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GXへの投資に注力 23年12月SDGsフェス サステナブルな社会の実現

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SDGs 採録 脱炭素

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グリーントランスフォーメーション(GX)を通じた環境保全と経済成長の両立が求められている。世界のESG(環境・社会・企業統治)投資額が増える中、日本のGX戦略も動き出した。バリューチェーン全体の人権尊重が重視され、児童労働の撲滅や労働安全性の向上も迫られる。2023年12月7日開催の「サステナブルな社会の実現」で、大和証券グループ本社の中田誠司社長は、国や企業と投資家をつなぐ役割を担い、SDGs(持続可能な開発目標)債発行を支援する意向を示した。

【企業講演】「貯蓄からSDGsへ」推進

中田 誠司 氏 大和証券グループ本社 執行役社長CEO

山積する社会課題の中で、気候変動は喫緊の課題となっている。世界のエネルギー関連の温暖化ガス排出量は、2022年には年間で約368億㌧と過去最高となった。

国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の調べによると、エネルギー効率の改善や再生可能エネルギーへの移行などに対して、50年までに最大で約131兆㌦にも及ぶ投資が必要とされている。

日本政府はGX戦略を経済政策の一つに掲げた。向こう10年を見据えたロードマップを示し、官民合わせて150兆円を超す投資を目指すとした。このうち20兆円は政府が債券を発行し調達される計画となる。残りの130兆円は民間からの投資が期待されている状況だ。

当グループの役割は、資金を必要とする国や企業と投資家との仲介。持続可能な社会を実現する「サステナブルファイナンス」の推進に向けて、21年に策定した経営ビジョン「2030 Vision」で「貯蓄からSDGsへ」をコアコンセプトとして打ち出した。

重要課題としては「人生100年時代」「イノベーション」「グリーン&ソーシャル」「ダイバーシティ&インクルージョン」、これらを支える土台に「サステナブル経営の基盤」を掲げる。

具体的には、まずSDGs債の発行の支援を行う。環境プロジェクトを後押しするグリーンボンドや、一足飛びにグリーンに移行することが難しいセクターを段階的に支援するトランジション(移行) ・ボンドなどがある。また、日本政府が発行を計画する20兆円規模のクライメート・トランジション・ボンドのフレームワーク作成などのサポートを実施するアドバイザーとして当社が選出された。 

商品開発では、ESG関連ファンドのラインアップを拡充した。加えて、米Global Xとの合弁会社となるGlobal X Japanを立ち上げた。日本で唯一の上場投資信託(ETF)専門資産運用会社としてESGに沿ったETFを提供している。

さらに当社では、競争力の源泉は「人材」と考え、人的資本経営を推進している。ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みとして、女性取締役比率30%の達成、男性の育休取得100%、シニア世代に活躍してもらうため営業職の定年制度の廃止などがある。有価証券報告書において、人的資本に関する情報開示が義務化されたが、投資家に正しく理解してもらうために追加情報の開示を工夫している。

これからも立場や業界を超えた協働を模索し、挑戦を続けていく。

【パネルセッション 第1部】生産地の児童労働 撲滅へ

向井 芳昌 氏 日本たばこ産業 サステナビリティマネジメント部長
太田 珠美 氏 大和総研 金融調査部 ESG 調査課長 主任研究員

太田 人権尊重についての取り組みを聞きたい。

向井 当社の経営理念は、お客様を中心に、株主、従業員、社会の4者の満足度を高めていく「4Sモデル」だ。サステナビリティへの取り組みは、この経営理念と親和性が高いと考えている。 

16年にはJTグループ人権方針を策定した。これは、ビジネスと人権に関する指導原則(UNGP)に則した内容となっている。人権デューデリジェンスの取り組みとして、人権リスクが高い国を特定し、人権影響評価を行っている。 顕著な人権課題の一つである児童労働においては、児童が教育機会を得られないことが根本的な問題である。11年に国際労働機関(ILO)や非政府組織(NGO)と共同で立ち上げた児童労働プログラムARISEを通じて、総計約6万5000人の子供の入学を支援してきた。

太田 この数年で人権に対する取り組みは広がったか。

向井 人権問題に関する関心は海外が先行していたが、国内では20年に「ビジネスと人権」に関する行動計画が策定され、投資家や国内の企業からも問い合わせが増えた。

太田 JTグループの取り組みに変化はあるか。

向井 当社においても、海外での取り組みが先行していたのは事実だ。私は今年初めて葉たばこ生産地のマラウイ共和国へ出向いた。マラウイにおいても、個別の人権課題への対応にとどまらず、産業全体をサステナブルにしていくことを目指している。また、人権リスクとは企業にとってのリスクではなく、人権侵害を受けている側のリスクだという考え方も必要だ。日常の事業活動の中で、社員に浸透させていくことが重要だ。

