地方創生 〜アフターコロナの新しい形〜

SDGs未来都市・横浜の今、これから── オール横浜でチャレンジ 市独自の認証制度創設

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横浜市は「SDGs未来都市」として、あらゆる主体と連携し、持続可能な環境や社会、経済を実現するため、先進的に取り組みを進めている。そして近年は、2050年までの脱炭素化に加え、金融機関との協働により、企業のSDGsの取り組みを後押しする横浜市独自の認証制度「Y-SDGs」を創設した。今回、制度の構築と運用を進める林文子・横浜市長と、高島誠・三井住友銀行頭取、大矢恭好・横浜銀行頭取、大前茂・横浜信用金庫理事長の四氏が、SDGs達成に向けた思いや、今後のビジョンについて、意見を交わした。

SDGs 達成に向けて

 2018 年に国から「SDGs未来都市」に選定された横浜市は、2019 年に「ヨコハマSDGsデザインセンター」を立ち上げ、市民、企業、大学の皆様と連携して、環境・経済・社会的課題の解決に取り組んでいます。昨年7月には、市内の企業や団体の皆様によるSDGs の取り組みやコロナ禍での地域課題の解決を支援していくため、「横浜市SDGs biz サポート補助金」を創設し、現在、83の事業者・団体の皆様にご活用いただいています。

そして、昨年8月からは、事業者の皆様の取り組みをさらに後押ししていくため、金融機関の皆様のご協力のもと、横浜市SDGs認証制度「Y-SDGs」を開始しています。本日お集まりの皆様には、「Y-SDGs」の構築・運用にお力添えいただきました。誠にありがとうございます。

 高島 社会の様々な人や組織に資金を届ける業務を通じ、あるべき社会の構築に貢献する役割を担う金融機関にとって、SDGsは重要な課題の一つ。持てる資産を最大限に活用し、横浜市や、横浜市の企業のSDGs推進を積極的に支援させていただきたいと考えています。

大矢 神奈川・横浜を活動拠点とする地方銀行である私たちの使命は、企業の持続的な成長の支援や地域経済の発展への貢献であり、SDGsの理念とも重なります。地域と共に歩み続ける金融機関としての強みを発揮しながら、横浜市の企業のSDGs推進を支援しています。

 大前 中小企業の健全な発展や、地域社会の繁栄への奉仕などをビジョンに掲げる信用金庫は、持続可能な地域を実現するための金融機関ともいえます。当金庫の強みは、1923年に横浜市で創業して以来、経営に関する様々な悩みを気軽に相談できる金融機関として、地元企業と築いてきた信頼関係です。

持続可能な社会のために

 林 ぜひ皆様とご一緒に「Y-SDGs」を円滑に運用し、SDGsに取り組む市内事業者の皆様をしっかりとご支援していきたいと思っています。

三井住友銀行様には、「Y-SDGs」認証にあたって、SDGsへの取り組みを評価するチェックシートを作成いただくなど、制度設計の段階から携わっていただきました。

 高島 当行はグループのシンクタンクである日本総合研究所と連携し、この制度の設計を支援させていただきました。また、当行のお客様に対し、「Y-SDGs」を活用した第1号の融資にも取り組んでおります。この制度は、SDGsを原動力とした地方創生への拡大を目指し、内閣府が推進する「地方創生SDGs金融制度」にも該当します。SDGsの推進に向けて、今後も様々な可能性を追求したいと思っています。

 林 横浜銀行様には、日ごろより、市内中小企業の支援に幅広く取り組んでいただき、感謝しています。

大矢 私たちは様々なアイデアや技術をもつ人や組織と、それを必要とする企業を結びつける役割を果たしていきます。先日も研究機関と企業とをつなぎ合わせるオンラインの商談会を開催しました。関連する財団を通じたスタートアップへの助成金制度も開始しています。こうした取り組みを通じてサステナブルな地域社会づくりを目指します。

 林 そして、横浜経済のエンジンである市内中小企業にとって、横浜信用金庫様もなくてはならない存在ですね。

 大前 現状、特に中小企業は、「どう取り組んだらよいかわからない」という悩みを抱えていることが多く、きめ細やかなコミュニケーションの中で、理解を深めてもらうプロセスが不可欠です。そんな時こそ、私たちの腕のみせどころです。中小企業の"伴走者"として、SDGsの「最初の一歩」を支えます。

 林 現在、横浜市は「感染症対策の強化」と「経済再生の実現」に全力で取り組んでいます。コロナ禍を乗り越え、横浜経済を力強く再生していくため、この厳しい状況を打破しようと奮闘している市内中小企業の皆様を、よりきめ細かくご支援していきます。

事業者の皆様にとっては、アフターコロナを見据えた取り組みも大変重要です。横浜市は、将来の持続可能な経営・運営につながるSDGs達成に向けた取り組みへのご支援も、充実させていきます。

昨年は、29の事業者の皆様を「Y-SDGs」認証させていただき、間もなく第2回の認証を予定しています。認証を取得した事業者の皆様は、横浜市や「ヨコハマSDGsデザインセンター」のホームページでご紹介させていただくほか、デザインセンターが開催する各種マッチングイベントやセミナーなどへ優先的にご参加いただけます。さらに、4月からは、認証の取得が、市の中小企業融資制度における信用保証料の助成要件に加わったり、市の発注工事における「総合評価落札方式」で加点対象となるなどの優遇措置も追加される予定です。ぜひ多くの事業者の皆様にご活用いただきたいですね。

高島 コロナ禍で苦しい状況に直面している企業も多いと思います。危機の時だからこそ、将来を見据えた行動が求められます。我々はSDGsの取り組みを通じて、地域経済の主体たる企業の挑戦を支えてまいります。

 大矢 地元金融機関として様々な組織と連携しながら、企業にとって真に役立つきめ細やかなソリューションを提供し、企業の本業を通じた持続可能な社会の構築を目指していきます。

 大前 取引先や従業員、消費者に「選ばれる」企業となるためにはSDGs達成へのコミットメントが不可欠な時代です。SDGs達成に資する自律的活動の好循環の形成を地域に根差す金融機関として後押しします。

 林 2030 年でのSDGs達成、そして2050年脱炭素化の実現に向けて、オール横浜でチャレンジしていきたいと思います。今後も、金融機関の皆様とも連携して、力を尽くしてまいりたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。本日は誠にありがとうございました。

(インタビューは2021年3月に実施)

横浜市SDGs認証制度"Y-SDGs"
 横浜市内外の事業者が、SDGsを活用して持続可能な経営・運営への転換等を目指すことを支援するため、横浜市が事業者の組織や体制を環境・社会・地域・ガバナンスの4分野30項目について確認し、3つの区分で認証する制度。約3カ月に1回程度の頻度で認証発行する。制度の実効性を高めるため、金融機関等による投融資判断の材料としての活用も目指す。
 認証を取得した事業者は、認証マークを使用した自社のPRや、市やヨコハマSDGsデザインセンターのホームページ上での事業者名公表などのプロモーション支援が受けられる。4月からは、市の中小企業融資制度における信用保証料助成や市発注工事における「総合評価落札方式」の加点対象となるなどの公的制度におけるメリットも追加を予定している。

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