ひらめきブックレビュー

ポテトチップス老舗を再生 敏腕マーケターが生んだ商品 『湖池屋の流儀』(佐藤章 著、中央公論新社)

商品戦略 マーケティング リーダー論

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スーパーやコンビニエンスストアの店頭で多彩な商品ラインアップに驚くのがポテトチップスだ。なかでも湖池屋はコンセプトや、パッケージのデザインが斬新で目を引く。このところ果敢に攻めている印象だ。

本書『湖池屋の流儀』に、その舞台裏がつまびらかにされている。社長が交代しブランド戦略を軸に新たな一歩を踏み出していたのだ。本書の著者は、同社の変革を率いた佐藤章・現湖池屋代表取締役社長。老舗としてのプライドを再び醸成し、「湖池屋プライドポテト」などの新商品を生み出すに至った経緯や、マーケターとしての心得などを語っている。

佐藤氏は、キリンビール営業本部マーケティング部部長、キリンビバレッジ社長などを経て2016年フレンテ(現・湖池屋)執行役員、同年9月より現職。

一週間でひと月分売れた「プライドポテト」

1953年創業の湖池屋は日本で初めて「ポテトチップスの量産化」に成功した会社だ。北海道で契約栽培している、高品質のじゃがいもを使えることなどを武器に、看板商品「のり塩」をはじめ、「スコーン」、「ドンタコス」などを世に送り出し、地位を固めていった。

しかし、創業以来、赤字を出していなかった同社が、2012年から2年連続で赤字に陥った。背景にはライバル社との安売り競争の激化があった。状況を打破するため、白羽の矢が立ったのが著者だった。著者は前職で「キリンブラウマイスター」「FIRE」といったヒットブランドを生んだ敏腕マーケターだった。

著者のやり方はマーケティングの基本にのっとったものだ。まず業界や競合を徹底的に調べ、主力原料であるじゃがいもについて調査した。湖池屋の市場での立ち位置やスナック菓子とどう対峙してきたかを議論する。地道な作業や考察のなかで、ライバルとの差異化につながる「湖池屋らしさ」をつかんでいく。創業者の小池和夫氏が「(湖池屋は)料理をつくる感覚でポテトチップスをつくってきた」と語る音源を発見し、著者がインスピレーションを受けるシーンは本書のハイライトの一つだ。

そして、素材や皮の剥き方、揚げ方などにこだわった品質本位の「湖池屋プライドポテト」が誕生した。社運をかけた新商品は150円という業界では高めの販売価格にもかかわらず大ヒットした。1カ月の販売目標を1週間で達成したというから驚きだ。

肯定と否定とを繰り返す姿勢

著者は新商品の開発に終始、自信満々であったわけではない。「あれは大丈夫か」などと悩み、不安で眠れぬ夜を過ごし、睡眠時無呼吸症候群まで患っていた。

本書でも語られているが、現代は価値観の多様化により、顧客の心をつかむことに王道がない厳しい時代だ。だが、そうした時代においては、自信を持って進める自己肯定と、その進め方が正しいかを随時修正する自己否定の両輪が必要なのだろう。それを体現しているのが著者であることが本書を通じて見えてくる。

ビジネスパーソンとして「答えのない時代」をどう乗り越えるか。本書は、そのヒントに満ちている。

今回の評者 = 倉澤 順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、11万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。

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