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国連機関UNCRD、自治体SDGsを評価 初の報告書 『2030年までの道筋:地方自治体SDGs達成評価2023』を公開

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名古屋市に本拠地を置く国際連合地域開発センター(UNCRD)は2023年10月、『2030年までの道筋:地方自治体SDGs(持続可能な開発目標)達成評価2023』と題するリポートを公式サイトで公開した。国内の自治体のSDGsの達成状況を分析したもので、国連機関が主導して自治体のSDGs達成度を評価した初のリポートとなる。UNCRDの遠藤和重所長に目的や浮上した課題などを聞いた。

SDGsの「折り返し点」 より効果的に進める契機に

――公開したリポートの狙いや特徴は。

遠藤氏(以下、敬称略) ご存じのようにSDGsは15年の国連サミットで採択され、30年までの達成を目指すものです。23年はその達成に向けた「折り返し点」に当たります。そこで、「上半期」にあたる、15〜22年までの自治体におけるSDGsの達成状況をいったん総括することで、24〜30年までの「下半期」に各地域がより一層、効果的に取り組みを推進していくためのきっかけにしたいと考えました。

自治体のSDGs達成度の「見える化」については20年度から取り組んでいます。一言で言えば、各自治体の取り組みが「やりっぱなし」になってはいけない、との考えからです。

当センターのほか、内閣府が選定する「SDGs未来都市」である名古屋市と豊田市、そして大日本コンサルタント(20年当時。現・大日本ダイヤコンサルタント)など企業3社と「自治体SDGsモニタリング研究会」を立ち上げ、日本の自治体の課題にマッチした指標を選定。47都道府県の比較もできる「自治体SDGs達成度ダッシュボード」などを公開してきました(詳しくは「自治体のSDGs達成度、初の見える化ツールを無償公開」)。

今回のリポートは、その公開済みのツールを再び紹介というものではありません。地域特性も含めた国全体の現時点での達成状況を総括するため、ゴールごとに達成度を改善したり悪化させたりした要因を分析したものです。

もちろん、要因分析といっても、それは当研究会で達成度の算出に使う、1ゴール当たり3〜5ある指標のうち、どれが影響を及ぼしたのかが分かる(指標に使っていないものの動向は分からない)といった一定の限界性はあります。とはいえ、こうした分析は日本のみならず、おそらく世界でも初の試みとなります。

――反響はありましたか。

遠藤 リポートのアップを公表したところ早速、福島県と長野県から「より詳細な状況を知りたい」といったお問い合わせをいただきました。

――今回のリポートはビジネスパーソンにも役に立ちますか。

遠藤 諸外国の動向を見ても、SDGs達成状況の把握は国単位のものが圧倒的です。地域事情までとらえたものは見当たりません。

本リポートの場合、都道府県レベルであれば、各ゴールの達成状況を比較できます。客観性のある同じモノサシで「見える化」した結果なので、全国展開の企業にとっては地域動向を把握してビジネスチャンスにつなげる1つの参考になるのではないでしょうか。もう1つ。SDGsは「バックキャストでこそ達成可能」といった野心的な目標です。このため、社会起業家らが地域の活性化ビジネスを検討する際にも役立てていただきたいと思っています。

自治体の取り組み進む 再エネ普及も達成度を改善

――リポートでは56の客観的な指標を用いて、日本全国の地方自治体(47都道府県、1788市区町村)のSDGs達成状況(15年〜22年)を、地域特性やゴールごとに分析したと聞きます。どんなことが分かりましたか。

遠藤 下の二種類のグラフをご覧ください。SDGsでは17のゴール(目標)が設定されています。これらそれぞれについて都道府県における達成度の平均値を示したのが上の縦棒グラフです。その下に配置した、マイナス20%〜20%の範囲で示した棒グラフは15〜22年の都道府県達成度の平均値の変化率です。なお、達成度を測るために政府統計などから何を指標とし、どう基準化したかといった詳細はリポートをご参照ください。

最も達成度が高かったのはゴール9「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。指標としては「従業者1人当たり製造品付加価値額」「人口10万人当たり特許出願数」などを使っています。次いで高かったのは「失業率」などを指標とするゴール8「働きがいも経済成長も」で、これらは高い水準を維持していると確認できました。

一方、変化率に注目した場合、上半期に最も改善が進んだのはゴール17「パートナーシップで目標を達成しよう」です。18年度からSDGs未来都市が選定されるようになったこともあり、自治体による取り組みは着実に進んでいます。

次いで増加幅が大きかったのは、ゴール7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」です。この指標には、「人口1人当たり再生可能エネルギー導入容量」などを使っています。再エネの普及が進んだことが改善につながりました。特に東北地方で達成度が高い緑の地域が多いのは、東日本大震災が再エネ普及に関係しているのではないかとみています。

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