディングス 執行役員 経営推進本部 サステナビリティ推進部 シニアオフィサー 
石川雅紀 | 叡啓大学 ソーシャルシステムデザイン学部 特任教授、ごみじゃぱん 代表理事
モデレーター:枝廣淳子 |大学院大学至善館 教授、ブルーカーボン・ネットワーク 代表

ごみを資源ととらえ直し 資源循環経済の実現へ

海洋プラスチック汚染が深刻だ。プラスチックは自然に戻らない人工物なので「海に出さないで、陸上でリサイクルして回すことが重要」(枝廣氏)になる。そこで石川氏は「使用済の製品を回収して再資源化し、自社製品に使う水平リサイクルが有効打になる」と訴えた。また神戸市で取り組む詰め替えパウチの例を挙げ、資源循環システムに対する設計思想の重要性を指摘した。

澤田氏は企業アライアンス「CLOMA」の活動を紹介した。エシカル(倫理的)な意識やゴールの共有、社会のお役立ちとビジネスの両立、それを可能にする技術力が強みと説明。「競争関係の枠を超えた連携と日本らしさを生かして、プラスチックごみ問題解決のジャパンモデルを早期に構築し、世界の見本を目指す」と語った。

セブン&アイグループは2019年に環境宣言を公表し、テーマの一つにプラスチック問題を掲げる。釣流氏は「多くのプラスチックを使用している企業として、サーキュラーエコノミーを経営の中核に据えて取り組んでいる」と説明。「わかりやすい言葉で資源循環への理解を図り、生活者であるお客様の意識醸成につなげたい」と語った。

最後に資源循環を推し進める上での課題を問われ、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律などの法制度」(石川氏)、「ごみを資源ととらえ直す国民の意識改革」(澤田氏)、「目指すゴールの明確化」(釣流氏)が挙がった。

 

シーフードセッション

石井菜穂子 | 東京大学 理事、未来ビジョン研究センター 教授、グローバル・コモンズ・センター ダイレクター
大井智博 | ヒルトン リージョナルサプライマネジメント統括本部 日本・韓国・ミクロネシア地区担当 統括本部長
山本光治 | 水産養殖管理協議会(ASCジャパン)ゼネラルマネージャー
屋葺利也 | ニッスイ サステナビリティ推進部 担当部長
森井茂夫 | ニッスイ サステナビリティ推進部 担当部長
モデレーター:花岡和佳男 |シーフードレガシー 代表取締役社長

漁獲可能資源が激減 ラベル販売店舗多い日本

国際連合食糧農業機関によると、生物的に持続できない乱獲・枯渇状態にある漁業資源が約30%で増加傾向にある一方、まだ資源に余裕があるのは10%にとどまり減少傾向にあると花岡氏が説明。こうした状況にもかかわらず、日本は輸入を通じて資源喪失に大きく加担しており、石井氏は「消費者とともにグローバルに漁獲と消費の管理を考える必要がある」と指摘した。また水産物の半分は養殖で、養殖も天然資源からの育成。責任ある養殖により生産された水産物を示すASC(水産養殖管理協議会)認証ラベルは市場を通じた持続可能性を目指すが、「生産者自身がサステナブルシーフードの動きを強めていくことが大切」と山本氏は訴えた。

大井氏は「ヒルトンでは責任ある調達から絶滅危惧種をメニューから排除し、調達の25%を認証商品にしている。それ以外もWWF(世界資源保護基金)のグリーンリストなどに基づいて購入している」と説明。一方ニッスイは2016年から「SeaBOS(持続的な水産ビジネスを目指すイニシアティブ)」に参加。屋葺氏は「競合他社や科学者とともに課題解決に取り組んでいる」と報告し、森井氏は「独自の資源調査を実施。改善すべき資源が見つかれば対応している」と話した。

最後に石井氏が「20%の市場支配力を持つSeaBOSの活動に期待する」と述べ、「サステナブルシーフードは欧米が進むが、ラベル付きで提供している店舗数は日本が一番多い」と山本氏が評価した。

クロージングセッション

ピーター・トムソン | 国連事務総長海洋特使
角南篤 | 公益財団法人 笹川平和財団 理事長
更家悠介 | サラヤ 代表取締役社長、特定非営利活動法人ZERIジャパン 理事長
渋澤健 | シブサワ・アンド・カンパニー 代表取締役 兼 コモンズ投信 取締役会長
モデレーター:藤田香 |日経ESGシニアエディター、東北大学大学院生命科学研究科教授

海洋でインパクト投資を G7議長国の機会生かせ

クロージングでは、まず技術に関して、更家氏がブルーオーシャンを目指すイノベーションの芽として、食品、医薬品、ペーパー素材としての海藻や、電動フェリー、凧(たこ)風力発電、網ではなく泡で小魚を獲るバブルフィッシングなど、グローバルな最新動向を紹介。角南氏が若手の海洋研究者の圧倒的な不足を指摘し、技術を社会実装する際の大学による評価システムの構築を提案した。またトムソン氏が海洋汚染、漁業、化学の3分野での日本のリーダーシップに対する期待を述べた。

今後企業はTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に加え、TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)開示も求められる。藤田氏の「金融はどう関わるか」との問いに対し、渋澤氏は「利益の最大化ではなく価値の最大化が求められる時代。リスクとリターンの2次元から、課題解決という価値創造インパクトの3軸目を加えた世界だ。測定可能なインパクトという共通言語を通せば産官学も連携しやすく、投資ターゲットになる」と答えた。また地域づくりでは角南氏が「海業の視点でレジャーから漁業、教育、人材育成も含めたトータルな沿岸地域開発を議論している」と紹介した。

最後にトムソン氏が「2023年は日本がG7議長国。この機会に海洋に関するメッセージを発信することで、25年の大阪・関西万博にもつながる」と総括した。                   

NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム始動、内外に情報発信

日本経済新聞社と日経BPは、海の保全や海洋資源の正しい利活用などについて議論し、グローバルに発信する「NIKKEIブルーオーシャン・フォーラム」を設立する。海洋に関連する多様な領域の専門家や企業の代表らで組織する有識者委員会を年4回のペースで開催。多角的に議論を深め、大阪・関西万博が開催される2025年には、「海洋保全に関する日本からの提言」をまとめて内外へ発信する計画だ。

先進的な活動を行っている企業・自治体などを表彰するアワードやアンケート調査も実施する。また、具体的なアクションを進める一般社団法人ブルーオーシャン・イニシアチブや大阪・関西万博に出展されるブルーオーシャン・パビリオンとも連携して、法人・個人の海洋保全活動への参加を呼び掛ける。

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