ひらめきブックレビュー

リベラルアーツの価値 多様化の時代を生きる助けに 『視点という教養(リベラルアーツ) 世界の見方が変わる7つの対話』

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■何に好奇心を持っても許される時代

歴史学の章には、東京大学史料編纂所教授の本郷和人氏が登場する。歴史学で史料を読み解く際には、その史料の信頼性を判断することが重要という。「平家物語」であれば、琵琶法師が聴衆に向けて語っていたことを踏まえれば、事実が多少、大げさに加工されていると考えるのが自然であり、信頼性は低い。物事の背景まで踏まえて評価する視点は、ネット社会にあふれる情報に触れる際にも役立ちそうだ。

もっとも、本書に「すぐに役立つ」話は少ない。リベラルアーツは「楽しいから」学ぶもので、役立てるために学ぼうとすれば、その時点でリベラルアーツではなくなるからだ。ただ、読みながら専門家の思考をたどっていると、定点カメラで見ていた風景を、ふと横から見せられたような感覚を得る場面がしばしばある。それは興奮の瞬間だ。多様な視点を得ることは、人生を豊かにし、回りまわって実生活にも役立つに違いない。

深井氏によれば、人類は今、貧富や宗教などの思想にかかわらず、誰が何に好奇心を持っても許される時代を、史上初めて迎えているそうだ。本書から、好奇心の向くままに学べる喜びを堪能してほしい。

今回の評者 = 前田 真織
2020年から情報工場エディター。08年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。

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