日経Well-beingシンポジウム

市民目線で幸福感を追求 人が交流つながる世界に 第4回 日経Well-beingシンポジウム㊦

ウェルビーイング 講演 パネル討論

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【討論 政策】

自由民主党 参議院議員/日本Well-being計画推進特命委員会 委員長 上野 通子氏
京都大学大学院 地球環境学堂環境健康科学論分野客員教授/東京大学公共政策大学院シニアリサーチフェロー 宮木 幸一氏
東京大学大学院経済学研究科教授 柳川 範之氏
【モデレーター】東京大学公共政策大学院教授兼 慶應義塾大学 政策・メディア研究科 教授 鈴木 寛氏

国際標準も視野に作成

上野(ビデオメッセージ)予測不可能な時代に重視されるのは、個人がよりよく生き、社会全体が人へ投資をすることで誰もが幸せを実感できる環境づくりを進めていくことだ。我々の委員会では、国民の満足度、生活の質を表す指標、特に主観的手法の作成を重視し、データを分析・公表してきた。ウェルビーイング関連の統計調査は様々な省庁で進めている。デジタル庁ではデジタル田園都市国家構想、厚生労働省では給与への満足度、内閣府では高齢者の生きがいを感じる程度などを分析している。今年度はウェルビーイング啓発を見える化して発信していく。 

鈴木 2019年は成長戦略、骨太方針の中でウェルビーイングが位置づけられ、政策のKPI(評価指標)にすることが明示された。内閣府の「ウェルビーイングダッシュボード」について紹介してほしい。 

宮木 ウェルビーイングを多面的に評価する経済協力開発機構(OECD)のBetter Life Indexを参考に内閣府が策定したものだ。他の先進諸国でも同様のものが運営され国際的に標準的な評価法の一つとなっている。分野別の満足度を11項目選定し、主観的な満足度に客観指標もひもづいている。英国はウェルビーイングに先進的に取り組んでおり10年以上前から公的な専用機関を設置。何が本当に有効かを意識し、エビデンスに基づき意思決定している。客観的で比較可能性のある手法で様々な科学的エビデンスが蓄積されることで、良い政策が行われる好循環を生むのではないか。 鈴木 ウェルビーイング政策の現状を聞きたい。 

柳川 今までの政策は、本来手段であったはずの国内総生産(GDP)や企業の利益、成長に焦点が当たってきたが、それを改め、本来目指すべきだった目的を、ウェルビーイングという言葉でしっかり見るようになってきた。ウェルビーイングのKPIは様々な局面で設定されているが、まだ道半ばだ。ポイントとなるのは、デジタル田園都市国家構想、人への投資、企業のウェルビーイングを高める活動の後押しの3つになる。 

鈴木 経済にはどのような影響を与えるのか。 

柳川 経済活動の活性化には自発的に楽しく生きがいを持つことが大事だ。その上でウェルビーイングを高める活動を企業・社会全体が促すことで生産性は高まる。また消費者のウェルビーイングを高めるサービスを提供すれば企業の利益にもつながる。 

鈴木 働きがいの話は主観的生産性、プレゼンティーズムに直結する。 

宮木 プレゼンティーズムは、ウェルビーイングを高めるという目標に向かって一つの客観指標として活用されると、科学的な知見も蓄えられるのではないか。 鈴木 ウェルビーイング政策について今後どう議論を深めればよいか。 

柳川 結果だけでなくプロセスをしっかり評価できる仕組みを作る必要がある。多様な人のウェルビーイングをしっかりつかまえ、きめ細かな指標作りが大事になる。

 

【討論 イノベーション】

<写真右から>
慶應義塾大学大学院 システムデザイン・マネジメント研究科 教授 前野 隆司氏
富士通 理事 Uvance Core Technology本部長 有山 俊朗氏
MS&ADインターリスク総研 代表取締役社長 中村 光身氏
【モデレーター】エール 取締役 篠田 真貴子氏

幸せにつながる関係性を

篠田 おのおののウェルビーイングとのつながりを紹介してほしい。 

中村 当社は保険会社を中心とするグループのリスク関連サービス事業を担っている。リスクマネジメントサイクルの完結、お客さまの事業継続と安定的発展への貢献をパーパスと定め、基礎となる考え方にウェルビーイングを置いている。 

