ひらめきブックレビュー

AI武装した上司が奪う仕事 恐ろしい未来を避けるには 『「AIクソ上司」の脅威』(鈴木貴博 著、PHP研究所)

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ChatGPT(チャットGPT)に代表される生成AI(人工知能)の登場で、「AIが人間の仕事を奪う」説の信ぴょう性が増した。しかし、あなたの仕事を奪うのはAIではなく、AIという危ない武器を手にした上司かもしれない――。

そんな未来を予測するのが本書『「AIクソ上司」の脅威』だ。直近のAIをめぐる企業の動向、インドや中国における仕事の消滅など世界の事象の具体例を示し、AIによるネガティブな影響が現実化した未来を描く。そして、そんな未来を迎えないためにどうするべきかを示唆している。

著者の鈴木貴博氏は経営戦略コンサルタント。ボストン・コンサルティング・グループ等を経て2003年に独立。『仕事消滅』(講談社+α新書)、『日本経済 予言の書』(PHPビジネス新書)など多数の著書がある。

AIで部下の起案した事業計画に「ダメ出し」

「AIクソ上司」とは何者か。AIが苦手とする読解力やコミュニケーション力のある上司が、AIを駆使して分析力・予測力・判断力などをパワーアップさせた姿を指す。彼らは、部下が起案した事業計画のあら探しをAIにさせたり、自分の部署がやっかいな案件を担当せずに済む理由をAIにピックアップさせたりする。短期志向かつ、利己的なAIの使い方といえよう。

こうした上司のもとでは、分析・予測などAIが得意とする仕事を担ってきた従業員はダメ出しばかりをくらうようになり、働きづらい。また、日本社会全体に既得権益を守る力が働き、イノベーションが進まない社会になってしまう――。これが、著者の考える一つの未来だ。

ほかにも、心地いい会話ができるAIがリアルの友人をこえる「親友」になる、生成AIが格差を拡大するといったディストピア(反理想郷)的な未来予測が記される。それが「ありえない」と言い切れないのは、過去の予測が当たり始めているからだ。従来、クリエイティブな仕事は2030年〜35年頃に消滅すると予測されたが、2024年現在、すでにAIは人間以上のクオリティーや効率の写真、イラストを生成している。

AIの出現で「自動車王国」日本は衰退するか

著者はまた、AIの出現と「自動車王国」日本の衰退はひとつながりだと述べ、トヨタ自動車をはじめとする自動車業界へのAIの影響に紙幅を割く。

世界の自動車市場ではEV(電気自動車)やSDV(ソフトウエア定義車両)がトレンドだが、国内メーカーはその波に乗り切れずにいる。というのも、部品メーカー、タクシー運転手などの雇用を優先し、EV化やAIを使った自動運転車の開発などに消極的だからだ。その姿勢は、既得権益を守りたい「AIクソ上司」と相似形ではないか。一方の米テスラや中国メーカーはAIを駆使してイノベーションを実現し、画期的な未来を開いていく。結果、彼我に大きな差が生じてしまいかねない。

著者は、こうした事態を回避するために、AIのロードマップを理解すること、ダークサイドを意識するといったポイントを挙げている。「AIクソ上司」が増殖することのない未来に向けて、我々ができることは何か。本書を手にじっくり考えてみたい。

今回の評者 = 前田 真織
2020年から情報工場エディター。2008年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。

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