あらゆるビジネス機会を求め、世界を縦横無尽に駆け巡る総合商社。製品や独自の技術を持たない商社は、社会や顧客が直面している課題に解決策を提供することができてこそ、その存在意義がある。時代が求めるSDGs(持続可能な開発目標)の実現に向けて、「最適解」を探し当てることが、いままさに求められている。
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地球の声聞き 共に生きよう
アフリカの砂漠地帯に敷いた太陽光パネルで発電し、地中海をまたいで欧州の電力需要を広くまかなう――。灼熱(しゃくねつ)の不毛地帯をクリーンエネルギーの聖地に変える巨大構想がかねてからある。いよいよ夢物語ではなくなるかもしれない。
丸紅がアラブ首長国連邦(UAE)で手掛けた「ギガソーラー」プロジェクトが、その道を示す1つだ。東京ドーム約170個分の敷地に、太陽光パネル約300万枚を敷き詰めた。発電量は原発1基分。パネルの低価格化と高密度の設計、ロボット管理などで、化石燃料を代替しうる低コストを実現した。
常に時代が求める課題をかぎとり、顧客や社会ニーズに応えるために、いち早く行動をする。それが商社に脈々と引き継がれるDNAといっていい。
ただ、常に同じ形とは限らない。ラーメンからミサイルまで、顧客の求めるあらゆる商品を提供できる力が商社の代名詞だった。しかし、もう業態の広さだけで評価される時代ではない。地球環境への配慮と経済活動のバランスを顧客も社会も求めている。それに応じた新たな商社像を自ら形づくらねばならない。その軸になるのが「SDGs」だろう。
ビジネスを進めれば、コンフリクト(摩擦)が避けられない場面も起きる。貧しい人に多くの食料を多く届けたい。一方で、自然の豊かな資源を守らなければならない。そのぶつかりあいの中で、バランスよく時代に合った「最適解」を見いだす。そこに商社が掘り起こすべき新たな機会が眠っている。
丸紅自身、コンフリクトの中で難しい決断をした。温暖化ガスの排出量が多い石炭火力発電事業は新たに手掛けない「脱石炭宣言」だ。気候変動を強く意識する金融機関からの厳しい視線もあった。目先の収益は減っても、太陽光発電など再生可能エネルギーに大きく軸足を移す。選んだのは未来だ。
インドネシアでは東京都の1.4倍の広さの森林を預かり、紙パルプ事業と植林事業を両立する。祖業である繊維事業では古着や端材を繊維原料に戻す再生事業にベンチャー企業とともに乗り出した。
商社ほど産業の川上から川下までサプライチェーン(供給網)に深く携わる業態はない。児童労働問題など人権を強く意識した姿勢でも商社自身が率先していけば、SDGsへの大きな貢献になる。
「もしかすると地球にとって人間は害虫かもしれない。しかし自ら立ち止まってブレーキをかけられるのも人間だ」と柿木真澄社長はいう。地球の声に耳を澄まし、新たな知恵を紡ぎ出す。商社への期待はかつてなく高まっている。(編集委員 藤田和明)
とにかく便利に、安く、大量に、と追求してきたのが、右肩上がりの経済発展の発想でした。しかしそれは、将来のひとたちを犠牲にしているのではないか。まず立ち止まり、「適切な便利さ、適正な価格、数も適量」にすることが正しいと考えるのが、SDGsでしょう。
17あるSDGs目標すべてを一度に実現するのは難しい。例えば飢餓の克服と資源の保護がぶつかることもあるでしょう。バランスよくやらねばならない。そうしたニーズをいち早く察知し、こう変えようと動き、世の中の期待に応える。そこに商社としての使命があります。
当社は昨年、「脱石炭火力」を宣言しました。既存の石炭火力発電事業の発電容量を2030年までに半減させ、新規の石炭火力発電事業には原則として取り組まないというものです。一方で力を入れているのが、再生可能エネルギーです。
森林の保全にも取り組んでいます。インドネシアでは紙パルプ事業と同時に植林を強化しています。木材を消費しながら、豊かな植生にすることで自然に「お返し」しなければなりません。
若い社員がアフリカで、太陽光で充電するランタンを未電化地域の家庭に貸し出す事業に取り組んでいます。明かりのある時間を提供することで、喜んでくれるお客様の笑顔が素晴らしい。SDGsに貢献できるビジネスを展開することで世の中に影響を与えられるのです。
グループ社員全体にSDGsの意識を高くもつための研修も重ねています。それは広くサプライチェーンに関わる商社の責務でもあります。自分としては、SDGsを「サステナブル"ディーセント(適正な)"デベロップメント・ゴール」にしたいと考えています。
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