有山 富士通のパーパス「イノベーションによって社会に信頼をもたらし世界をより持続可能にすること」の実現に向け、新事業ブランド「Uvance」を策定し、社会課題の解決に焦点を当てたビジネスを推進している。 

前野 幸せの4因子「やってみよう、ありがとう、なんとかなる、ありのままに」はイノベーションの条件と似ている。幸せとはイノベーティブに新しいものを作ることだ。 

篠田 具体的な取り組みについて伺いたい。 

有山 働くことや生きることの意義を社員が言語化する「パーパス・カービング」を行っている。 

中村 ほぼ毎日、社員の成功事例のニュースを社長のコメント付きで発信している。ウェルビーイング委員会では睡眠調査なども行っている。 

篠田 社員からはどのような反応があるか。 

有山 ジョブ型人材マネジメントで社員の自律的なキャリア選択の機会が広がっている。 

中村 短期的目標に意識が行きがちだが、長期的視点で仕事をするとウェルビーイングが高まることへの理解が進んでいる。 

前野 心理的安全性がある上で緊張感を持つことが大事。ウェルビーイングはぬるま湯ではない。 

篠田 社会へのインパクトについて聞きたい。 

有山 人と人との豊かなつながりに信頼を担保する新技術を入れ世の中を変えていきたい。 

中村 BEYOND SDGsにSWGs(Sustainable Wellbeing Goals)を置くことを目標にし、日本ならではの指標を作り世界をリードできれば大きな価値になる。 

前野 人類みんなが幸せになるという考えが広がる世界をつくりたい。

 

【討論 プレコンセプションケア】

<写真右>
妊活研究会主宰/プロゴルファー 東尾 理子氏
<写真中央>
山王病院 名誉病院長/国際医療福祉大学大学院教授 堤 治氏
柳川 範之氏
<写真左>
【モデレーター】日経xwoman客員研究員/羽生プロ代表取締役社長 羽生 祥子

働き方改革で治療を促進

羽生 プレコンセプションケアは働く女性とどう関係するのか。 

東尾 私は34歳で不妊治療を開始した。なかなか卵子が取れず受精卵も着床せず化学流産も経験した。治療さえすれば妊娠すると考えていたが卵子の老化を初めて知った。 

 日本は教育や社会に問題がありリプロダクティブヘルスの危機が潜んでいる。妊孕(よう)性の知識がないとライフプランも立てられない。企業と国が不妊治療と仕事が両立する環境整備に取り組むべきだ。有職率とともに結婚年齢が上がるのは日本に特異的で、諸外国では社会支援があり働きながら妊娠出産できる。社会的卵子凍結もあっていい。 

羽生 企業にも課題があるのではないか。 

柳川 ワークライフバランスと言われるが、本来はライフ中心で妊娠や出産があり、どうワークを組み立てるか。そうしないと妊娠出産は進まない。 

羽生 不妊治療で働きながら通院する実情は。 

東尾 不妊治療はカミングアウトしにくい。不妊治療のため休みたいと伝えたら子供を産んで退社するのかと言われた例もある。退社する場合も治療理由だと言う人は少ない。離職理由にないので問題が表面化されない。 

 排卵日でないと機を逃す治療もある。 

羽生 いつ休むかわからない従業員を企業はどうインクルージョンして経営すればいいだろうか。 

柳川 本来はそれを当たり前に認める経営にすべきで、それこそ働き方改革だ。細切れの時間で働けるオンラインなど柔軟な働き方を認めるべきだ。 

東尾 不妊治療休暇を制度化する指針も出ているが、病院に行くと伝えるのも当事者には苦痛だ。治療は男性も受ける。理由を伝えず休める時間休があればよいと思う。 

柳川 成果給なら何時間どこにいたかに関係なく給与を渡せる。技術革新でより柔軟な働き方を進めることは社会全体にとっても必要だが1社だけでやるのは難しい。こうした働き方を制度化する環境整備が重要だ。

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