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サッカーは成長産業 23年12月SDGsフェス フットボールビジネスの未来を考える

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国際舞台で活躍が続くサッカーの日本代表。海外のクラブでプレーする選手も大幅に増え、関心は高まる一方だ。世界市場では従来の欧州・南米に加えアジアや北米の資本が流入し、主要国際大会の出場枠拡大とともにビジネス化が進む。持続的な成長に向け日本サッカー界はどう進むべきか。日本経済新聞社と日経BPが2023年12月7日に開催した「フットボールビジネスの未来を考える」では、識者が今後の在り方を熱く語った。

【講演】新たな価値創出サイクルを

小野 寛幸 氏 ACA フットボール・パートナーズ CEO

近年サッカー界では、経営の合理化や移籍金の高騰化を背景に、クラブを複数持つというトレンドが起きている。我々も複数のクラブへの投資と経営を行なっている。2023年12月までに、3クラブのオーナーシップと4クラブとの業務連携を締結した。

クラブ経営の価値創出サイクルは、実力や人気のある選手を獲得することで競争力を高め、タイトル獲得が近づく結果として人気上昇、放映権やスポンサーからの収入増加によって予算を確保し、さらに有望選手を獲得というもの。これがサッカー界の既存の仕組みで、リーグ内やリーグ間で格差が起きている理由だ。そこで当社は、コンテンツやデータの活用、コミュニティー形成などで新たな価値創出サイクルを作る挑戦をしている。

26年からは国際主要大会でアジアの参加可能国数も増える。東南アジア諸国でもフットボールへの関心が高いので、我々はマネタイズに挑戦している。その内の一つは、フジテレビの制作協力で「RISING STAR」というスカウト番組をベトナムの国営テレビで放映した。

新たなプロジェクトとしては、「ACAFP LAB」を立ち上げた。経営やスポーツ医学のノウハウ、世界のフットボール界のトレンド、競技に生かしているチームのデータなどのオープンソース化を目指す。スポーツ界への就職希望者や、セカンドキャリアを描くプロ選手へそれらを提供することで、持続発展的な仕組みを構築する一助となるだろう。

【トークセッション】学んだ技術 チームに還元

福西 崇史 氏 元サッカー日本代表 サッカー解説者
小野 寛幸 氏 ACA フットボール・パートナーズ CEO
笹井 千織 氏 フリーアナウンサー

笹井 22年カタール大会をどう見ていたか。

福西 海外リーグで活躍する選手が増え、チームの力がベースアップしたと感じた。

小野 現地へ観戦に行ったが、試合の展開によってスタジアムの雰囲気が大きく変わっていたのが印象的だった。先日、森保一代表監督と話した際、第2次森保ジャパンでは「日本のファンを会場に増やしたい」と言っていた。26年の国際大会までに現地にファンを作ることができれば、もっと有利に戦えるはず。我々も啓蒙に協力し、共に戦える場所を作りたい。

福西 サポーターは選手にとって大きな力になる。ドイツ戦では会場が日本を応援してくれていた。そういった環境の影響は大きい。

小野 国際大会を見ていると、海外に出て行くことは非常に大事だと感じる。また、長い目で見たときに、海外の熾烈な環境で戦い抜いた選手が戻ってくると、Jリーグのレベルも上がる。

福西 海外で活躍していた選手が帰国し、現地で経験したことを伝え、それをチームで取り入れることができる。海外で高めた技術で日本代表やチームへ貢献する。この循環が続いていくといい。今は選手から監督へ意見することも当たり前だ。

小野 様々な主張がある人を束ねるという意味で、監督は社長業に近い。人心掌握が必要でモチベーターでもある監督は、ビジネスに近いものを感じる。

笹井 解説者として意識していることは。

福西 例えば、アシストやシュートを決めた選手は目立ち、評価も上がりやすい。一方で、守備やパスでチームに貢献している選手もいる。そこも重要なのだと分かれば、サッカーがより面白く見られて、選手の評価も上がり、そのポジションを目指す子供も出てくるだろう。そうしたサッカーの奥深さを知ってもらいたい。私が中心になって行うサッカーのイベント「種子島BIG VISION」も目的は似ており、地方の子がサッカーに触れ合うきっかけになればと思い、続けている。

小野 キャリアを能動的に選択する際に、実際に見て、触れ合い、経験することが重要だ。福西氏はその機会を提供している。

福西 種子島から本土へ出て行った子もいる。子供たちに海岸清掃も手伝ってもらっていて、サッカーを起点にした交流や学びも生まれている。

【パネルディスカッション】事業化へ企業と選手の歩み寄り必要

高橋 義雄 氏 筑波大学 人間総合科学学術院 准教授/スポーツキャリアサポートコンソーシアム 会長
古賀 亮 氏 三菱UFJ銀行 サステナブルビジネス部 スポーツイノベーションチーム 次長
小野 寛幸 氏 ACA フットボール・パートナーズ CEO
福西 崇史 氏 元サッカー日本代表 サッカー解説者
笹井 千織 氏 フリーアナウンサー

