ひらめきブックレビュー

いまどき部下が求める「丁寧な上司」 承認や共感が大事 『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(新田龍 著、ハーパーコリンズ・ジャパン)

働き方 組織 Z世代

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年功序列が弱まった昨今では、誰もが管理職になれるわけではない。管理職を目指すことは一つの挑戦であり、いざ管理職になったら、部下を束ねチームとしての成果を出すという大きな挑戦が待っている。

本書『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』は、いまの時代にふさわしい管理職の振る舞い方を指南する書だ。最近の若者世代の傾向を俯瞰(ふかん)した上で、部下のやる気を高める話し方、退職してもらいたい問題社員との付き合い方など、実践的な観点でマネジメントのキモを説明する。生々しい会話事例も多く、管理職や管理職予備軍が年下世代と付き合うためのヒントが満載だ。

著者の新田龍氏は働き方改革総合研究所株式会社(東京・渋谷)代表取締役、企業コンサルタント。

部下をよく見て関心や共感を示す

最近の若手社員のスタンスをまずは押さえたい。本書が紹介する調査によると、若手社員が重視するのは「不干渉」「自分の価値観の尊重」だという。業務後の飲み会などで会社が私生活に関わってくるのを避けたい、会社ではなく自身の価値観に従って仕事をしたいというのが若者の本心だ。

理想の上司・先輩に関する項目では、情熱的な上司の支持が大幅にダウンし、丁寧・寛容な上司への支持が過去最高になっている(2012年の調査以降)。そこで上司として気になるのは「丁寧だ」と感じてもらう接し方だろう。著者は「手厚い個別対応」が必要と述べる。多様な価値観に理解を示し、若手のちょっとした変化や長所を承認する姿勢を持つことだ。

大変そうだと思うかもしれないが、やるべきことは案外難しくない。「〇〇してくれてありがとう」と感謝を具体的に伝えたり、大げさに相づちを打って積極的に傾聴したりすればいい。部下の意見が受け入れられない場合でも、「それは違うでしょ」と言わず「なるほど、君はそういう意見なんだね。でも会社としては……」などと先に共感の言葉を入れる。部下に迎合するのではないが、部下をよく見て関心や共感を示すことが大切なポイントだとわかってくる。

退職希望者に対する慰留もハラスメントに

本書は退職関係のトラブルにも踏み込んでいる。気をつけたいのが退職希望者に対する必要以上の引き留めだ。退職願を受理しないなどの行為は「慰留ハラスメント」と呼ばれ、企業の評判をも落としかねない悪手だと著者は指摘する。部下の気持ちが最もわからなくなる局面で戸惑うだろうが、部下からの退職の申し出は覆せないと心得たい。

個人的に心強かったのは、モンスター社員、つまり問題行動を起こす社員への接し方が載っている点だ。ヒアリング時には事実と意見を整理する、退職パッケージ(早期退職優遇制度)を用意するなど、退職勧奨を行う手順や「どう切り出すか」といったトークスクリプトも明かされている。気持ちの良い話ではないが、組織全体のパフォーマンスを考える管理職ならいずれ知っておかねばならないことだ。

ぜひ本書から、マネジメントのテクニックと一緒に、上に立つ人としての視点や覚悟を身につけてほしい。

今回の評者 = 戎橋 昌之
情報工場エディター。元官僚で、現在は官公庁向けコンサルタントとして働く傍ら、11万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。大阪府出身。

 

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