コロナ禍を経て転職希望者が増えている。総務省の「労働力調査(詳細集計)」22年版によると、22年平均の転職等希望者数は968万人。21年平均の897万人から71万人増え、7.9ポイントの増加となった(図表1)。
OBN、女性を転職に向かわせる一因にも
転職支援サービス「リクルートエージェント」を提供するリクルートによると、最近目立つのは「リモートワークができる会社へ」など、コロナ禍で働き方や人生を見つめ直して転職に踏み切る人々だとか。ただ、同社のキャリアアドバイザーによると、数こそ少ないものの、男性中心の組織文化や人間関係を指すOBNの問題から転職活動を始める人もいるという。
たとえば、メーカーで働く30代後半の女性のケース。本人は業務提案なども積極的に出し、異動も含めてキャリアの幅を広げたいと考えている。だが、上司は「女性はそこまでがんばらなくていいよ」と取り合う気配がない。
前回の「女性モヤモヤ 男性社会の交流術やビジネスルールの壁」では、企業の女性活躍推進を支援するNPO法人、J-Win(東京・千代田)の調査から、管理職女性らが「OBNと考えられるもの」に挙げた6項目を紹介した。この例はその中の1つ、「女性への過剰な配慮、思い込み(チャレンジングな業務、緊急・トラブル対応は男性/サポート業務は女性がおこなう)」に当てはまりそうだ。
反対に「上層部は男性ばかり」という金融関係の職場で、管理職候補として期待をかけられて転職活動を始めた人も。「職場は男性社会そのもの。昇進したら仕事と育児の両立は難しくなる」と閉塞感を感じている育児中の40代女性のケースだ。
「転職希望者1000万人時代」が近づくなか、彼女たちのようにOBNが色濃い職場を脱しようと、転職を考える人が増える可能性もゼロではない。労働力不足への対応が問われているだけに、企業にとって人材流出の問題は小さくあるまい。女性たちにモヤモヤを生じがちなOBNを解消し、よりインクルーシブ(包摂的)な職場にするには、どんな工夫ができるだろうか。
男性管理職らがまとめたOBN解消への10カ条
上司としての自分たちの本音を吐露し合って互いの行動を振り返りながら、この課題に取り組んだ大手企業の管理職らがいる。J-Winで19年度に活動した第3期「男性ネットワーク」のメンバーだ。
「上司と過去は変えられない」といわれるほど、上司の存在は部下のモチベーションや成果を左右しがち。彼らは「日本の女性管理職比率の低さは男性上司の振る舞いが影響しているのでは」との仮説を立てた。実は、先述の女性管理職らへの「OBNと考えられるもの」の調査は、その仮説を検証するために実施したもの。寄せられた約300件の回答を分析し、彼らは協議を重ねて「男性の行動を変える愛の10か条」(図表2、以下「10カ条」と略)をまとめた。