地方創生 〜アフターコロナの新しい形〜

地方創生フォーラム(下) 地方創生へ人材育成 住みやすさを発信

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コロナウイルスの感染拡大は、地方でのテレワークという新しい働き方を顕在化させた。高齢化や人口減少に直面する地方にとっては、課題解決に向けた大きな一歩になる可能性を秘めた重要なテーマだ。昨年12月10日、都内で「日経地方創生フォーラム~アフターコロナの新しい形~」を開催。多くの自治体・政府関係者、識者らが一堂に会し、地方創生に向けた様々な取り組みを紹介、議論した。本フォーラムは新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から一般の来場を中止し、ネットを通じ無観客で会議の模様を配信した。

● セッション4 地方創生と人材育成

・パネルディスカッション 大正大学が取り組む「新時代の地域のあり方を構想する地域戦略人材育成」
 キーノートスピーチ/パネリスト
北川 正恭 氏
 パネリスト
衆議院議員、自由民主党デジタル社会推進本部事務総長 小林 史明 氏
ソフトバンク 常務執行役員 法人事業統括 事業戦略・マーケティング担当 藤長 国浩 氏
ソフトバンク 人事本部 採用・人材開発統括部 人材採用部 部長、人事本部 グループ人事統括室 グループ人材推進部 部長、未来人材推進室 担当部長/SBイノベンチャー 管理部 部長 杉原 倫子 氏
大正大学 副学長 首藤 正治 氏
 コーディネーター
大正大学 地域構想研究所 教授 北條  規 氏

・キーノートスピーチ 「産学官金言」の協調を

早稲田大学 名誉教授/大正大学 客員教授 北川 正恭 氏

近代国家の形成、高度経済成長の達成には画一的な中央集権が必要だった。その後、地方分権が叫ばれ、2000年の地方分権一括法の制定を機に、国と地方が上下主従の関係から対等の関係に劇的に変化した。

地方分権は、中央から地方への移管だったが、産学官にとどまらず、金融や労働組合、言論も一体になって官から民へ力が動かなければ、現在の地方創生は達成できない。

地方は人口減に見舞われ、東京は地方に首都を分散できていない。今こそ、40年の地方創生のあるべき姿を描き、それにまい進することが求められている。

行政、大学だけでは限界がある。地方創生のためには、民間経営のいいところも取り入れる必要がある。

持てる力を一つに 北川 氏
創生人材、地元で育成 小林 氏
産学官で社会問題を解決 藤長 氏
働く現場を教材に 杉原 氏
リソース不足補う教育 首藤 氏
人材育み地域へ送り出す 北條 氏

俯瞰的視点から改革の意欲育む

北條 大正大学では「すがもオールキャンパス構想」を推進し、巣鴨のまちを舞台に産学官民の連携事業や社会実装を展開。巣鴨駅から大正大学まで続く、すがも3商店街に、地域の自治体の特産品を扱うアンテナショップを3店舗運営するとともに、地域の様々な取り組みを月刊「地域人」でも紹介している。

首藤 大正大学では、地方創生ではなく地域創生という言葉を使っている。巣鴨など東京都内も対象とするためだ。

宮崎県延岡市長としての経験で言うと、地域創生には様々なリソースが不足している。理論や知識、アイデアはもちろん、人材も足りない。十分な根拠がなく政策を展開するため、金太郎あめ的な施策やコンサルに丸投げなど、実効性の乏しい取り組みになりがちだ。

そこで大正大学では、地学連携の観点から、学融合に取り組んでいる。地域×経済などのかけ算から、学生は物事を俯瞰(ふかん)的に見られるようになるとともに、そこから改革への意欲が生まれる。

東日本大震災をきっかけに全国の自治体と連携し、地域構想研究所を設立した。地域創生学部の特色である「地域実習」では、数週間にわたる実習を行い、学生が地域と交流、成果として提言を行う。

地方自治体の職員を塾生に、地域に居ながらにして学ぶ地域戦略人材塾も開講している。

人材を地域で育成 その成果で地方創生

小林 NTTドコモ勤務時代に多くの規制にぶつかった。これではつくりたい社会はつくれないと、衆議院議員なり、規制改革に取り組んだ。

コロナの時代、テクノロジーが社会実装しやすくなった時代は、地方のくらしの不便さはほぼ解消された。むしろ、自然の豊かさや人とのつながりを享受しつつ、都市の利便性を感じられるようになった。これにより、政治も陳情受け付け型から提案コーディネート型に変わることになった。

政府でも、デジタル社会を推進している。その目的は、行政手続きの簡素化で、職員の手間を省き、地域に出て、多くの人とコラボレーションする時間をつくることだ。規制改革でイノベーションが起こり、通信技術などの最新テクノロジーで地方と都市を結び、情報共有し、多くの人材を地域で育成することが可能になった。この成果を日本や世界にインターネット経由で発信することで地方創生が花開く。

藤長 ソフトバンクは今、人工知能(AI)やロボット、モノのインターネット化(IoT)や5Gなど、進化したソリューションを使い、社会課題の解決に取り組んでいる。その柱となるのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)だ。ファイナンスやビジネスモデルの構築といった専門スキルを身につけた社員が、パートナー企業と共創。最新テクノロジーを活用し、あらゆる業界の人々と社会問題、業界の問題を解決できるように取り組む。

会津若松市では、都市OS(基本ソフト)を活用、住民に対し、ヘルスケアや防災など様々なサービスの提供を検討している。

大正大学とは、大学の情報通信技術(ICT)インフラの提供や、弊社の最新のテクノロジーを講義やゼミで活用いただけるようコンサルティングするなど、連携協定を締結して取り組んでいる。産学官の共創で、国難や社会問題の解決に立ち向かっていきたい。

杉原 ソフトバンクの採用では、「TURE TECH」というブランド名で、地方創生のインターンを行っている。1週間ほど、地域、自治体に出向き、自治体が抱えるリアルな課題を、学生が主体となって共に解決していく。

職員だけでなく、地元の方の声も聞き、フィールドワークもしっかりやって、学生が当事者意識をもって課題解決に臨む。最後は市長にプレゼンし、採択されれば予算もついて、その後の検討も進んでいく。

ソフトバンクの社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」では地域とのコラボレーションも行う。広島県など自治体と共にソフトバンクの社員が地域の方とチームを組み、地域が抱える課題を共に解決する取り組みも行っている。

地方創生の人材をどう育成するか。そのコンテンツとして、例えばソフトバンクでの働き方や仕事のやり方が、何らかのいい素材になり得るのではないか。

人材を統一し総合力にまとめる

北川 このメンバーを1つのテーブルにつけて、それぞれの特徴をみんなが共有し合い、ステークホルダーとして手を組めれば、爆発的な力になると思う。みなさんの持てる能力でどうやって相乗効果を上げていくかを実現する場に、大正大学の地域構想研究所をぜひ活用していただきたい。

せっかくの人材がバラバラにぶつ切りされないよう、従来の縦割りを廃し、ソフトバンクのIT(情報技術)も活用しながら、実現に向けて、まず人材の統一化、みんなの総合力を一つにまとめることを研究の対象にしていただけたらと強く期待する。

北條 大学が社会から求められることは、非常に大きい。新しい地域創生を生み出し、人材をしっかりと育み、成長した人材を地域に送り出せるよう、大正大学は精いっぱい努力していきたい。

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