ひらめきブックレビュー

働きがいを追求する会社 貢献度を点数化し年収に還元 『社員が努力して、働けば働くほど報われる仕組み』

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記録的なインフレが進み、人手不足も深刻ななか、賃上げが企業の課題となっている。継続的な賃上げの実現には生産性向上が必要であり、そのためには社員の意欲を高めることが重要だ。理解はできても、実現は簡単ではない。

ところが、お手本のような企業がある。本書『社員が努力して、働けば働くほど報われる仕組み』は、賃金を含めた社員待遇や社内の仕組みの改善を進めて急成長したCKサンエツの取り組みをまとめた一冊だ。著者の釣谷宏行氏はCKサンエツ社長。北陸銀行勤務を経て、後に「CKサンエツ」となる「シーケー金属」に1986年に入社。工場長などを経験し、97年に8代目社長に就任した。

会社への貢献度合いを点数化

シーケー金属は、1920年に富山県に創業した老舗金属製品メーカーだ。著者の入社当時は「万年中小企業」だったという。釣谷氏は2000年、シーケー金属が筆頭株主だったサンエツ金属の社長にも就任。グループ化して11年に持ち株会社CKサンエツを設立した。同社は東証プライム市場に上場しており、現在の従業員数は約1000人。成長をけん引するのは、新製品開発とM&A(合併・買収)である。

同社はGPTW(働きがいのある会社研究所)が選定する「日本における働きがいのある会社」の上位常連企業であるほど、社員の「働きがい」を重視している。著者は「働きがいのある会社にする」と宣言し、一貫して「正直者がバカを見ない会社」を目指してきた。

その一例が評価制度だ。頑張っても頑張らなくても待遇が同じであれば、社員は頑張れない。そこで、各社員の会社への貢献度合いを点数化して年収に還元する仕組みを導入した。評価項目は職種や職位に応じて変わるが、配点は公開され、毎回見直しが行われる。評価担当者の偏見をなくす仕組みを整えたり、面談で自己評価との差を埋める擦り合わせをしたりしていることが、社員の納得感につながっているようだ。年齢や経歴に関係なく「頑張っただけ評価されるシステム」が、若手社員のモチベーションを高めるのは間違いない。

ライフステージに合う「働き方選択」

労働環境の改善も進めている。一例が「夜勤レス」だ。かつては3交代制で24時間稼働が当たり前だったが、社員の健康に配慮し、現在ではほとんどの工場で夜間は稼働を止めるか、自動運転装置などを導入して無人運転にしているという。

「働き方改革」ならぬ「働き方選択」の考え方も面白い。社員は年に1度、「仕事最優先で超高待遇希望」から「私生活最優先で超低待遇希望」まで4段階の働き方から、希望に沿ったものを選択する。ライフステージに合わせた働き方を主体的に選べるのだ。

思い切った施策はみな、「働きがい」を高める仕組みを目指すなかで生み出されたといえる。一方で、地道な効率化も忘れていない。例えば、日報の紙への転記を取りやめるなど小さな改善を重ねる。ムダな仕事を減らすこともまた、社員のやる気につながるのだろう。「働きがい」とは何か、本書をきっかけに改めて考えてみたい。

今回の評者 = 倉澤 順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、8万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。

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