日経SDGsフェス

貯蓄から投資 流れを後押し 23年12月SDGsフェス 資産運用会社の未来像プロジェクト 2023シンポジウム

PR
SDGs 採録 金融

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

貯蓄から投資への流れは本格化するのか。2024年1月からスタートした新しい少額投資非課税制度(NISA)がカギを握る。個人投資家との接点が少なかった資産運用会社でも、個人向けの教育部署を設けたり、新たな投資信託を開発したりするなど準備が進む。23年12月5日に開催したシンポジウム「資産運用会社の未来像プロジェクト」では各社が取り組みを紹介した。

【基調講演】資産運用の高度化目指す

齊藤 将彦 氏 金融庁 企画市場局 市場課長

日本の家計金融資産の伸び率は米国の半分以下だ。一因は株式等の保有率にある。2019年の株式等保有割合を所得階層別(5分類)に見ると、日本の8〜12%に対し米国は16〜41%で、低所得層でも米国は高かった。

一方、国内でも20〜30歳代のNISA口座開設数が急増し、投資を行う人の割合は21年までの4年間で20代が2.5倍、30代も2倍と伸びている。政府が22年11月に策定した資産所得倍増プランでは、NISAの抜本的拡充・恒久化を打ち出し、24年1月から新NISA制度が始まる。

23年11月29日公布の金融商品取引法の一部改正法では、顧客本位の業務運営の確保・金融リテラシーの向上、非財務情報開示の充実(四半期報告の廃止・決算短信への一本化)、デジタル化の進展等に対応した顧客の利便性向上・保護を3本柱とした。

資産運用会社の高度化については、23年度の骨太の方針に基づき、金融審議会のタスクフォース等で、「大手金融グループにおける運用力向上・ガバナンス改善・体制強化(プランの策定と公表)」「プロダクトガバナンスの確保(原則の策定)」「投資信託に関する日本独自の慣行の見直し」「新興運用業者促進プログラム」等を検討している。

政府はこうした取り組みを総合的に進め、インベストメントチェーンを通じた成長と分配の好循環により資産運用立国の実現を目指していく。

【講演】健全財政で運営

中村 明弘 氏 企業年金連合会 運用執行理事

設立から半世紀を過ぎた当会は現在、3200万件の記録を管理し、846万人の受給者に年金を給付している。管理・運用する年金資産は12兆円を超え、積み立て水準は123.9%と健全な財政で運営している。

運用規制の適用除外を受けた1996年度以降の運用結果は年率4.51%で、代行部分の債務評価に用いる厚生年金保険の平均利回り3.7%を0.81㌽上回っている。

運用はアクティブが中心で、年率0.71%の超過収益を獲得している。アクティブ運用は資産全体の88%を占め、その中にはアルファ源泉の多様化を目的としたオルタナティブ投資が資産全体の17%を占めている。

当会のスチュワードシップ活動は90年代後半に遡る。自家運用で国内株式のパッシブ運用を行っているため、投資先企業と直接エンゲージメントを行い、株主議決権行使も行っている。ESG(環境・社会・企業統治)投資は、ESGインテグレーションを中心に全体の4割程度、リスク資産に限れば7割強を占める。優秀な長期のアクティブ運用は、結果的にサステナブルな運用となる。

企業年金は、健全な財政を維持し国民の老後生活に貢献しているが、最近は資産運用のみに着目した改革が議論され、負担やリスクが増すこととなれば制度の存続が危惧される。

【リレートークセッション1】

未来育む投資を推進

丸山 隆志 氏 アセットマネジメントOne 常務執行役員 運用本部長
伊藤 雅子 氏 アセットマネジメントOne 執行役員/未来をはぐくむ研究所長

丸山 当社の運用資産残高は約65兆円で、運用担当は260人を擁する。株式のアクティブ運用で高いリターンを出すためには、変化の源泉に着目することが基本だ。企業自身の変化、技術革新、消費者動向、国の政策や規制、地政学リスク、気候変動への対応、市場の反応など、多様な変化の源泉を見逃さないことが重要だ。当社は伴走型エンゲージメントを通じて投資先の企業価値向上をより強く働きかけていく。同時に議決権行使の判断基準を引き上げ、新しい付加価値創造を後押しする。それが結果的にお客さまのリターンにつながり、新しい投資を生む好循環につながればと思っている。

伊藤 資産運用会社には、受託者として投資家の資産形成を後押しする役割と、責任ある投資家として投資先企業の中長期的価値向上を後押しする役割がある。当社のコーポレート・メッセージ「投資の力で未来をはぐくむ」を冠し、当研究所は23年10月に発足した。当社商品とは切り離した中立・客観的立場で、個人顧客に直接届くような金融経済教育の推進を目指している。24年からの新NISAは投資に地殻変動を起こす可能性を秘めている。当研究所では、知識だけでなく金融行動を促し人生を楽しむ、さらにはお金の可能性を引き出す手助けを、できるだけ身近な存在として提供していきたい。

NISA 枠空ける活用術も

津田 雅義 氏 ニッセイアセットマネジメント 常務執行役員 投資信託営業本部 本部長

資産運用会社は、年金機関投資家向けの投資顧問領域、ミドルバック領域、新NISAが始まる公募投信領域の3領域で変革を迫られている。

投資顧問領域では、超長期債の利回りが2%を超えるとバランス型ALM(資産・負債の総合管理)が終焉(しゅうえん)を迎え、市場インデックスをベンチマークとする運用から負債をベンチマークとする絶対収益運用にお客様のニーズがシフトしていくだろう。

