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女性モヤモヤ 男性社会の交流術やビジネスルールの壁 根深く残るオールド・ボーイズ・ネットワーク(上)

SDGs 働き方 ジェンダー

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SDGs(持続可能な開発目標)の目標5「ジェンダー平等を実現しよう」で日本の後れが目立つ。2023年6月に世界経済フォーラムが発表した「ジェンダーギャップ指数」で日本は146カ国中125位。22年の116位から後退し、主要7カ国(G7)で最下位という状況が続く。安倍晋三政権が成長戦略の柱として女性の活躍を掲げたのは13年のこと。そこから10年もたつのに足踏み状態にある。停滞要因の1つには、男性中心の組織文化や人間関係を指す「オールド・ボーイズ・ネットワーク(以下、『OBN』と略)」の問題が指摘される。「いずれ消えるもの」と見なされながらも根深く残る、OBNの問題点や解消策を探った。

「あそこで決まった?」 大きな支障はないけれど…

新型コロナウイルスが5類に移行し、出社を再開する人も増えてきた。「職場にいると、あ、また男性だけで談笑して物事が決まっているな、と思う場面がたまにあります」。こう話すのは、都内に住む40代の管理職の女性、Aさん。

勤め先は東証プライム上場のメーカーで女性の活躍を促す取り組みも進む。だが、ちょっとした仕事の進め方などを巡り、「あそこで決まったんだろうな」と後から思い当たる、男性だけの談笑の場を見かけることがあるという。「皆同じようなスーツを着て集まっているので視覚的にも印象に残って……。『たまに』だし、業務に大きな支障はないし、仕事をしていれば他にも理不尽なことはある。もう仕方ないかと悟りの境地みたいな心境です」

タバコ部屋やゴルフだけじゃない 女性にとっての「OBN」

Aさんが語るモヤモヤ。男性たちに悪意はなく、フツーに振る舞っているだけなのに一緒に働く女性たちにこんなモヤモヤを生じさせてしまう。それがOBNの一側面だ。

企業の女性活躍推進を支援するNPO法人、J-Win(東京・千代田)では19年度の活動のなかでメンバーの女性管理職らにアンケートを実施。OBNと考えられるものを調べた。OBNといえば、タバコ部屋談義やゴルフ交流が想起されがち。だが、「男性たちがつくってきたビジネスルール」や「上司(役員)に対する忖度(そんたく)文化」なども挙がった(図表1)。

J-Win、「女性の活躍を阻む3つの問題」の1つに位置づけ

「経験してみないと分かんないですよね。自分がマジョリティー(多数派、この場合は企業社会における男性)の場合、マイノリティー(少数派、同・女性)がどれだけアイソレート(隔離)された状況に置かれているかについて認識することってほとんどないと思うんです」。J-Winの会長理事、内永ゆか子さんはこう指摘する。

内永さんといえば、新卒で入った日本アイ・ビー・エムで専務にまで上り詰め、現在はNTTなどの社外取締役も務める「働く女性業界」の先駆者。IBM時代には「ウィメンズ・カウンシル」と称する組織で自社内における女性の活躍推進にも取り組んだ。

その知見を基に、自身が発起人となって設立したJ-Winでは、OBNを「女性の活躍を阻む3つの問題」の1つと位置づけ(他の2つは「将来像が見えない」「仕事と家事/育児とのバランス」)、課題解消に向けた取り組みを進めている。

独では「トーマス・サイクル」という言葉も 

改めて、OBNとは何か。J-Winでは上のアンケート結果を踏まえ、「歴史のある成功した組織や企業の中で培われてきた明文化されていない約束事、ルール、仕事の進め方、会話の仕方等でその組織を支えてきた、暗黙の文化や雰囲気」と定義する。

英和辞典でOBNをひくと「学閥」などとある。海外ではそこから、(一流大学の卒業生同士のように)似通ったバックグラウンドや考え方を持ち、人種の面なども含めて社会で中心的な位置を占めるエリート男性らの非公式なつながりを指すようだ(「オールド・ボーイズ・クラブ」と呼ぶ場合もある)。海外でも女性のキャリア形成を阻む一因と指摘されている。

内永さんによると、ドイツでは「トーマス・サイクル」との表現も。ある優秀な「トーマスさん」が自分と経歴や考え方が似ている、別の優秀な「トーマスさん」を引き上げる。そんなことにちなんだキーワードという。

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