ひらめきブックレビュー

「怒り」とどう向き合うか 原因に目を向け理解する技術 『怒られの作法』

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怒られるのは、誰でもいやだ。しかし、誰でも働いていれば、ミスを犯して上司に怒られたり、理不尽に顧客から怒られたりする事態が必ず起きる。避けられない相手の「怒り」をどう考え、どう付き合っていけばいいのだろうか。

本書『怒られの作法』は、裏社会を取材する機会が多く「日本一トラブルに巻き込まれた経験が多い物書き」を自認する著者の草下シンヤ氏が、人はなぜ怒るのか、なぜ怒られたくないのかなど「怒り」について分析した上で、対処の仕方や向き合う技術を説いている。同氏は彩図社書籍編集長で、『裏のハローワーク』『半グレ』などの著書がある。

ちなみに「怒られ」とは、近年SNS(交流サイト)上に登場した言葉で、「会議で怒られが発生」のように使う。自分が怒られているのに、怒りを事故や天災のように「外在化」し、自分が傷つくことを避ける自己防衛策だというのが著者の分析だ。本書の肝は外在化とは別の「怒りとの向き合い方」にある。

注意してきた相手に「うるせーな」

本書で著者は、自身の怒られたエピソードを数多く紹介する。コンビニエンスストアでアルバイトをしていた時のこと。レジで商品を袋に詰めながら、後輩の店員に「この後どっかいく?」と声をかけた。すると男性客に、「きみが今話す相手は、彼じゃないだろう」と注意された。とっさに「うるせーな」と返したことを、著者は20年たった今も恥じている。

振り返れば、そんな態度をとった背景には「メンツを保ちたい」という思いがあった。著者によれば、怒られて威圧的な態度に出たり、逆に悪くないのに謝ったりしてしまうのは、ダメなやつだと思われたくない、殴られたくないなど過剰に自分の身を守ろうとするからだ。

対話を深めて怒りのパターンを把握

では、怒られたらどうすべきか。自分のことよりまず、相手が怒っている原因に目を向ける。怒りは「意思表示」「自己防衛」「目的達成」の3パターンに分類できる。相手の話に耳を傾け、観察し、納得できなければ「もう一度説明してほしい」と対話を深めていけば、相手の怒りがどのパターンかも見えてくる。

著者は、夜中に呼びつけて激高するヤクザの話に耳を傾け、虐待や裏切りといった過去の悲しみを聞き出した経験を記している。これは特別な例ではないのではないか。突然怒り出す上司がいたら、腰を据えて話を聞いてみてはどうだろう。プライベートがうまくいっていない、上司の上司に問題がある等、予想外の理由があるかもしれない。結局、相手のことを理解したいと本気で思い、そのための行動をとることが、怒りの場面をうまくハンドリングする術なのかもしれない。

相手の理不尽な怒りに対し、「怒られ」の技術が役立つことは、確かにある。しかし、やり過ごさずに受け止めたほうが成長できる場合もある。怒られる場面で「自分を守りたい」という弱さを捨て、相手のことを理解しようとできるか。怒られ方には、自分の生きる姿勢が表れるのだと、本書は教えてくれる。

今回の評者 = 前田 真織
2020年から情報工場エディター。08年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。

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