ヘルステックサミット2022

モデルナ、革新的な新薬開発と社会の行動変容促す 「ヘルステックサミット2022」講演

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新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンの提供でメッセンジャーRNAのプラットフォームを持つ企業としての知名度を高めたモデルナが、IT(情報技術)ベンチャーのアルムグループと戦略的パートナーシップを結んだ。次世代の新薬をどう生み出し、世に送り出そうとしているのか。「ヘルステックサミット2022」の講演では、モデルナ・ジャパン取締役エグゼクティブディレクターパートナーシップ&ストラテジーオフィサーの長山和正氏がモデルナのミッション、アルムグループ創業社長でDeNAメディカル事業本部本部長の坂野哲平氏がパートナーシップの展望についてそれぞれ語った。

スピーディーなワクチン開発と国内製造施設の建設目指す

モデルナはメッセンジャーRNAを生命のソフトウエアと考え、患者のために革新的な次世代の新薬を生み出し、メッセンジャーRNAサイエンスの約束を果たすことをミッションに掲げている。人の体を作る約10万種類のたんぱく質は遺伝子の塩基配列がコード化されたアミノ酸から成る。RNAは4つの塩基配列に対応していることから、メッセンジャーRNAを情報モジュールと捉え、メッセンジャーRNAを用いたワクチンや医薬品を「デジタルプロダクト」と呼んでいる。

アミノ酸の配列特定や立体構造解析は、近年の技術革新で非常に速くなっている。モデルナの技術では、配列特定や構造解析から2日以内にメッセンジャーRNA製品の製造が可能になっている。COVID-19ワクチンでは2カ月以内に人の臨床投与が開始され、11カ月以内に米食品医薬品局(FDA)の承認を得て世の中に供給された。季節性インフルエンザやRSウイルスといった感染症、希少な疾患やがんなどに対するワクチン開発を進めており、2022年11月末時点で48のプログラムが開発ステージにある。難聴の原因になるともいわれるサイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、帯状疱疹(ほうしん)ウイルスなどのワクチンも非臨床段階での開発が進んでいる。

世界では、アカデミアの研究者にメッセンジャーRNAのプロトタイプを提供する「メッセンジャーRNAアクセス」プログラムを実施している。例えば、希少疾患の原因であるたんぱく質を発見した研究者がモデルナにアクセスすることで、モデルナはそのたんぱく質に対応したメッセンジャーRNAのプロトタイプを構築し、アカデミアの現場に届けている。仮説を実際に製品化したらどうなるかの検証の手伝いができる革新的なプラットフォームとプログラムといえる。

日本でのコミットメントとしては、COVID-19のメッセンジャーRNAワクチンをはじめ呼吸器系ワクチンを遅滞なく供給し、より多くの人々を新型コロナ感染症の脅威から守っていきたいと考えている。日本に特徴的な遺伝子疾患や希少疾患に対する治療薬の開発も進めたい。国内でのメッセンジャーRNA製造施設の建設も検討している。感染症によるパンデミックが起きても100日以内にワクチンを供給できれば97%以上の命は救われるといわれており、建設を実現させたい。規制当局や学会、パートナーと緊密に協力して日本の公衆衛生に寄与していきたい。

 

情報の連携から医療資源の適切な分配を実現

新型コロナが日本に襲来して早3年だが、重要なのは社会活動をどう維持しながら感染症対策に取り組んでいくか。医療ITのベンチャー企業であるアルムグループが、先進的な技術をもつモデルナ・ジャパンと提携することで、新しい行動変容を含めた未来の社会が創造できるのではないかと考えている。

アルムグループが提供するサービスにはまず、医療従事者のコミュニケーションアプリがある。医療機関に埋蔵されているコンピューター断層撮影装置(CT)や心電図、ECMO(体外式模型人工肺)の使用状況などの検査データを、病院内や地域全体で共有して適切な診療につなげる取り組みだ。例えば、感染症ワクチンの予期せぬ副作用に対して、かかりつけ医やワクチン接種の現場を専門医がサポートする取り組みが進む。自治体と医療者が入院者や重症者などの情報を連携することで、医療資源の適切な分配につなげられる。

地域医療では地域包括ケアの現場に情報連携用タブレットなどを提供している。介護士や看護師、かかりつけ医や専門医など様々なステークホルダー(利害関係者)を結び、適切な診療・介護や遠隔コンサルテーションを実践できる。このようなシステムを自治体に提供し、国内で通算500万人以上の感染者の療養管理が行われている。

厚生労働省の水際対策指定アプリにもなっている健康管理の無料アプリ「MySOS」も、650万人ほどが利用している。もとは情報を医療機関にいち早く届けて適切な医療につなげる目的で、緊急医療で使用されていたアプリを感染症領域に応用した。現在は「陰性であることを証明したい」「ワクチンの接種回数を旅行時に見せたい」など、利用者から新しいニーズが生まれている。「MySOS」ユーザーから協力者を募り、体重や性別、既往症などの情報を集めて解析し、適切にパーソナライズした形で行動変容やワクチン接種に対する情報発信を医療者や行政と連携して行っている。

日本全国のワクチン接種や疫学調査の体制も提供している。2021年の東京五輪の選手村では検査場のデータ管理、22年の国体では検査体制やデータ管理を提供した。東京都の事業ではワクチンメーカーも含めてタッグを組んで進める公的プロジェクトに採択された。この新たな取り組みにはモデルナとの連携が重要になる。感染症対策も必要な状況が続いているが、多くのパートナーと連携して進めていきたい。

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