小野 学問的見地からスポーツを俯瞰(ふかん)し、構造的に説明いただきたい。

高橋 まず日本におけるスポーツマネジメント人材の変遷について説明する。多くのスポーツは明治時代に、欧米から大学や高等師範学校、旧制高校に入ってきた。そこでスポーツを学んだ人たちが師範学校や旧制中学に移り、その後、現在の高等学校野球につながるような、中等学校のスポーツへと広がった。現在では部活動の地域移行が議論されている。大学スポーツの産業化も話題である。そして、明治の後半から大正時代にかけてスポーツイベントを支えてきたのは、高等学校でスポーツを学び、親しんで、新聞社へ入社した方々。戦後にテレビが普及してからは広告代理店が大きく支えた。現在ではスポーツ中継のグローバル化が進んでいる。

企業におけるスポーツの価値としては、経営者の娯楽・従業員の労務管理から始まっている。その後、健康管理やホスピタリティにおよび、会社の広告宣伝、企業の社会的責任(CSR)、R&D、人材リクルート、近年では事業開発にまで広がっている。

小野 金融的見地から、スポーツビジネスの可能性について聞きたい。

古賀 スポーツは日本において未来をつくれる成長産業だと見ている。理由は、スポーツは日本全国に活動が存在する点だ。そして、経済・文化・教育を連動させることができる稀有な地域資産である点。さらに、人と社会を引きつけて動かす力を持っているので、事業開発に大きな伸び代がある。当社のスポーツによる事業開発のコンセプトは、「まちづくり(地方創生)」「DX/Web3・0(新技術発展)」「多様性尊重や地域教育(SDGs推進)」の3つだ。スポーツは様々なものを結び付けることができるプラットフォームだと捉えている。

我々はSports Innovation HUBとして、自治体、母体企業、リーグやチーム、スタートアップなどを結節する役割を担っていきたい。特に、スポーツ以外の経済圏との接続において、金融機関として価値を提供できると考えている。プロスポーツ産業の市場規模は8000億円程度と見ている。日本のGDP(国内総生産)が550兆円で、ごくわずかしかないが、活用できれば大きな影響を与えられる。

福西 サッカーが日本に根付くほどビジネスには伸び代ができ、ビジネスとして成功することで文化も根付く。

笹井 スポーツ産業における課題は。

古賀 当社では、スポーツ産業のポテンシャルについて、「社会資本的価値」「事業資産価値」「財務的価値」の3階層に分けて整理した。事業資産価値として企業がスポーツチームを保有する、またはスポーツ興行と関わることで、そのほかの産業の収益性を向上させられる可能性がある。我々は銀行なので財務的価値の強化に力を入れていく。成長戦略に裏付けされた将来のキャッシュフローを計ることが、これからのスポーツ界の課題だと考えている。

そのためには産業内に事業開発人材を増やす必要がある。報酬や労働環境には工夫が必要。就職先としての門戸が開かれていることも重要だ。

笹井 アスリートのセカンドキャリアについて課題はあるか。

高橋 スポーツ庁の委託事業であるスポーツキャリアサポートコンソーシアムを運営している。これまで、アスリートは企業に勤めながら活躍し、パフォーマンスが落ちたら引退して実業に戻るというのが、セカンドキャリアの考え方だった。そうではなく、アスリートとしてのキャリアが人生全体のキャリアに大きく貢献すべきだと考えている。アスリートのキャリアには価値があり、様々なプラットフォームを結びつけるコアな部分になり得る。

古賀 企業側とスポーツ側の双方からの歩み寄りも必要だ。企業側はスポーツの価値を理解し事業活用する発想を持ち、他方でスポーツ側は事業開発の可能性を企業にアプローチできると良い。

高橋 日本のスポーツ環境はジュニアもユースも監督一人に頼りすぎていると感じる。テクニカル、メディカル、マネジメントなど選手を支える複数の人材が必要だ。その点でも、小野氏のACAFP LABには期待している。

福西 スポーツ教育や部活動に関する課題もある。解決を急がないとプレーする場が失われる可能性がある。

古賀 アスリートを目指すための環境作りも重要だ。指導者ごとに変わる導き方よりも、ラボのような形で確立した仕組みとして支える環境が整うと、安心してアスリートの道や、スポーツビジネスに踏み出していけるだろう。

小野 フットボールビジネスの人材育成エコシステムを考えると、選手、企業、教育部門などが歩み寄り、スポーツがプラットフォームとして機能する場を持つことで、可能性が広がっていきそうだ。

◇ ◇ ◇

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