■時代の変化に背を向けない
一方、業態革命を決断したのは、紳士服の仕立てを手がけるオーダースーツSADA(東京・千代田)である。もともとスーツの製造卸をしていたが、バブル崩壊やリーマン・ショックなど数々の苦難を経て、オーダースーツの製造小売業(SPA)に業態転換し、製造はコスト面で優れる中国工場をメインにすることで逆境を乗り越えた。
中国製は売れないというのが当時の業界の常識。しかし、試しに販売してみると、低コストのオーダースーツは若者にうけた。順調にV字回復していたところ、今度はコロナ禍で売上高が大幅減少。それでも、同社の取り組みがメディアで取り上げられたことなどが功を奏し、20年7月期は大手他社が大幅減収となる中、売上高2%増の38億円超えを達成した。
いずれの会社のトップも、安定ではなく変革を選んでチャンスを得た。何を重視するか、その決断は容易でない。K字経済という時代の波を味方につけるための参考書として、ぜひ本書を開いてみてほしい。
今回の評者 = 倉澤順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。早大卒。