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ポケモンGO開発会社 仮想空間で高める現実世界の価値 第2回日経メタバースシンポジウム ナイアンティック河合敬一氏講演から

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スマートフォン向け拡張現実(AR)ゲームアプリ「ポケモンGO」などで知られる米Niantic(ナイアンティック)がバーチャルを通じた現実世界の魅力や価値向上に力を注いでいる。同社が目指す「リアルワールドメタバース」とその実現のために展開するプロダクトやサービスについて、河合敬一CPO(Chief Product Officer)が「第2回日経メタバースシンポジウム」で講演した。

楽しみながら健康的に暮らすのを後押し

ナイアンティックはグーグルの社内スタートアップを起源とする企業だ。2015年の独立以来、ロケーション技術やAR技術を用いたスマホゲームやアプリケーションの開発・提供などに取り組んできた。自社開発の「Ingress」や「ポケモンGO」「Pikmin Bloom」は、ARや位置情報の技術などを活用したスマホ向けゲームアプリだ。ユーザーが出かけた場所に出現したARコンテンツなどを楽しめる。23年以降、こうした「リアルワールドロケーションゲーム」を新たに3タイトル追加する予定だ。

当社が実現したいのは、「探検・冒険」「運動」「実世界での交流」の3つの価値だ。テクノロジーを活用して、人々が外に出て探検や冒険を楽しむきっかけをつくるだけでなく、日常生活における活動量を増やすことで、楽しみながら健康的に暮らすことを後押ししたい。また、現実世界のある場所に多くの人が集まる仕掛けを創出することで、人と人との交流を促すことも重視している。

目指すのは、テクノロジーを活用して、現実世界の価値や豊かさをさらに高めていく「リアルワールドメタバース」の実現だ。現実世界とは異なるワールド(世界)をバーチャル上に構築する「メタバース」とは違ったアプローチで、最新のテクノロジーを通じた豊かな社会の実現に取り組んでいる。

札幌のポケモンGOイベントに5万人

AR時代の幕開けにより、私たちはコンピューティングの歴史の大きな転換点に直面している。場所の価値や魅力を向上させる「リアルワールドメタバース」を実現するために必要なテクノロジーやデバイスの開発、新しいわくわくするような事例の蓄積も進んできた。現実世界の場所の価値を取り巻く面白い変化はすでに起きている。

22年夏に札幌市で行われたポケモンGOのイベント「Pokémon GO Fest 2022 Sapporo」では、市内のあちこちにARのポケモンが出現。様々なチャレンジをクリアしながら、ポケモンを捕まえるこのイベントのために3日間で約5万人が同市を訪れた。経済効果は6500万ドル(当時の為替レートで約85億円)と試算されている。

また、当社が開発中のARゲーム「Peridot」は、自分の住む街の様々な風景を見せることでキャラクターが成長する。ゲームをしながら、いつもの通勤路の一本裏道、いつもの公園のそばにできた新しいお店に足を伸ばす機会が増えれば、ユーザーは街の魅力を再発見できるだろう。

場所の価値を高める施策として、テーマパークなどを建設することがあるが、膨大な時間や費用がかかる。AR技術を活用すれば、コストを抑えながら場所の価値を一時的、あるいは恒久的に高めることができる。

コンテンツ開発プラットフォームの提供開始

様々な場所の魅力を高める取り組みを、社外のプレーヤーと共に進めていきたい。22年から、ARコンテンツ開発プラットフォーム「Niantic Lightship」の提供を開始した。魅力的なARコンテンツやアプリケーションを、誰もが手軽に開発できるようにする「テクノロジーの道具箱」のようなもので、ポケモン GOなどの自社開発プロダクトの基盤技術も盛り込まれている。

例えば、スマホで撮影した場所や建物の画像を素早く3Dマッピング化するヴィジュアル・ポジショニング・システム(VPS)は、ARコンテンツと、それを楽しむユーザーとの位置を高精度で測定することを可能とする。現実世界とARコンテンツとの位置情報をほぼ正確にリンクさせるシステムによって、ARで表現したキャラクターの横にいる人にはそのキャラクターの横顔が、後ろにいる人には後ろ姿が見えるようになる。ARのキャラクターが現実世界の壁にぶつかるといった表現ができるようにもなる。現実世界をより豊かな場所にする「デジタルの魔法」の力をさらに膨らませるシステムだ。

22年11月の提供開始以来、日本を含む世界各国で、Niantic Lightshipを活用したARコンテンツが開発されている。場所の価値や魅力を刷新するような、社外の開発者によるコンテンツの開発と、それを多くの人に届けることを今後も支援したい。

屋外での使用を想定したARグラスを試作

少し先の未来では、ARグラスを通じたAR体験が、今よりずっと普及することも予想される。テクノロジーによって場所の魅力を高め、多くの人がいろんな場所に出かける仕組みづくりに注力する当社としては、屋外の強い直射日光の下でも問題なく操作できるARグラスを望んでいる。そうした意識から昨年、米国の半導体メーカー、クアルコムと協働で、屋外での使用を想定したARグラス「Outdoor AR Headset」を試作した。ユーザーに高い没入感と臨場感を約束するARグラスは、AR体験はもちろんのこと、それとひも付く場所の価値にも前向きな影響をもたらすだろう。

ARやロケーション技術などのテクノロジーを通じて、現実世界や日常生活を豊かにする「リアルメタバース」の実現に向けた挑戦を続ける。バーチャルの力でより良いリアルをつくるという思いを同じくする人との連携や協働に積極的に取り組みたい。

【日経からのお知らせ】第2回日経メタバースシンポジウム(2022年12月14〜15日)の模様は日経チャンネルからアーカイブ動画をご視聴いただけます。
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