ひらめきブックレビュー

サザン・桑田とは何者か 奥深い歌詞の世界を読み解く 『桑田佳祐論』

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■「表現の自由」を謳歌

バランス感覚についての指摘も面白い。音楽界の第一線で、長年にわたって活躍を続けるのは簡単ではない。桑田氏は「いとしのエリー」(79年)のようなラブソングや「女呼んでブギ」(78年)のようなエロソング、「ピースとハイライト」(2015年)のような政治的要素の濃いメッセージソングまで、あらゆる世界を歌う。その中で、ウェットとドライ、下世話と洗練、ナショナルとパーソナルなどのバランスを取っているという。ビジネスにおいてもリスク分散や利害調整といったバランス感覚は重要だが、桑田氏は絶妙なバランス感覚を持っているようだ。

「桑田佳祐」とは何者なのか。1956年に神奈川県茅ヶ崎市に生まれ、戦後施行された日本国憲法に保障された「表現の自由」を謳歌し、米国や英国の音楽を全身に浴びて高度経済成長期の日本を経験しながら成長した。「『桑田佳祐』と書いて『戦後民主主義』と読む」という著者の言葉の意味は、深い。

著者は40歳過ぎから桑田氏の歌詞が心に刺さるようになったという。そろそろ私もその年齢を迎えるが、本書を通じて改めて桑田氏の歌詞の魅力を知った。桑田ファンでなくとも、その奥深さにうなるのは間違いないだろう。

今回の評者 = 前田 真織
2020年から情報工場エディター。編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。

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