ミドルバック領域では生成AI(人工知能)に代表される技術革新で生産性向上の動きが加速する。

新NISAでは、資産運用会社も独自商品やサービスが提供できなければ生き残れない。課税口座にある公募投信57兆円を解約する動きが始まり、新NISAに資金がシフトする。特に、新NISAに適合しない毎月分配型19兆円は他の商品に乗り換えられる可能性が高い。

貯蓄から投資への資金移動が進むためには、運用の成功体験が欠かせない。長期・分散・積み立てが資産形成の基本だが、成功確率を高める新NISA活用術もある。その一つが、含み損のファンドを「ほったらかす」ことなく、売却と買い直しでNISA枠に空きをつくり運用の効率化を図る方法だ。当社では「Smart NISA Labo」というサイトで活用術を一般公開しているので参考にしてほしい。

長期の成長可能性に注目

萩野 琢英 氏 ピクテ・ジャパン 代表取締役社長

ピクテはスイスのジュネーブで1805年に設立された、ピクテ家のプライベートバンクを母体とした金融グループだ。ナポレオン全盛期以降に王侯貴族の資産を保全する役割を果たしてきた。現在は世界30拠点にオフィスを構え、ムーディーズからはAa2の高格付け(講演時)を受けている。23年9月末のグループ全体の運用・管理資産は約103兆円で、ピクテ・ジャパンは約3.1兆円を運用。グループのPB部門のプライベート・バンカー1人で預かっている顧客資産は約1000億円。日本は特殊で、プライベートバンク業務は行っておらず資産運用業務に特化している。

運用姿勢は10年単位での投資だ。トレーディングは行わず、安くなってきたら投資比率を上げ、高くなったら様子見というスタンスだ。安いもの、10年後20年後の成長可能性に投資する。3割から4割は失敗することを前提としている。

日本のインフレ率は過去25年と今後25年では大きく変わる。1人当たり「国内総生産(GDP)」がかなり低い国になったため、海外からのインフレ圧力が今後高まり物価を押し上げる。全体資産の3割のトレーディングでは不足で、8割程度を運用する必要がある。その際はリスクを少し抑え、1位ではなく3位を狙うのがよい。そのためにはポートフォリオの初めの簿価をしっかりと分散投資でつくることが必要だ。

(リレートークセッション1の聞き手は 小平 龍四郎 日本経済新聞社 上級論説委員兼編集委員)

 

【リレートークセッション2】

家族単位で枠利用を

南川 久 氏 りそなアセットマネジメント 未来資産形成ラボ所長

当ラボは、「将来世代に対しても豊かさ、幸せを提供」することをパーパスに掲げ、中長期的資産形成に有益な情報やサービスを提供している。

新NISAは限度額が1800万円に拡大されるが、夫婦であれば3600万円だ。これまでのジュニアNISAは廃止されるが、子どもの誕生で将来の教育資金のためにつみたて投資枠を利用し、大学入学後に解約してできた空きを夫婦のセカンドライフのために活用することもできる。こうした家族単位での資産運用を私はファミリーポートフォリオと呼んでおり、新NISAをきっかけに家族単位での資産運用が広がると考えている。

また、日本においてはアクティブ運用の拡大余地が大きく、来年は運用成績のよいアクティブファンドに注目が集まり、アクティブファンド復権の年になると予想している。海外投資家が日本株、特に中小型株に注目しており、日本経済がデフレからインフレに転換しつつあることがその理由だ。

当社は日本株のアクティブ運用で60年の歴史を持ち、投信評価会社から最優秀ファンドに選ばれたファンドも運用している。資産運用で成功するためには、目標設定、早期着手、ほったらかしという3つのコツがある。大事なのはタイミングではなく、タイムだと強調しておきたい。

企業評価に社会的責任

平野 哲也 氏 スパークス・アセット・マネジメント 運用調査本部 共同本部長/ファンド・マネージャー

私たちが考える運用の高度化は、原点回帰だ。顧客本位でよい投資をするという当社の投資哲学への原点回帰だ。投資を通じて世界を豊かに健やかに幸せにする。株価を追うのではなく、社会に貢献する企業、結果として企業価値が長期にわたって増大する企業に投資をすることが原点だ。

かつての企業価値は、1株当たり利益(EPS)×PER(株価収益率)という大きいことはいいこととされてきた。現在はこれに社会的責任がプラスマイナスされる。当社の原点は、EPS×PER×長期的な持続可能性だ。持続可能性は足し引きではなく掛け算であり、可能性が企業価値に大きく影響する。

例えば自動車産業は利便性が事故多発という社会的リスクを上回って発展したが、安全性向上への投資で社会的リスクが低減され、持続的成長で企業価値を増大させてきた。

長期的視点で事業価値のサポートをするのが投資家の役割であり、原点の良い投資は人(企業)と人(投資家)との対話を通じてのみ実践される。この人でしかできないことを突き詰めることが高度化だ。

企業、株主、社会は同じ船に乗っている。アセットオーナー、投資先企業、運用会社は良い投資の哲学を共有し三人四脚で長期的事業価値向上を目指すことが重要だ。価値向上をベースとした株価上昇は、社会を豊かにしてくれる。

(リレートークセッション2の聞き手は 藤田 和明 日本経済新聞社 上級論説委員兼編集委員)

 

◇ ◇ ◇

※本シンポジウムのアーカイブ視聴はこちらから

記事保存

日経BizGate会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。

SDGs 採録 金融

閲覧履歴

    クリッピングした記事

    会員登録後、気になる記事をクリッピングできます。