ひらめきブックレビュー

「未定年」世代がすべき準備 27のロールモデルから学ぶ 『博報堂シニアビジネスフォース流 未定年図鑑―定年までの生き方コレクション』

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先日、人事担当者との面談で「定年後のプランはありますか」と問われ驚いた。私は40代で定年はまだ先だと思っていたのだ。だが、世の中を見渡せば、定年後に向けた自律的なキャリア形成の必要を説く声は大きくなっている。焦りを覚えるのは私だけではないだろう。

そこで本書『博報堂シニアビジネスフォース流 未定年図鑑―定年までの生き方コレクション』を開いてみたい。40〜59歳までを「未定年」と定義し、未定年層のセカンドキャリアに向けたアクションや生き方を集めたものだ。登場するのは音楽プロデューサーや総務管理職、育児に重心を置く契約社員など多彩な27名。博報堂シニアビジネスフォースディレクターで、キャリアコンサルタントとしても活動する三嶋(原)浩子氏が、仕事や学びの場で出会った人々を取材し、まとめたものである。

未来の自分を殺さない

印象的だったのは音楽プロデューサーの大田さん(40歳、仮名)だ。大阪の広告業界では知られた存在で、超多忙であった時期に神戸大学大学院に入学し、1年半の履修期間を経てMBA(経営学修士)を取得した。忙しく日々を過ごす中、学びへの意欲は衰えず、今も「次は何を勉強しようか」と考えているという。

著者は彼女の行動力に感嘆しながら、未定年期には「向上心」を掘り起こすことが大事であると説く。大田さんのように、今の仕事に直結しなくとも得た学びは60代以降の武器になるのは間違いない。「目先の仕事を頑張りすぎると、未来の自分が死んでしまう」という耳の痛い言葉も著者は述べる。

「仕事に忙殺されてはいけない」「新たな領域の勉強を視野に入れる」という、未来へ向けたマイルストーンを与えてくれた事例である。

「好き」を軸とする

定年後を考えるのが憂鬱な人に知ってほしいのが、機械メーカーで管理職として働く横川さん(49歳、仮名)の事例だ。自他ともに認める野球好きで、会社のチームの監督までしている。

横川さんは著者のキャリアコンサルタント講座の同期。著者は野球の話になると目を輝かせる横川さんの様子を見て、セカンドキャリアを「野球」起点にしたらよいと想像する。そしてアイデア発想のツール、マインドマップのように、「草野球」→「野球好きの男子として生きる」→「仲間づきあい」などと、熱中したことや気持ちを書き連ねてみせる。すると、横川さんが目指すべき道や未定年期にすべきことがあぶりだされたという。

横川さんの場合、例えば少年野球監督が将来の候補。それに向けて地域のイベントに参加して人脈をつくるなどが「やるべきこと」だ。これは著者が、頼まれもせず試みにつくりあげたキャリアプランだが、将来への不安で思考停止してしまう場合は、このように「好きなこと起点」で楽しく将来を考えてみるのがよさそうだ。

「未定年期に何もしない」のは危険である。週末に1分間だけでもいいから、将来を考える時間を持とうと著者は説く。その時に、本書が手元にあれば心強いだろう。

今回の評者 = 倉澤 順兵
情報工場エディター。大手製造業を対象とした勉強会のプロデューサーとして働く傍ら、11万人超のビジネスパーソンをユーザーに持つ書籍ダイジェストサービス「SERENDIP」のエディターとしても活動。東京都出身。

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