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夢は世界制覇 AIチャットボットで社会繋ぐ女性起業家 J-Startup選定企業、ビースポーク社長 綱川明美氏

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「因数分解に人生のエッセンスが宿っている」

――ご自身は文系で会社員時代にIT(情報技術)を磨いた訳ではないそうですね。

綱川:はい。最初はSNSでの呼びかけの後、フリーのエンジニアでフルコミットしてくださった方がいて。毎日2人で深夜2時頃までチャットでやりとりしながら仕事を進め、まずは自社サイトを立ち上げました。

その後、サイトの構成に問題があると分かり、私にとって3社目の勤務先となったフィデリティ投信時代のベンチャーキャピタル部門の日本の責任者に相談。すると、「スーパーマンがいるからダメ元で聴いてごらん。紹介だけする」とエンジニアを紹介してくれた。結果的に、その方を猛烈に口説いて、一時は最高技術責任者(CTO)にもなっていただきました。

ITに関する知見がかなり積めたのは、実現したいサービスの提供にはチャットボットにして自動化することがカギと分かり、社内にチャットボットのプロトタイプを依頼したものの、なかなか上がって来なかったときです。投資家さんに追加出資を頼める状況ではなかったので必死に検索して自分でつくり、運用もやりました。

――「アイデアはあるけれどITに詳しくない」という女性に助言はありますか。

綱川:起業したければ絶対にできる。マインドセットの問題だと思います。困ったらプロに聞けばいい。どの分野にもプロがいるので、立ち上げ当初はそれらのプロが拾ってくれないことや、彼らの時間を使ってはもったいないことを自分で拾う。分からなかったら質問して……とやっていくと知見がたまっていくじゃないですか。

あとは「因数分解」のコンセプトを理解するのが、とても大事なように思います。私は因数分解に人生のエッセンスが詰まっていると思っていて……。何かトラブルがあった際、深くその理由を突き詰めていく作業って、ITのバグ探しとまったく一緒なんです。仮説を立てて細かく分解してみるのがとても大事。大きな塊としてとらえていると問題は永遠に解決できない。

ITは、コスト削減の手段でしかないと思うんです。だからコスト削減のためのボトルネックを特定する必要がある。特定ができたら、そのなかで一番インパクトがありそうなところをさらに特定して、ミニマムのインプットでアウトプットが最大化できるように組み立てる必要がある。ここでも、やはり因数分解の発想が欠かせないと思います。

出産はオープンに、会社を仕組み化するチャンス

――ご自身の産休や育休はどうされましたか。

綱川:休みませんでした。産後も土日があったので2、3日は休んだものの、すぐにスマホで仕事を開始。妊娠が分かったときも、伝えたのは会社と全く関係のない仲のいい友達だけ。誰にも言えませんでした。やっぱり、投資家さんが気になっちゃったんです。出資を受ける際、「結婚するつもりはあるか」「出産するつもりはあるか」と複数の方に質問されたので。さすがにおなかが膨らんで営業の1人には出張で分かってしまいましたが、それも極秘情報扱いにしました。

けれど、社会も変わってきています。いまは(妊娠や出産も)オープンにした方がポジティブなことがあると思うんです。私のように隠してしまうと、会社の仕組み化が進まない。妊娠中の私は「売り上げが下がったら投資家さんの不満が出るだろう」という恐怖心があった。けれど、しっかり情報を開示して探せばサポートしてくれる人は社内にもたくさんいるはずです。そこで権限委譲を進めていく方がヘルシーだしサステナブル(持続可能)だとお伝えしたい。

いまは女性の投資家も増えました。他の仕事と同様に、起業家も性で差別するのは批判される時代です。ちゃんとした投資家を選べば、(ライフイベントがあった際も)逆にアドバイスをくださったり、助けてくださったりする方が出てくるのではないでしょうか。実際、私はデジタル臨時行政調査会の会議予定の変更が重なり、子どもを頼める人がいなかったとき、近所に住む投資家の方の奥様に子どもをみていただいたことがあります。

「会話のデザイン」に強み

――Bebotは自然言語処理を自社で全部手がけているそうですね。特徴を分かりやすく説明していただけますか。

綱川:「会話のデザイン」という領域の話になります。たとえば自治体がチャットボットをつくるとします。通常は職員が、もともとある文書から適当にコピペをしてつくります。でもそうすると、チャットなのに情報が2ページ分もあってスクロールが必要になったり、「これならWEBサイトと同じ」となったりして、突っ込みどころ満載になってしまうんです。

一方、Bebotには会話のデザイナーがいます。文字通り職人技になるのですが、「○○のトピックが出たら次は××がくるね」という風に見越して、前後の文脈も踏まえてストレスフリーに会話が成立しやすくなるように、すべての要素をあらかじめ組み込んでおくのです。

たとえば、成田空港から東京に行くことだけでも、「交通機関は?」「一番安いのは?」「一番速いのは?」「すぐ来るのは?」「支払い手段は?」など、いくつもトピックがありますよね。それをスマートフォンの画面に3〜4行程度の文章と(クリックして飛べる)ボタン2〜3個で全部まとまるように会話を設計しています。

「これ、ママが作ったの!」子どもが自慢できるサービスに

――24年に取り組みたいことや夢を教えてください。

綱川:日本で働く外国人を支援するAIチャットボットの開発・運用に取り組みたい。ドライバーの時間外労働の上限規制が実施される「2024年問題」で、ネット通販で頼んだものを翌日に受け取れない日が来るかもしれない。そんな事態を防ぐうえでも、日本で働く外国人の方々の生活をサポートしていきたいと思います。

Bebotはコロナ禍での情報提供に貢献し、能登半島地震でも情報面で人命救助のお手伝いができたかと思います。災害や疫病などいろいろなことがあるなか、3000万人の会話履歴を基に開発した「安心・安全」を届ける情報の仕組みで、今後も自治体DXなどを支援していきたいです。

「日本発のサービスらしく丁寧に作り込んだAIチャットボットで世界制覇をしたい」というのが私の夢です。さらに子どもが「これ、僕のママが作ったの!」と友達に自慢できて、大人に限らず小学生や幼児でも知っているようなサービスに育てていきたいと思っています。

(聞き手は佐々木玲子)

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