ひらめきブックレビュー

「頭のよさ」は他人が決める 知的に見られる秘訣とは 『頭のいい人が話す前に考えていること』

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「頭のいい人」と聞いてイメージするのは、おそらくは偏差値が高い秀才とは異なる人物像だろう。私たちにとって「頭のよさ」とは、いったい何なのだろうか。

頭のいい人の思考方法には、いくつかのパターンがある。本書『頭のいい人が話す前に考えていること』は、それを「7つの黄金法則」と「5つの思考法」に整理して解説している。黄金法則はベースとなる考え方や心構えのこと、思考法は思考の質を高める技術を指す。巻頭に本書のエッセンスをまとめるためのシートも付いており、読者がまねすることで頭がよくなっていくプログラムを目指して書かれている。

著者の安達裕哉氏はコンサル業界20年以上のベテランコンサルタントだ。現在はマーケティング会社「ティネクト株式会社」を経営しながら、コンサルティングや記事執筆を行っている。ビジネスメディア「Books&Apps」の運営者でもある。

木が倒れたら音はするか

黄金法則のなかでも大切な基準だと思われるのが「他者」への意識だ。黄金法則その2「頭のよさは、他人が決める」である。

そもそもコミュニケーションは受け手となる他者があってはじめて成立する。「他者がどのように思うか」との認識を持つことの重要性を、著者は米経営学者のピーター・ドラッカーが書籍の中で引用したエピソードを紹介しつつ次のように説く。

無人の山中で木が倒れたとき、音はするか。音を感じるものがいなければ、音はしない。音は知覚されることによって音となるが、コミュニケーションも同様だ。コミュニケーションの主体は自分ではなく、相手にある。

すなわち、頭のいい人とは、まわりの人から「頭がいいと認識されている人」を意味する。論理的思考が「頭のよさ」の重要な要素になるのも、立場や価値観が違う他者に考えを共有するために役立っているからだ。

聞くスイッチの入れ方

著者が提唱する5つの思考法も、相手の立場に立って発揮させるべきスキルだ。例えば、よく言われる「結論から話す」という工夫は、「整理」の思考法に区分される。これは相手が最も聞きたいだろうことを整理して最初に伝え、相手の「聞くスイッチ」を入れる行為だ。クレームへの対応相談なら、話す前に「込み入った相談があって」などと前置きし、聞く側にどんな準備が必要なのかを考える余地を提供する。

「傾聴」も相手主体に話を聞く方法だ。私もよくあるのだが、人が話している最中に「何と応じるべきか」などと考えることがあるだろう。しかし、これでは相手の話をていねいに聞けていない。こんな時は、むしろ安易に意見せず、沈黙も辞さないくらいでいる方が相手の話を深く聞けると著者は説く。

紹介されるのはどれもささやかな技術だが、一つひとつが心構えと結びついて合点がいく。こうした工夫を積み重ねれば、他者の思考を理解し、他者からの信頼を得る人材に近づいていくだろう。それは「頭のいい人」というだけでなく、リーダーと呼ぶべき存在かもしれない。本書はコミュニケーションに悩むリーダーにも示唆がありそうだ。

今回の評者 = 戎橋 昌之
情報工場エディター。元官僚で、現在は官公庁向けコンサルタントとして働く傍ら、11万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。大阪府出身。

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