太田 近年、人権への対応として、児童労働や強制労働の撲滅などの最低限守るべきものから、働きがいのある人間らしい仕事へ考え方が広がっている印象がある。

向井 23年に、JT Group Materiality (重要課題)として「自然との共生」「お客様の期待を超える価値創造」「人財への投資と成長機会の提供」「責任あるサプライチェーンマネジメント」「良質なガバナンス」を定めたが、あえて人権というテーマを独立させて掲げなかった。人権課題は、社会におけるあらゆる課題を包含していることから、それぞれのマテリアリティに通底するものだと考えたためだ。

太田 23年3月期から有価証券報告書でサステナビリティ情報開示が義務化された。

向井 非財務情報はこれまで統合的に収集、活用できていなかった。開示のためだけにデータを集めるのでは意味がなく、経営判断や戦略策定に活用することが重要。情報を開示する際には、数字を示すだけでなく、ストーリーとして伝えていくべきだ。

【パネルセッション 第2部】150兆円で脱炭素目指す

梶川 文博 氏 経済産業省 産業技術環境局 GX金融推進室長 GX推進機構設立準備室長
根岸 真美 氏 大和証券 サステナビリティ・ソリューション推進部長

根岸 GXを巡る国際動向の変化はあるか。

梶川 近年、期限付きのカーボンニュートラル目標を表明する国・地域は23年5月時点で158と急増していて、国内総生産(GDP)総計では世界全体の9割を超える。金融機関の動きとしては、全世界のESG投資の合計額は20年で35.3兆㌦にまで増加した。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に対しては、世界で2616の金融機関などが賛同している。国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)も設立され、国際的に改善の流れが来ている。ここでしっかり投資することで、最終的な環境価値が売れる産業構造になってくると見ている。

根岸 日本の50年ネット・ゼロは実現可能か。

梶川 現状では着実に削減を進められている。30年度に設定している、13年度比で46%減の目標に向けて順調に進捗しており、これまでに約20%を削減している。

根岸 日本政府のGX推進戦略はどういった内容か。

梶川 まずエネルギー安定供給の確保を前提とした取り組みを行う。省エネや再生可能エネルギーの主電力化、厳格な安全審査を前提とした原子力の活用などを検討中。それから、成長志向型カーボンプライシング構想を打ち出している。内容は、①GX経済移行債を活用した先行投資支援②カーボンプライシングによるGX投資先行インセンティブ③新たな金融手法の活用――だ。①では世界初の国によるトランジション・ボンドとして発行する予定、②は26年度には排出量取引制度の本格稼働、28年度には化石燃料賦課金制度を導入する。33年度には発電事業者に欧州連合(EU)などと同様の「有償オークション」を段階的に導入する。

根岸 今後10年間で150兆円の官民によるGX投資を見込んでいる。先行投資としてGX経済移行債を発行、20兆円ほどを調達予定だ。脱炭素目標達成への取り組みについて聞きたい。

梶川 カーボンニュートラルへの転換のためには、電力部門では脱炭素電源の拡大が必要。産業・民生・運輸からなる非電力部門では、脱炭素化された電力による電化を行う。電化や非化石電源では賄えない熱需要や原料需要を変えることも必要だと考える。

根岸 トランジション・ファイナンスとは何か。

梶川 脱炭素社会に移行するための様々な取り組みに資金を出していく。研究開発にも積極的に出資しないと二酸化炭素(CO2)排出量ゼロにはならない。長期的に企業を支援するために、GX経済移行債を発行する。

根岸 「クライメート・トランジション・ボンド」として発行する同国債について詳しく聞きたい。

梶川 国際資本市場協会(ICMA)の国際基準に基づき、フレームワークを策定した。その概要は、移行戦略、調達資金の使途、レポーティングである。これらに対して、外部の評価機関からセカンド・パーティ・オピニオン(SPO)を取得した。GXの予算は、22年度の補正予算1.1兆円と23年度の当初予算0.5兆円の合計1.6兆円を予定している。

その内訳は、まず研究開発だ。グリーンイノベーション(GI)基金を積み増し、水素還元製鉄など革新技術を研究開発支援する。次に設備投資、蓄電池や省エネ設備に投資する。最後に、需要対策としてクリーンエネルギー自動車導入や二重窓などの住宅断熱性能を向上する設備導入の支援を行う。

企業への投資だけでなく、需要対策をして個人がGXを認識することで、市場ができると考えている。

根岸 なぜグリーンボンドではなくクライメート・トランジション・ボンドなのか。

梶川 産業の脱炭素化の取り組みなど、トランジション分野に資金を流さないとCO2はゼロにならない。また、国としてこういった取り組みを見せることで、民間の事業会社の投資が進むと見ている。

根岸 技術の開発進度によって、目標とのずれが発生した場合はどうするか。

梶川 金融庁、環境省とともにフォローアップガイダンスを策定した。目標とのずれが発生した場合、その認識、要因の分析、対策などを投資家と議論することをまとめている。今回のように長期で取り組みを行う場合は、債券の投資家においても、エンゲージメントを加速させ、発行体とディスカッションしていくことが重要だと考えている。

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