ひらめきブックレビュー

コーヒー1杯販売の取り分は? 持続可能な生産を考える 『コーヒーで読み解くSDGs』

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あなたはコーヒー1杯に何円くらい支払えるだろうか。私は近所のカフェで1杯300円くらいと手ごろな値段のコーヒーを毎日、愛飲している。だが、コーヒー生産の「持続可能性」を考えると、この金額は安すぎるようだ。

コーヒーを通して、SDGs(持続可能な開発目標)を身近に捉えようと試みているのが本書『コーヒーで読み解くSDGs』だ。環境や経済、社会に影響を及ぼすコーヒー生産についての課題と取り組み事例を、「貧困をなくそう」「飢餓をゼロに」「気候変動に具体的な対策を」といったSDGsの17の目標に関連付けて解説している。

執筆は、コーヒーハンターでミカフェート代表取締役社長のホセ川島良彰氏、東京大学名誉教授の池本幸生氏、国際NGO元職員でミカフェート(東京・千代田)のアドバイザーの山下加夏氏の3人が担当。なお本書は、2021年3月発刊の単行本を大幅に加筆修正し、新書化した。

生産者の取り分はわずか1%

SDGsの最初の目標は「貧困をなくそう」だ。コーヒーの国際価格は総じて低迷しており、コーヒー生産者は貧困に苦しんでいると本書は訴える。20年の相場を本書より引くと、1ポンド(約450グラム)=100セントとなっている。

この相場で例えば、1杯330円のコーヒーに使われるコーヒー豆(約12.5グラム)の価格を計算すると3.25円になる。つまり330円のコーヒーを飲むときの、豆の対価は約1%だ。ここから精選や輸送のコストが引かれるから、生産者の実際の取り分はさらに減る。低すぎる国際相場は、生産者の貧困を招く一因だ。

こうした数字を知って「生産者が不当に搾取されているのでは」と、衝撃を受けた人もいるかもしれない。だが、著者はこの数字が意味する本当の問題とは、消費国が「取り分1%」の質の悪いコーヒー豆を使っていることだと指摘する。低価格・低品質の豆への需要が高まれば、生産者は質の高い豆を作ろうとしない。質の悪い豆しかなければ、コーヒーの魅力は失われる。

つまり、私が1杯300円のコーヒーを飲み続ければ、生産者を貧困から救うどころか、コーヒー産業自体を衰退させかねないのだ。

豆の洗浄で生まれるメタンガスを回収

値段でコーヒーを選んでいた私には耳が痛い。ではどうすればいいのか。本書はSDGsの目標12「つくる責任つかう責任」に関係づけているが、購入する際に国際的な認証ラベル、生産国や農園のアクションを参照するのは、持続可能なコーヒー生産を応援するために有効だ。

例えば、コスタリカには「NAMA café」と呼ばれる気候変動対策プロジェクトがある。コーヒー豆を水洗処理した後に発生するメタンガスの温室効果は二酸化炭素の20倍以上もある。これを回収し、隣接する工場の焼却窯の運転に利用する。設備も簡易で、他国がまねればコーヒー生産におけるエネルギーの循環利用が進むと著者は期待する。

SDGsに向けてできることは何か。まずは、いつもの朝の1杯をよく味わい、豆の故郷に想像をめぐらせてみてほしい。

今回の評者 = 安藤 奈々
情報工場エディター。11万人超のビジネスパーソンに良質な「ひらめき」を提供する書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」編集部のエディター。

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