ひらめきブックレビュー

恋愛感情はいらない 令和の若者へ「共創結婚」の提案 『恋愛結婚の終焉』

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2016年に放映されたTBSドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』を見たことがあるだろうか。「契約結婚」をした男女を描き結婚のあり方に一石を投じた。結婚をめぐる意識は近年、大きく変化している。

本書『恋愛結婚の終焉』は、「結婚に恋愛は要らない」と宣言する1冊だ。社会学、歴史学、行動経済学などの調査や知見を分析しながら、恋愛を前提とした「恋愛結婚」の妥当性に疑義を呈する。その上で、従来の結婚観を脱し、現代にふさわしい結婚のかたちとして「共創結婚」という概念を提示している。

著者の牛窪恵氏は世代・トレンド評論家。著書を通じて「おひとりさま」「草食系男子」といった流行語を生みだしてきた。

恋愛結婚の「都合の良さ」

著者はまず、17世紀頃の欧州地域では恋愛と結婚は別物だったことを紹介する。貴婦人が夫以外の愛人を持つことも一般的だった。流れを変えたのは産業革命だ。工場が発達し、家庭内でしていた仕事は外の職場に持ち出される。家庭と職場が分離したため、「夫婦は愛し合うものだ」という情緒的価値観で家庭の崩壊を防いだのだという。

日本に恋愛結婚が定着したのは高度経済成長を経た1970年代だ。恋愛結婚の主流となったのが「社内結婚」である。男女が社内での出会いを通して結婚するが、男性は仕事に集中できるよう専業主婦となる女性を探し、女性は結婚以外の選択肢は少なかった面がある。打算的とも言えるが、自由に恋愛をして結婚したのだから、男性は外で懸命に働き、女性は家庭を守るべきだというロジックが成立していったと著者は分析する。

すなわち欧州でも日本でも、恋愛結婚の概念は「男性が働く間、女性が家庭を守る」という構造を維持するうえで都合が良かった。しかし、この構造が現代の社会にそぐわないことは明らかだろう。

共創結婚の提案

著者はこのように恋愛結婚の不自然さを強調し、「恋愛と結婚を分けて考えよう」と訴える。背景にあるのは、恋愛を前提とするせいで結婚に二の足を踏む若者の姿だ。

2014年の調査で、20〜30代の若者の多くが「恋人が欲しくない」「恋愛が面倒」などと考えていることが分かった。著者は「恋愛離れ」と名づけたが、恋愛に消極的な傾向は今も続き、男女とも生涯未婚率は上昇している。その一方で、若者の8割が「いつかは結婚したい」と望んでいることが明らかになった。であれば、「結婚に恋愛は不要」とすれば若者の結婚へのハードルは下がるはずだ。

こう考える著者が提案するのが共創結婚である。恋愛のような情熱的な感情ではなく、信頼関係を軸にする。恋人より「友達」として相手を見る。相手に何かを与えたい、共に何かをしていきたいという「共創」の感情を持つ。様々に表現されているが、従来よりも広く、ゆるやかなパートナーシップが共創結婚の意味するものだろう。

事実婚や同性婚など多様な結婚のあり方が望まれる時代だ。そうした潮流の背景をつかむとともに、固定観念を見直すきっかけとして、本書を開いてみてほしい。

今回の評者 = 高野 裕一
情報工場エディター。医療機器メーカーで長期戦略立案に携わる傍ら、11万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。長野県出身。

 

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