ひらめきブックレビュー

50代は助走期間 会社員の鎧を脱ぎ定年後の自由に備えよ 『50歳からの脳老化を防ぐ 脱マンネリ思考』(和田秀樹 著、マガジンハウス)

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新年早々、私事で恐縮だが、最近、30年以上勤めた会社を早期退職した。やりたかったことを始めようと一念発起したのだ。定職がなくなった不安はある。しかし、私の気持ちを軽くしてくれたのが本書『50歳からの脳老化を防ぐ 脱マンネリ思考』だ。

本書は、会社員にとって50代は「やってみたかったこと」を始める格好のチャンスだと説く。定年を10〜15年後に控えたこの時期に、残りの会社人生に自分の力をささげるのではなく、定年後を見据えてやってみたかったことの準備に動く。そして、定年後に20年以上も続くだろう残りの人生を、楽しく、充実させることを提案している。

著者の和田秀樹氏は、精神科医、和田秀樹こころと体のクリニック院長。

習い事は今から始める

50代はまだバリバリ仕事をしている世代だ。やりたいことや始めたいことがあっても後回しになり、定年後に取り組もうとする人が大半だろう。だが、著者は50代から旅行や楽器演奏、読書や料理など、好きなことをジワリと始めるのがよいと勧める。

なぜなら、定年後に新しく習い事などを始めても、周囲との力の差を感じて情けなくなりがちだからだ。絵や楽器を習う場合は基本を繰り返さなくてはならず、上達への焦りが生まれやすい。だが、50代にスタートすれば定年までに10年ほど続けることになり、ある程度のレベルになっているはずだ。たとえ自分には向いていないことが分かったとしても、定年後に別のスタートが切れるため有意義だと著者は説く。

定年までの時間は「助走期間」という著者の言葉に納得するが、助走期間をフットワーク軽く過ごすためにどんなことに気を付けるべきか。それは「脳の老化」だ。著者いわく、意欲をつかさどる脳の部位、前頭葉は40〜50代から萎縮する。しかし、未経験のことに向き合ったときに前頭葉は働くため、変化を起こすことが意欲の向上につながり、ひいては脳の老化を防ぐという。定年後をスムーズに始めるためだけでなく、定年までの時間を意欲的に過ごすためにも、新しいことへのチャレンジは必須というわけだ。

アロハシャツで出社

50代が陥りやすい注意点も挙がる。例えば「ねばならない思考」だ。仕事は最後までやり遂げなければならない、人づき合いに自分の都合は優先してはいけない、といったこれまでの会社員生活を通じて染み付いた考え方である。これらに縛られたままでいると、自由なはずの定年後が無味乾燥なものになると著者は警告する。

確かに私も、退職したその日から時間や場所などの制約のない環境に置かれ、やるべきことをやっていないような戸惑いを覚えた。自由にも練習が必要だ。会社員のうちに、組織勤めのルールや固定観念といった「鎧(よろい)」を自在に脱げるようになっておくことが、定年後の自由を謳歌するためのカギと心得たい。

著者はほかに「アロハシャツで出社する」など50代が変化を起こすコツを紹介する。50代はもちろん、多忙な30、40代のビジネスパーソンが「自由な人生」について考えるきっかけになりそうだ。

今回の評者 = 高野 裕一
情報工場エディター。医療機器メーカーを経て、技術動向を分析するフリーライターの道を歩む傍ら、11万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。長野県出身。

 

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