日経ソーシャルビジネスコンテスト関連特集

社会課題解決 止めぬ挑戦

ソーシャルビジネス

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「ニューノーマル時代の社会課題と企業の役割」

 陶山氏 コロナ禍で様々な課題がみえてきた。事業への影響を含めて紹介してほしい。

 上原氏 グループで手掛ける保険事業でもコロナ禍を受けて中小企業や高齢者をサポートするような商品を展開してきた。保険のあり方も変わってきていると感じる。今後も様々な社会変化や価値観の多様化が進み、それが社会課題になっていくのだと思う。事業を通じて顧客目線で価値をしっかり提供していくのが大事だ。

 藤野氏 投資信託の運用をしているが、非常に厳しい経済の現実を目の当たりにした。観光・航空業界の業績が悪化する一方、IT(情報技術)企業は最高益になるなど勝ち組と負け組が分かれ、過去みられないことが起きている。こういう状況下でどのように社会における再配分をしていくか。投資運用業界に期待されるところでもあると思うが、新しい経済主体が活躍する場もできるだろう。

 黒柳氏 ミャンマーの農村部で2つの事業をしている。小口融資(マイクロファイナンス)業者に業務管理システムを提供するのと、生活を支える家族経営の商店が携帯電話で注文すると店頭まで商品が届く配送サービスだ。ミャンマーもコロナ禍による移動制限で経済に大きなダメージを受けた。2月には軍のクーデターが起きた。コロナ禍の10倍の破壊力といえるような事態に直面した。

上原氏 価値提供も利益も

 陶山氏 私が今注目するのが「ゼブラ企業」。長期的視点から株主だけでなく多くのステークホルダー(利害関係者)とのバランスを取りながら成長する一方、社会課題解決も目指す企業のことだ。企業は社会課題の解決と経済性の両立をどう進めていくべきだと考えるか。

 上原氏 社長に就任して経営の根幹として「共有価値の創造(CSV)」を掲げた。社会に価値を提供するとともに、健全な利益も求めるということだ。コロナ禍では人が幸せに生きるためのインフラが分断された。一方で多様な視点で物事をみるダイバーシティー時代がいよいよ本格化してきている。社会課題を解決する変革の要素を持つ企業でなければ時価総額も大きくなっていかない。長期的なビジョンをステークホルダーと共有するのが大切だ。

藤野氏 持続可能な成長を

 陶山氏 一方で株主還元重視、短期志向が強まっているといった指摘もある。

 藤野氏 株式市場でも四半期開示をもとにした短期視点での売買が目立つ面はある。ただこれからの上場企業に求められるのは持続可能な成長。持続可能と成長どちらかではない。すべてのステークホルダーの満足度をどうやって上げるのか真剣に考えている会社ほど、今回のコロナ対応でも優れた会社が多かったように思う。

 陶山氏 多様なステークホルダーとのバランスという意味で、ミャンマーでは今どのように対応しているのか。

黒柳氏 人々の生活支える

 黒柳氏 クーデター発生直後に配送サービスは一時中断したが、再開している。まず考えるのは従業員の安全確保だ。状況を注視しながらいつでも現場にストップをかけられるよう心がけている。直面している悩みは企業が今何をできるか、何をすべきかということだ。企業が声をあげることで従業員を危険にさらすかもしれない。事業継続のリスクもある。会社としては人権侵害や暴力行為に断固反対する、人々の生活を支えるためにもサービスは続けるというメッセージを従業員に発した。皆さんも引き続きミャンマーに関心を持っていてほしい。

◆パネリストの略歴◆
 上原弘久氏(うえはら・ひろひさ) 1984年に太陽生命保険相互会社(当時)入社。2018年から現職。
 黒柳英哲氏(くろやなぎ・ひでのり) 2015年ミャンマーで起業。小口融資業者用の業務管理システムや個人商店向け配送サービスを手掛ける。第3回コンテスト大賞受賞。
 藤野英人氏(ふじの・ひでと) 国内・外資大手投資運用会社でファンドマネジャーを歴任。2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。

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