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夢は世界制覇 AIチャットボットで社会繋ぐ女性起業家 J-Startup選定企業、ビースポーク社長 綱川明美氏

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新型コロナウイルスの5類移行でインバウンド(訪日外国人)が回復するなか、好評を博している多言語対応のチャットボット(自動応答システム)がある。2015年設立のビースポーク(東京・渋谷)が開発・運用する「Bebot(ビーボット)」で、日本政府観光局(JNTO)や成田空港、京都市観光協会、ホテルなどが採用している。「世界品質のAI(人工知能)チャットボット」提供に取り組む同社を率いるのは、2歳児の母でもある綱川明美氏。女性の起業家育成は、政府が23年6月に策定した「女性版骨太の方針」の目標の1つ。そのロールモデルともなる綱川氏に、起業の経緯や後進女性へのアドバイスを聞いた。

24年元旦。都内の自宅にいた綱川社長は、Bebotを使っている石川県珠洲市の観光用チャットボットに、住所とともに救助依頼の書き込みが入っているのに気づき、関係方面への電話連絡を急いだ。現地で電話回線がパンクして消防に連絡がつかず、チャットボットが利用されたことに後で気づいたという。

15カ国の外国人技術者らと開発・運用するBebotは、高性能なAIエンジンを搭載した多言語対応のチャットボットだ。言語の壁を越えて、情報で人々と社会を繫(つな)ぐ。コロナ禍での最新情報提供などで脚光を浴び海外の空港も活用。近年は離島を抱える沖縄県竹富町の総合案内はじめ観光以外の行政サービスでも利用が進む。

「世界のトップレベルの技術者を集めたかった」

――23年末時点で従業員数は50人強。半数近くは外国籍の方々と聞きます。多国籍なチームとなった理由は。

綱川氏(以下、敬称略):大別すると2つの理由があります。第1には、世界のトップレベルの技術者を集めたかったこと。一番最近では、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)でマシンラーニングの責任者だった方の引き抜きに成功しました。

当社はいま、「国内外の行政に信頼されるAIチャットボット」として、自治体のデジタルトランスフォーメーション(DX)のお手伝いもしています。しかし、最初に手がけたのは情報による「インバウンドへのおもてなし」でした。多国籍なチームでAIチャットボットを開発・運用すれば、インバウンドの目線に立った情報提供もしやすい。

もう1つは、私自身が「外国人の方々と働きたい」との思いを持っていたことです。私は高校卒業後、英語もできなかったけれど米国に渡りました。相性の問題か、私は母がちょっと苦手(苦笑)。強烈な人なんです。そこで「東京の大学に入るより、どうせなら親元から遠いところで学びたい」という思いがあった。

結果的に、渡米した1年目は語学の習得に充てて、2年目に米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に入学。単位が多くもらえるヘブライ語を取るなどして、UCLAは3年で卒業しました。

とはいえ、やりたいことが特になかったし、留学はお金もかかったので、就活の際は「報酬が良いところ」にしようと考えた。同時に、外国人として米国で働くよりは、バイリンガルとして日本で働いた方が自分の市場価値が高まると考え、帰国することにしました。

けれど、米国暮らしのせいか異文化過ぎて……。日本の金融関係も2社だけ回りましたが、採用担当の方にお会いした瞬間から「違う」と感じるくらい、フィットしませんでした。最終的には、国内で外国人比率が最も高かった豪系の投資銀行からキャリアをスタートさせました。そうした一連の経験も多国籍なメンバーで仕事をしたいという思いにつながっています。

フルリモート&フルフレックスで働きやすく

――多様性を生かす働き方の工夫はありますか。

綱川:フルリモート勤務が可能なことでしょうか。社員の大半は国内居住です。ただ、欧州籍のメンバーが多いので、好きなだけ里帰りできるようにしています。だから、「クリスマスから1、2カ月は母国で仕事をします」という人も。

もう1つ。当社はコアタイムなしのフルフレックスタイム制です。この2つによって、場所や時間の制約を受けずに済む点が多様なメンバーの働きやすさにつながっていると思います。

ゴールまで最短距離で走る方法考え、人材は「周辺」狙う

――どうやって優秀な技術者を世界各地から集めたのですか。

綱川:常にゴールまで最短距離で走る方法を考えるようにしています。人材確保の場合は「ダメ元」でいろんな人に聞いたことが大きいです。

たとえば、「あしたからケーキ屋さんをやるから、一緒にケーキを売ろう」と誘われてもイヤですよね? でも、「あしたからケーキ屋さんをやるから一緒に売ってくれる人を探している。良い人がいたら紹介してくれない?」と言われたら、ちょっと考えませんか。

仕事を変えたい人はそう多くない。だから、自分の友人や知人といった「本人」じゃなくて、その「周辺」を狙いにいくのが大事だと思っています。いまも「昔一緒に働いて辞めてしまった人で、優秀な人を紹介してください」といったお願いを知人らにすることがあります。

ちなみに、17年4月に納品した、最初のお客様も「知り合いの知り合いの知り合い」にあたる方が経営している青森県のホテルでした。

そもそものきっかけは、当社の株主にもなってくださっている高野秀敏さん。人材紹介業や経営顧問業のキープレイヤーズ(東京・港)の代表でエンジェル投資家でもある方です。起業準備で参加したスタートアップのイベントで知り合いました。

高野さんの紹介で、業務委託で営業をお願いするようになった方の「知り合いの知り合い」というところで商談がまとまった。3人くらいたどると、誰かいます。

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