前回の「笑う門にはイノベーション」では、組織にとって、笑いやユーモアが重要であることと、その理由について論じた。また、笑いは、組織がイノベーションを起こすためのスパイスになると主張した。
笑いが重要であることは、コミュニケーションや楽しさが重視される現代社会のなかでは、共感を得られることだと思う。だが、どのように笑いを作ればいいのだろうか。それは、多くの人にとって難しいと感じることで、自分には笑いの才能やセンスがないと諦めてしまっている人も少なくないはずだ。
面白さ理解もユーモアセンス
第2回は、笑いとユーモアの研究者という立場と、元お笑い芸人という視点から「組織のなかでどのように笑いを作ればいいのか」について提案をしてみたい。
まずは、研究者の考える「ユーモアセンス」をヒントに、笑いの作り方について考えてみよう。国際ユーモア学会会長であるR・A・マーティンは、ドイツの心理学者ヘロルとスイスの心理学者ルフの考えた「ユーモアセンス」を以下のようにまとめた。
(1)ジョークや他のユーモア刺激を理解する能力(すなわちジョークを「わかる」こと)
(2)ユーモアや笑いの量的、質的な表現の仕方
(3)ユーモラスな発言やものの見方をつくり出す能力
(4)いろいろなタイプのジョークや漫画、その他のユーモア素材のおもしろさを味わうこと
(5)喜劇映画やテレビ放送などの笑わせる情報源を積極的に求める程度
(6)日常で生じたジョークやおかしな出来事を覚えておくこと
(7)ユーモアをストレスに対処するメカニズムとして用いる
日本人は、「ユーモアセンス」を「面白いことを言う」という意味に限定してとらえがちだ。しかし、ユーモアの研究者たちが指摘したように、「ユーモアセンス」には、面白いことを言うだけではなく、面白さを理解すること、面白いことを積極的に探すこと、おかしな出来事を覚えておこうとすること、ストレスを対処するために笑いを活用することなどが含まれる。
日本では、老若男女問わず、面白いことを言うのは苦手だと考える人が多いと思われるが、面白いことを見つけることならどうだろうか。観察力の優れた人や、物事を別の角度から見ることができる人は、たくさんの面白いものを探しているはずだが、それらは必ずしも他者と共有されているわけではない。また、何らかの発言で笑いが取れれば、他者から評価されることがあるかもしれないが、面白いことを発見したり、面白いことを覚えたりしていたとしても評価されることはほとんどないのが現状だろう。つまり、日本の笑いの文化は、「笑わせること」ばかりに重きが置かれているということだ。