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海藻でCO2減らすブルーカーボン、22年度は認証5倍 全国で21プロジェクト 企業の参入相次ぐ

SDGs 海洋保全 脱炭素

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海藻などに二酸化炭素(CO2)を吸収させる「ブルーカーボン」のクレジット(排出枠)を創出する動きが国内で広がっている。ブルーカーボンクレジットの認証機関であるジャパンブルーエコノミー技術研究組合(JBE、神奈川県横須賀市)は2月10日、2022年度に認証したプロジェクトの取り組みを発表した。認証プロジェクトは21件と21年度(4件)の約5倍に増え、エネルギーやインフラ関連など企業の参入も相次いだ。沿岸などで海藻が生える藻場(もば)を再生するプロジェクトなどを資金面で支援し、CO2排出量を削減する狙いがある。世界的にも海藻を活用したブルーカーボンはまだ珍しい。海に囲まれた日本ならではの、脱炭素化と海洋保全に同時に貢献できる取り組みとして一段と注目を集めそうだ。

CO2を海中に長期貯留

藻などの海洋植物は光合成でCO2を取り込み、海中に長期で貯留することができる。JBEは国土交通相が国内で唯一、認可したブルーカーボンクレジットの認証機関だ。桑江朝比呂理事長は認証式で「ブルーカーボンは炭素を海底、深い海、水中の3つの貯蔵場所に数千年貯蔵できる。カーボンクレジット制度はCO2を吸収できる漁業関係者などが炭素クレジットを創出し、削減できないCO2排出量を相殺したい企業や団体が購入する効率的な仕組みだ。海外ではマングローブでしか実績がなかったが、日本では海藻(と海草)で世界に先駆けて実施している」と説明した。

JBEは20年度からブルーカーボンクレジットの認証を開始。初年度は1件、21年度は4件を認証した。22年度は北海道から九州までの21件のプロジェクトを認証した。炭素換算の認証数量は全体で3733トンと21年度の46倍に達した。認証数量が最も大きかったのは岩手県洋野町と地元の3つの漁業協同組合を主体とする「増殖溝を活用した藻場の創出・保全活動」で全体の8割以上を占めた。

関西のプロジェクトが8割

件数ベースで8割以上を関西のプロジェクトが占めた。25年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けて、地元企業や自治体関係者のあいだでブルーカーボンへの関心が高まっている。目立つのは空港などインフラを活用する取り組みだ。関西国際空港がある人工島では藻の一種である「カジメ」の母藻を移植したほか、育った藻が波に流されないよう消波ブロックを設置するなど藻場再生に取り組んできた。関空を運営する関西エアポートの担当者は「50年のカーボンニュートラル実現に向けて吸収源対策は重要だ。藻場を通じた地域連携を推進したい」と語った。

藻場を再生するため、漁業関係者が藻を食べるウニや魚を駆除するプロジェクトが多い中、ENEOSホールディングスなどが山口県下関市と大分県名護屋湾で実施する2つのプロジェクトはユニークだ。ウニノミクス(東京・江東)と協力し、通常は海中でつぶしていたウニを陸上養殖し、すしチェーン店などに流通させる取り組み。ENEOSの担当者は「カーボンゼロを目指してクレジットを買うだけでなく、漁協などと一緒に作ったクレジットを活用したい」と今後のプロジェクト拡大に意欲を示した。

日本製鉄は北海道増毛町の海岸に、室蘭製鉄所で発生したスラグ(鉱石から分離した物質)を袋詰めして海藻がなくなる「磯焼け」が進んだ浅瀬に置くプロジェクトを展開。スラグに含まれる鉄分をもとに昆布の藻場を再生することに成功した。担当者は「全国(の事業所)で同様の事例を広げている」と語った。

藻場の再生・拡大を進めるのと並行して、地元の子どもたちへの「環境教育」の場として活用するプロジェクトも増えている。神戸市内を流れる「兵庫運河」にある「きらきらビーチ」ではアマモを移植した藻場を、地元の小学生向けの環境学習に活用している。担当者は「子どもたちと『里海』作りをすると親が協力してくれるようになり、地域住民と関わりをもつことでコミュニティーが生まれる。(子どもたちが)海について考える旗振り役になることを期待している」と述べた。

「日本のベストプラクティスを世界へ」

JBEの桑江理事長は22年度の認証プロジェクトの説明を受けて「全体の85%が関西で、太平洋側が76%と現状では地域的な偏りがある。また、17プロジェクトは漁業関係者が関係している」と語り、ブルーカーボンクレジットを活用した活動が漁業以外の企業や関係者に広がることに期待を示した。

ブルーカーボンクレジット活動を推進する笹川平和財団の角南篤理事長は閉会式で「かつてCOP(国連気候変動枠組み条約締約国会議)の端っこで細々とブルーカーボンのサイドイベントを開催していたが、ここ数年間は話す機会が増えた。日本中でも取り組みが広がってきているが、ボリュームや中身には伸び代がある。(カーボンクレジットという)ファイナンスのメカニズムに取り組んでいるのは画期的だ。日本のベストプラクティスがアジア、世界に貢献してほしい」と総括した。

(原田洋)

 

 

 

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