ヘルステックサミット2022

第一生命、健康医療領域での社会課題解決に取り組む 生命保険の枠に留まらない価値創造 人々のwell-beingに貢献

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ヘルステックを活用した先進事例を紹介するグローバルカンファレンス「ヘルステックサミット2022」。第一生命はこのイベントに協賛・参加し、講演を行った。創業120年の歴史を持つ第一生命はこれまでも生命保険だけでなく、様々な社会貢献を通して人々の健康に貢献してきたが、ヘルステックの活用によりその動きはさらに加速している。生命保険会社がヘルスケア領域に取り組む意義や強みについて、同社の取締役常務執行役員である竹内章二氏に聞いた。

企業や技術との接点を得るために有益なヘルステックサミット

――生命保険会社である第一生命がヘルステックサミットに出展した経緯は。

かつて生命保険会社は、被保険者が亡くなった際や、無事に満期を迎えられた時に保険金を支払う保険商品が主流であった。近年は第三分野と呼ばれる、特定の病気やケガに起因する入院費や治療費を支払う保険が増えており、病気の予防や入院時のケアといった健康を維持するためのヘルスケアサービスへの関心が高まっている。

こういった点からも、生命保険事業はヘルスケア領域と親和性が高い。当社は健康・医療領域で社会課題の解決に貢献するため、ヘルステックの活動を進めている。様々な企業や技術と接点を得るためにヘルステックサミットは有益だと考えた。

――第一生命の中期経営計画「Re-connect 2023」は、国内事業の4つの柱の一つに健康・医療を掲げている。その狙いと背景は。

医療の進展によって「生命寿命」が延びている一方、「健康寿命」の延伸が追いつかず両者にギャップが生じた。国民医療費総額が毎年1兆円を超えるペースで増加しており、国民皆保険制度のもと、健康保険組合などの保険者の財政逼迫も社会課題だ。これらの課題に対して、健康増進や発症前の疾病予防・重症化予防に資する取組みを1つの事業領域と捉えて、人々のwell-being(ウェルビーイング)に貢献していきたいと考えている。

不確実な時代を生き抜く、スピード感あるチャレンジ

――ヘルスケア領域の具体的な取り組みにはどのようなものがあるか。

生命保険事業を通じた商品・サービスの提供と、保険事業の枠を超えたヘルスケアの推進という2つの軸で展開している。1つ目の例としては、当社が保有する顧客の健康・医療に関するビッグデータを活用した商品開発がある。具体的な例が「健康診断割引特約」だ。健康診断の受診の有無や、加入時の健康診断の結果は、先端技術の活用によりその後の健康状態と因果関係があることが解明できている。このデータをもとに、健康診断を受けている人や健康状態が基準を満たしている人は加入時に割引が受けられるようにしている。当社が調べたところ、生命保険業界で初めて導入された特約で、今後、保険に加入する顧客にとって定期的な健康診断の重要性を実感し、健康維持に取り組むきっかけになると考えている

2つ目の具体例が、当社グループとみずほフィナンシャルグループがタッグを組み、2021年4月から提供を開始した医療費適正化支援サービス「Healstep(ヘルステップ)」だ。健康保険組合が抱えている課題の解決を通じて、多くの方の健康増進に貢献したいというコンセプトのサービスだ。将来医療費予測のためのAIを活用したデータ分析、分析結果を踏まえた対応方針・保健事業の策定に向けたコンサルティングサービス、保健指導サービス事業者とのマッチング、生活習慣改善などの行動変容を促す健康増進アプリ「QOLism (キュオリズム)」。これらをワンパッケージで提供している。

Healstepを導入している健康保険組合からは、「サービスが一気通貫で、保健事業の策定から実行までトータルでサービスを受けられる」「QOLismアプリが使いやすく続けやすい」「サービスの提供だけでなく、導入・利用勧奨といった支援も含めて行ってもらえる」といった高い評価をいただいている。

