1974年に日本国内で事業を始めたアフラックは「がん保険のパイオニア」だ。2022年3月末時点で保有契約件数2368万件、契約者数1473万人に達するなど業界をリードしてきた同社が、デジタルテクノロジーを活用した新たな価値の創造を進めている。日本経済新聞社が9月に主催したSuper DX/SUM (超DXサミット)で、IT・デジタル部門を担当する取締役専務執行役員・CTO (チーフ・トランスフォーメーション・オフイサー)・CDIO (チーフ・デジタル・インフォメーション・オフィサー)の二見通氏は「アフラックが描くデジタル社会のカタチ ~保険の枠を超えたエコシステムの構築~」と題して講演し、最新の取り組みを紹介した。
■生命保険の枠超えた新領域でサービス提供
「『生きる』を創る。」というブランドプロミスを掲げる同社は、全社で推進しているDXの取り組みを「DX@Aflac」と称し、保険事業の枠を超えた新たな領域でもDXの取り組みを展開している。
「DX@Aflac」は、「生きるための保険」のリーダーとして、コアビジネスの領域で、お客様のニーズを捉えた新たな商品・サービスの提供をデジタル技術の活用により実現していくことに加え、新たな領域においても、ヘルスケアサービスの提供やスマートシティの実現に向けた支援、エコシステムの構築などを通じて新たな価値の創造を目指していくものだ。
二見氏はDX戦略の1つ目の柱として、「コアビジネスの生命保険領域に注力する。お客様のニーズを捉えた価値ある商品・サービスを提供していく」と紹介。2つ目の柱として、「新たな領域での取り組みとして、ヘルスケアサービスの提供、スマートシティの実現に向けた支援、エコシステムの構築」を挙げ、また、3本目の柱としては、「これら2つの領域を支えるためのシステムインフラや組織、人財育成などの基盤構築」を挙げ、「これら3本柱でDXを加速していく」と明言した。
DXの推進に向け、同社は「ADaaS/Aflac Digital as a Service 」を始動。ADaaSは、お客様サービスの向上や保険販売を支援するだけでなく、ビジネスパートナーや行政、自治体との連携も実現するクラウド型サービスであり、「社会的課題を解決し、お客様や生活者に新たな価値を提供していく」と語った。
■デジタル上で顧客との接点創出
ADaaSのサービスの1つとして、「デジタルほけんショップ」が挙げられる。これは実店舗を持つ同社の保険販売代理店がインターネット上にも店舗を持つことで、これまで来店に至っていなかったお客様やアプローチできていなかった生活者との接点を創出し、実店舗と同様に、新たな商品・サービスを提供する。将来的には仮想空間(メタバース)での店舗開設も目指している。さらにもう1つのサービスとして、2種類からなる「アフラックミラー*」がある。保険販売代理店の店舗に設置する大型のミラーでは、保険料シミュレーションに加え、相性診断や肌診断などの新たなお客様体験の提供により来店のきっかけを創出する。一方、お客様のご自宅に置いていただく小型ミラーでは、運動管理や料理レシピなど生活者の日々の生活に寄り添うコンテンツを提供してQOL (生活の質)の向上を図ると共に、「お客様と保険販売代理店、そしてお客様と当社が双方向にコミュニケーションを取れるサービスを提供していく」という。今後はより多様な方法でステークホルダー(利害関係者)と連携し、社会課題の解決を目指す方針だ。
ADaaSにはAl (人工知能)を活用して各ステークホルダーをつなぐサービスもある。例えば、潜在的なお客様の趣味・嗜好や相談内容、住所などを考慮し、AIがそのお客様にとって最適な保険募集人を紹介する機能があり、今後、新たな領域では患者や要介護者にとって最適な医師や介護士をAIが紹介するサービスの展開も目指す。二見氏は「こうした取り組みを通じ、ADaaSは当社とお客様、保険販売代理店を結ぶだけでなく、病院や自治体、行政機関などとも連携し、生活者が幅広く連携できるプラットフォームに成長・発展することを目指している」と語る。
■自治体との「共創」も進展
同社のDX活用は地方自治体との共創にも貢献している。その1つとして、「調布スマートシティ協議会」への参画がある。本協議会は、「共有価値創造型スマートシティ」をコンセプトとして掲げ、社会的課題の解決と経済的価値の創出の両立を目指すとしており、「それはまさに、当社が目指しているものと一致する」と二見氏は話す。
調布スマートシティの実現に向けた活動は多岐にわたる。その中で同社は「最高水準の医療・福祉サービスの提供」と「デジタルインフラとオープンデータの利活用」という2つの活動を先導し、「キャンサーエコシステムの構築」と「地域包括ケアシステムの構築」を目指している。「キャンサーエコシステムの構築」は特に同社が注力している取り組みで、 「通常生活から、がんの診断・告知、治療、さらに治療後の生活までのすべてのフェーズにおいて、徹底した当事者目線に立ち、がんに関する社会的課題を包括的に解決していく」として、多くのステークホルダーとともにその構築を目指している。
一方、福井県若狭町では「わかさ健活プロジェクト」が始動している。高齢者を中心とする同町の人々の緊急入院や要介護者の増加を抑制する取り組みだ。高齢者への栄養指導や運動指導を通じて、生活習慣を改善し、結果として医療機関の負担や医療費の増加防止にもつなげる。同社はアフラックミラーへ保険や健康にまつわるアプリを提供することによりこの活動を支援。地域住民が食事の内容や運動の様子をアフラックミラーで撮影・送信すると、医師や栄養指導士からアドバイスを受けられる。高齢者が加齢により筋肉量および筋力が低下する「サルコペニア」の予防に貢献する取り組みで、今後の進展が期待されている。
このほか同社は人々の生活や社会に欠かせないエネルギーを供給する会社と協力したイノベーションや、医療DXへ貢献する取り組みも進めている。二見氏は「当社は、ADaaSをさらに発展させるなどこれからもDXを推進し、多様な業界・組織とのパートナーシップによって保険業界の枠を超え、社会と共有できる新たな価値を創造し続けたい」と将来を見据えている。