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世代間ギャップ解消にも効く 管理職が心がけたいこと 根深く残るオールド・ボーイズ・ネットワーク(下)

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ジェネレーションギャップの課題も意識

東レ経営研究所のダイバーシティ&ワークライフバランス推進部長、宮原淳二さんは、このときのメンバーの1人。10カ条の選定背景やポイントを聞いた。

まずは、成功体験の押しつけを戒める第1条について。「いまの管理職世代はお酒の席などでつい自分の成功体験を語ってしまいがち。けれど、VUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代ともいわれるなか、過去の成功体験が引き続き通用する訳でもない。『そういう上司はカッコ悪いよね』と、うちのグループで考えました」(宮原さん)

この項目や「一人ひとりの仕事に関する価値観を尊重」といった第5条は、実はZ世代ら若手とのジェネレーションギャップの解消を意識して入れたそうだ。上司としての課題感を本音で共有し合ったところ、業種などを問わず共通して挙がったのがその問題だったからだ。職場のダイバーシティ推進という点ではOBN解消とも通じるため、若手への目配りの視点も取り入れながら項目を選定したと説明する。

説明を面倒がらずに任せて育てる

もちろん、よりダイレクトに女性の活躍の推進を意図して取り入れた項目もある。「平等に仕事が分担できるよう、マネジメント」といった趣旨の第3条が、それだ。

ここで「平等に」仕事の分担ができるように、と説いているのは、女性の活躍が進まない理由の1つに業務経験における男女差が指摘されているからだ。そのことを裏付けるデータもある。たとえば、パーソル総合研究所が22年6月に発表した「女性活躍推進に関する定量調査」の結果から「業務経験率の男女差」を見てみよう(図表3)。

この回答対象は20〜30代の非管理職層の正社員。図表3のグラフにあるような項目(グラフは上位10項目のみ)の経験率を尋ね、男性での経験率から女性での経験率を引いた。すると、両者の差が14.3ポイントとなった「転勤」を筆頭に、「部門横断的なプロジェクトへの参加」「新規プロジェクトの起案・提案」など10ポイント以上の差が開いた項目だけでも6項目あった。

ただし、そうした差をもたらすものは必ずしも、「育てるなら男性」との管理職の意識だけでもないようだ。宮原さんは仕事を任せる側の視点から、業務経験の男女差の背景に別の事情もある可能性を示唆する。

「部下に仕事を頼むと、女性の場合はきちんと仕事をしたいと考えて、いろいろ確認してくる方が多いですよね」。かつて新卒で入った資生堂で「100人以上の女性部下を持った」という宮原さんは当時の実体験も踏まえて、そう語る。

「確かに、質問1つなく『かしこまりました』と受ける、男性部下に多いパターンは別の危うさもあるかもしれません」(宮原さん)。それでも、女性側もただ質問する代わりに「こう考えました。その理解でよろしいでしょうか」など持ちかけてもいいかもしれない。

というのも、何かを任せる際、「なぜ私がやるんですか」「これはどうしたらいいんですか」などとあれこれ聞かれると、管理職側は「めんどくさい」となりがち。それで「あいつに振っておけば大丈夫」と男性部下に仕事を任せたくなるのだとか。そうしたことで成長機会が偏らないようにするうえでも、第3条では部下に平等に仕事を分担させることを改めて説いている。

意見が分かれた「あうんの呼吸」か説明か

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」(22年)によると、いまの管理職の平均年齢は部長級で52.7歳、課長級で48.8歳。自分たちが部下だった頃は長時間労働も当たり前で、「家族と過ごすより長く濃密な時間」(宮原さん)を上司や先輩と過ごした人が多い。

それだけに「仕事の目的や背景の説明を」と説く第6条については、「それより『あうんの呼吸』の方が早く正解にたどり着ける」とこの項目を入れることに異議を唱えたメンバーもいたそうだ。宮原さんも「ずっと同じ経営環境が続くなら、確かにその方が効率的」とみる。ただし、第1条と同様にいまは変化のスピードが激しい時代。「あうんの呼吸では対応できないことも出てくる」(宮原さん)

もう1つ。この項目は「(仕事の目的の説明やフィードバックなど)上司の関与度が高い方が、部下のやる気を引き出し成長意欲を高める」と示唆するシンクタンクの研究成果も参考にして、入れることにしたそうだ。上司の関与が効果的なのは若手の育成でも同じこと。OBN解消に加えて部下育成という点からも、男性管理職に脱「あうんの呼吸」を呼びかけている。

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