ヘルステックサミット2022

デジタル技術を活用 新たなヘルスケアモデルの実現を EY Japan「ヘルステックサミット2022」講演から

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新型コロナウイルス禍の影響で遠隔診療が注目され、医療やヘルスケアにおけるデータ活用が日常化してきた。従来のヘルスケアモデルに大きな変化が起きると予測されるが、EYは「インテリジェント・ヘルスエコシステム」の実現について10年近く前から言及してきた。2022年12月に東京都内で開催した「ヘルステックサミット2022」では、EY Japan ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネスリーダーでEY新日本有限責任監査法人の矢崎弘直氏が新たなヘルスケアモデルのイメージについて、EY Japan ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネス・コンサルティングリーダーでEYストラテジー・アンド・コンサルティング パートナーの佐野徹朗氏が新たなヘルスケアモデル実現に向けた最新動向についてそれぞれ講演した。

個々人のヘルスデータを集積・分析し活用

矢崎弘直氏 EY Japan ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネスリーダー

デジタル技術とヘルスデータを活用し、各個人に個別医療を提供する新たなヘルスケアモデル 「インテリジェント・ヘルスエコシステム」について、病院と家庭の2つの場面に絞って見ていきたい。

未来の病院のイメージは、センサーや通信などの様々な技術の飛躍的な進歩により、常時どこにいても個人のバイタルデータが把握できるようになる。病院の診察室や検査室での治療に加え、個人に装着されたセンサーから取得されたバイタルデータを集中管理室でモニターし、人工知能(AI)による分析で異常があった場合に警告を出し、治療の段階に進む。そんな個人対応のヘルスケアモデルが技術的には可能になり、一部では実用化されている。

一方で、家庭は個々人の健康管理を随時、自動的に行う「スマートホーム」へと変化する。様々なセンサーなどによって個々人のヘルスデータは即時に本人や医療機関の端末に転送され、体の異変を示すシグナルがあればアラートが出て次のステップが提案され、家庭自体が健康管理の場になっていく。

ヘルスデータの急速な増加を可能にする環境「IoMT(Internet of Medical Things)」は、いわばあらゆるモノがネットにつながる「IoT」のメディカル版で、医療機器やヘルスケアシステムと「IoT」を組み合わせたサービスである。そこでは、個々人のヘルスデータをいかに取るのかが重要になる。ヘルスデータは数がそろっていればいいというわけではない。集積されて分析して洞察を加え、個人の行動を促す形で活用されることで大きな価値が生まれる。

ヘルスケアデータの集積から行動変容を促す仕組みが、AIの登場で大きく前進している。AIは画像診断やリアルタイム疾病マネジメント、最適化治療プログラム、デジタルトリアージなど、医療やヘルスケアの場面で様々に活用されている。人間の能力を超えた精細さを見せるAIテクノロジーだが、さらに一歩進んで、より人間のようなふるまいが求められ始めており、患者の期待は高まっている。

他の業界に目を向けてみると、多くの人々に支持されている企業やサービスには、ユーザーエクスペリエンス(UX、ユーザー体験)を高めている特徴がある。サービスの利用者に高く支持されているのは、利便性、シームレスな取引、予測性と個別化、幅広い選択肢、透明性といったキーワードである。医療やヘルスケアの世界においても、患者の体験、良質なユーザーエクスペリエンスを備えることが次世代の標準プラットフォームになると思われる。「インテリジェント・ヘルスエコシステム」の成否のカギはコネクト、データフロー、リアルタイムオペレーション、AIの人間的な活用、そして、個別化医療とエクスペリエンスの提供ということになるだろう。

 

「リアルワールドデータ」活用で顧客体験の質向上へ

佐野徹朗氏 EY Japan ヘルスサイエンス・アンド・ウェルネス・コンサルティングリーダー

ヘルスケア業界でDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進が広まるなか、データやテクノロジーが実際に提供できる価値と、その価値が患者中心にシフトしているという観点から話したい。

業界のデジタルシフトを背景にいま世の中で起きている患者中心の医療への変革には、相互に深く関係した3つのキードライバーが存在する。多種多様なデータをもとにした新たな価値創造の根幹となる「データドリブンプラットフォーム」、個々人が最適な医療を選択・享受できる「パーソナライゼーション(個別化医療)」、そして受け手の観点からの医療・サービスの価値が最大化される「カスタマーエクスぺりエンス(CX、顧客体験)」。この3つのキードライバーのうちデータドリブンプラットフォーム、個別化医療については、仕組みとプロセスの構築においてすでに様々な取り組みが進んでおり、次の段階としてその価値を最大化するためのCX向上の重要性が高まっている。

一番意味のあるデータは(レセプトや電子カルテなどの)「リアルワールドデータ」と「リアルワールドエビデンス」(実世界においての証し)になる。幅広いデータの集積と活用については、がん領域が一番進んでいる。がんのバイオマーカーやゲノム情報、パネル検査や遺伝子のパネル検査の情報を集約する取り組みにおいては、1年前は1万人程度であったデータが4万人程度に増えている。また、希少がんや固形腫瘍に焦点を絞ってデータを集めている産学協同の「MASTER KEY(マスターキー)プロジェクト」では過去1年間で3倍のレジストリが集まっており、集積したデータは実際の治験などに活用されている。

データ個別化医療のプロセスが出来上がってきている中で、いかに顧客体験を高めていくかに集中した取り組みが進んでいる。中でも重要な取り組みが、医療従事者と患者とのコミュニケーションだ。事前相談から、診断、服薬指導、最後に薬を受け取るところまでを完全にオンライン化した取り組みも進んでいる。オンラインによる診断と服薬指導の形まではできているが、薬の受け渡しは大きな課題となっている。ドローンによる配送の実証実験なども行われている。こちらは、近いうちに実証実験から実際のオペレーションになってくるだろう。

EYの取り組み事例としては、人工透析の未然防止に向けて各自治体の医療検診や介護データなどをAIで結び、この分析に基づいた保健指導や医療費適正化を支援している。医療やヘルスケア業界と関連各社において、データ集積や共有環境は整備され遠隔のサービス提供が可能になってきており、今後ますます顧客体験を重視したサービスへと発展していく。「インテリジェント・ヘルスエコシステム」の実現に必要不可欠な業界内外のプレーヤーとの連携、ならびに(頻繁に問題を修正する)「アジャイル開発」の価値創造は業界標準として進んでおり、我々も注視している。

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