■ストックした法則を抽象化
では「法則」はどう見つけるのか。ビジネス書には、著者の「ノウハウ」や「経験則」が書かれている。つまり、「ああなれば→こうなりやすい」といった因果関係が紹介されているので、それを探すのだ。視点と同様、自分の中に多くの法則がストックできれば、様々な局面で仮説形成や問題解決に役立つ。
視点読書、法則読書ともにもう1つコツがあって、それは「抽象化」だ。取り出した視点や法則に対し、「幅広く応用できる"概念"に置き換えられないか」と問いをぶつけてみるのである。言うまでもなく抽象化は物事の本質を捉える、思考法のキーワード。視点と法則を拾い集めた上で、それらを再現・応用可能なように普遍的な概念に捉えなおす、この2段階の手順が10倍読書のカギであり新しさだ。
実際に10倍読書を試してみると、ずいぶんと思考の負荷が上がったのを感じた。その分、これまで気づかなかったその著者の着眼点、思考のプロセスに敏感になり、書かれている内容以上に気づきが深くなる。「次回から(本から得た)新しい視点で読んでみようかな」という気にもなってくる。著者はビジネス書を「思考ドリル」と呼ぶが、その意味を、ぜひ実感してみて欲しい。
今回の評者 = 高野裕一
情報工場エディター。医療機器メーカーで長期戦略立案に携わる傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。長野県出身。信州大学卒。
情報工場エディター。医療機器メーカーで長期戦略立案に携わる傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。長野県出身。信州大学卒。