日経メタバースプロジェクト

NVIDIA田中氏「産業メタバース、生成AIで効率化」 日経メタバースコンソーシアム未来委員会メンバーに聞く

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持続可能なメタバース空間の実現に向け、日本経済新聞社が2022年3月に日経メタバースプロジェクトを始動してから1年。3回にわたる「日経メタバースコンソーシアム未来委員会」や「METAVERSE EXPO JAPAN 2022 in CEATEC」でのトークセッションに参加し、産業用メタバースに関する情報を発信してきたのが、NVIDIA エンタープライズマーケティング シニアマネージャー田中秀明氏だ。田中氏にNVIDIAのメタバース関連事業での現状や展望、未来委員会における議論などについて聞いた。

IT人材にメタバースやAI関連の教育を

――メタバースは、建築、製造、土木、物流といった産業においても活用が期待される。NVIDIAは半導体メーカーとして知られるが、近年は人工知能(AI)やメタバース関連のソフトウエア開発でも注目される。産業界でのメタバースの活用の現状は。

「NVIDIAは21年に産業用に活用できるメタバース開発プラットフォーム『Omniverse(オムニバース)』をリリースした。産業分野の活用で目立つのは、現実の空間や物体を仮想空間に再現しシミュレーションなどを行う『デジタルツイン』、メタバース空間を使ったコラボレーション(協業)などだ。例えば、独BMWはオムニバース内で生産ラインにおけるロボットや人の動きをシミュレーションしているほか、産業用ロボットの学習を行ったうえで先端工場を設計している」

――日本国内の産業でも進んでいるのか。

「BMWに追随する動きがようやく出始めたところで、取り組みとしては数年遅れている。原因の1つが人材不足だ。未来委員会をはじめ日経メタバースプロジェクトでもたびたび指摘してきたが、メタバースとAIに関する人材が足りない。企業は関連技術をどう活用するのかプランニングして使いこなす人材がほしい。デジタルツインの活用が進む海外では、各企業が社内に人材を有している。BMWのプロジェクトはBMWの担当エンジニアとNVIDIAが協力しながら進めてきた。一方、国内はエンジニアがシステム構築を請け負う事業者に集中しており、開発が彼ら任せになっている」

「システムを提供する我々も様々な提案をするが、業務を熟知するユーザーがメタバースやAIの特性を理解したうえで具体的なプランを出せることが望ましい。各社が社内でIT部門の人材をトレーニングすることが急務だ。予算を確保し、教育の機会を増やすことを検討してほしい」

――メタバースの普及に向けて導入コストをいかに下げるかも鍵になると未来委員会で指摘した。

「メタバース構築・活用のための様々なソフトウエアが開発されたことで、導入コストは以前ほどかからなくなりつつある。オムニバースはメタバース構築のための開発パートナーが60社に増えて多くのアイデアがスムーズに実現できるようになった。ただ、各社の業務に対応して(システムを)カスタマイズするには、業務と技術の両方に精通した人材が必要で(人材確保を含め)コストがかかることに変わりはない」

メタバースの活用で進む開発環境の効率化

――未来委員会でたびたび話題になったのがAI、なかでも画像、文章、音声、プログラムコードなど多様なコンテンツを生み出す生成AIの急激な進化だ。

「メタバースと生成AIは相性がよく、幅広い活用が期待されている。未来委員会では、自律型アバターが可能性の1つとして取り上げられた。オムニバースはシミュレーションなどで生成AIを活用している。例えば、自動運転車の開発では、AIに運転を学ばせるため、メタバース内に作った街の中で、生成AIで様々な状況を作っている。悪天候やほかの自動車からの幅寄せといったアクシデントなど、起こり得る状況を生成AIで人工的に作り、自動運転用のAIに学ばせている。こうした生成AIの活用によって、迅速にシミュレーションできるようになった」

「今後は、デジタルツインでのシミュレーションに、センサーで把握した現実空間の状況をリアルタイムで反映させながら、現実空間を管理・最適化するといった自律システムも開発されるとみている」

(聞き手は池上輝彦、原田洋)

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