中小企業のためのオンライン採用学

変わる採用手法 中小企業ができる3つの工夫 ビジネスリサーチラボ代表 伊達洋駆

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新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、採用のオンライン化が進んでいます。「中小企業のためのオンライン採用学」と題した、この連載では、中小企業がオンライン採用にどう対応すれば良いかを解説します。第1回となる今回は、採用のオンライン化によって採用の何が変わったのか。その変化は中小企業にどのような影響を与えるのか。何に工夫すればうまく対処できるのか、について3つの観点から述べます。

■1. 企業と求職者の偶然の出会いが少なくなった → ダイレクトリクルーティングで自ら出会う

採用のオンライン化による第1の変化は、求職者と企業の「偶然の出会い」が減ったことです。従来、就職活動前に知らなかった企業に入社する求職者は珍しくありませんでした。

そうした出会いをもたらす重要な場の一つになっていたのは、「合同説明会」です。しかし感染拡大以降、合同説明会は次々に中止になってしまいました。

ビジネスリサーチラボで、ある企業の内定者にアンケート調査をした際も、昨年のインターン説明会では、中小企業を含めた様々な企業と出会っていたものの、採用のオンライン化が進んだ後は、新たな出会いが難しくなったことが明らかになりました。

求職者の意思決定は、まず多数の選択肢から候補を絞り、次に少数の候補を比較検討する、という流れで進みます(※1)。このことを踏まえると、早い段階で入社先の候補になっていなければ企業にとっては不利であることが分かります。

ところが就活の開始時点で、求職者の多くは一部の「大企業」しか知りません。求職者が新たな企業に出会えなくなると、求職者の間で知名度の低い「中小企業」は苦境に立たされます。かねて、中小企業は「応募者が集まらない」「企業知名度が低い」という課題に悩んでいた(※2)のですから、なおさらです。

では、どうすれば良いのでしょう。偶然出会えないなら、自ら出会いに行きましょう。企業から候補者に対して積極的にアプローチする方法を「ダイレクトリクルーティング」と呼びます。

近年は、自身の情報を登録した求職者に連絡できるオファー型サービスも増えています。そのようなサービスを使うなど、ダイレクトリクルーティングを推進する努力が中小企業には求められます。

■2. 企業や従業員の雰囲気が伝わりにくくなった → 社風や従業員の人柄を言語化

オンライン化による第2の変化は、企業や従業員の「雰囲気」が求職者に伝わりにくくなったことです。その原因は「非言語的手がかり」の減少にあります。

非言語的手がかりとは、身ぶり、手ぶり、口調、抑揚、視線、服装、髪形など言葉以外の要素を指します。オンラインのコミュニケーションはリアル(対面)より、非言語的手がかりが得られにくいことが分かっています。

さて、この非言語的手がかりですが、人の感情や価値観を伝えるのが得意だと言われています(※3)。そのため、非言語的手がかりが得られにくいオンラインコミュニケーションでは、企業の雰囲気や従業員の人柄が十分に伝わらない可能性があります。

このことを裏付けるように、ビジネスリサーチラボが実施した、ある企業の内定者アンケート調査によれば、「リアルで開催されたインターン説明会と比べて、オンラインで開催された会社説明会は従業員の雰囲気が分かりにくい」という結果になりました。

従業員と自由に話をさせることで、求職者に「この会社の雰囲気は良い」「従業員の人柄が穏やか」などと感じてもらっていた中小企業にとっては、厳しい変化だと言えます。

この変化への対策は何でしょうか。ヒントはオンラインコミュニケーションの性質にあります。

確かに前述の通り、オンラインでは非言語的手がかりが減るため、感情や価値観が伝わりにくいのですが、他方で、非言語的手がかりが減ることによって、話の内容に集中しやすくなります。つまり、オンラインは事実を言葉で伝えるのには向いているのです(※3)。

したがって、中小企業がオンライン採用に対応するには「言語化」を進めるのが良いでしょう。例えば、従業員の人柄や社風を言葉で表現できますか。難易度は高いですが、可能な限り言葉にする努力が今まで以上に求められます。

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