――具体的な取り組みを進める上で、第一生命の強みは。

創業時から築き上げてきた基盤体制と地域とのつながりだ。当社には、全国に1000万人の顧客と16万社の取引先企業というリレーションがあり、約4万人の「生涯設計デザイナー」と呼ぶ営業職員がいる。最新のデジタル・テック技術に加え、リアルチャネルによるサービスの利用勧奨の支援を融合することで、サービスの効果を更に高めることができる。また、国内全てのナショナルセンターや47都道府県との連携協定を結んでおり、健康・医療に関する最新情報や予防啓発活動を、生涯設計デザイナーを通じて、幅広く地域の人々に提供していることも、当社ならではの取組みだ。

――一般的に大手企業ほど迅速な対応が難しい印象があるが、第一生命がスピード感を持って取り組めるのはなぜか。

当社の組織風土として、近年は新しいことへのチャレンジを重視していることが挙げられる。事業環境の競争は激化しており、人口減少、金融経済、地政学的な問題などがある不確実な時代を生き抜くためにはスピード感のあるチャレンジが欠かせない。

チャレンジのための施設として、東京・渋谷に先進的な取り組みを自由な環境下で開発・検討するラボ「Dai-ichi Life Innovation Lab, Tokyo」を設けている。若手からベテランの社員まで自由な発想で議論し、良い企画があればPoC(実現性を高める概念実証)によって実現性を素早く検証・判断している。

社外パートナーとの協業が一層重要に

――社外パートナーとの協業をどう考えるか。

Healstepをはじめ、ヘルスケア領域において、すでに多くの社外パートナー企業の知見や技術を活用している。すべてを内製化しようとすると膨大な時間がかかってしまうが、社外パートナーとのエコシステム形成等により技術を取り入れることで質の高いサービスを迅速に構築し、アップデートするなど、顧客の利便性向上に寄与できる。社外パートナーとの協業の重要性はますます高まっていくだろう。何事も顧客の目線で考え、社外パートナーとともに聖域なく取り組んでいきたい

――世界各国でヘルスケア領域の取り組みや技術が進化している。

高齢化など、どの国にも共通する社会課題があり、ヘルスケアへの関心は高まっている。グローバルな知見は貴重で取り入れる価値がある。当社は他の保険会社や金融機関と比較すると、早期からグローバル展開を進めていた。北米、アジア太平洋、欧州のそれぞれにグループ会社があり、イノベーションチームを設置している。先進国、新興国含めて様々なノウハウを取り寄せられる。

22年7月には、英国のインシュアテックスタートアップであるYulife社に出資した。Yulife社は団体保険加入者に対する健康増進活動をサポートしており、例えば、10分間の散歩などの課題をこなすとコインがもらえ、コインをためると様々な特典が受けられるサービスをアプリで展開するなど、顧客が楽しみながら健康増進のための行動変容につなげるノウハウを持っている。このように、私たちは将来にわたって全ての人のウェルビーイングに貢献し続けるために、先進的なビジネスモデルやノウハウを持つスタートアップに対する投資や情報収集を今後も続けていきたい。

――グループビジョンに「Protect and improve the well-being of all」を掲げている。ヘルスケア領域における今後の展望や戦略は。

一人ひとりの健康増進のためには行動変容が欠かせないが、頭では分かっていてもなかなか行動に結びつかない。「あと一歩」の後押しが重要だ。ヘルスケアは日々の行動の積み重ねが大きいため、ポイントを押さえた保険商品や付帯サービスを提供し、グループとしての存在感を発揮していきたい。

Healstepもより多くの顧客に支持されるように更なるサービスの拡充を推進していきたい。健康保険組合だけではなく事業主、自治体へ充実した価値提供ができれば、結果的に地域の人々の健康増進やそのための行動変容にも貢献できる。現状の課題に対応するサービス拡充だけではなく時代に即した更なる進化を継続して顧客の期待に応えるように取り組んでいきたい。

求められる変化のスピードは今後ますます加速し、デジタル化などにともなうニーズの多様化もさらに進むことが予想される。健康・医療領域での価値創造を通じて、人々のwell-beingに貢献していきたい。

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