物流がわかる

32期増収増益の「ニトリ」がつくった物流でもうかる仕組み イー・ロジット 代表取締役社長 兼チーフコンサルタント 角井亮一

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この連載では、先進的な物流の取り組みをしている企業について、著者ができるだけ現地に足を運び、直接体験・取材してきた情報を、自分なりに解釈して解説します。第2回ではニトリホールディングスを扱います。

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「お、ねだん以上。」でおなじみの、家具・インテリア製造小売りチェーンのニトリホールディングス。2019年2月期決算で32期連続の増収増益を達成しました。日本全国47都道府県はもちろん、経済成長著しい中国、台湾にも店舗を展開、2020年2月期中に600店舗突破が見込まれています。

ニトリグループは、家具・ホームファニシングという分野で「製造物流小売業」という、オンリーワンのビジネスモデルを確立しています。

製造物流小売業というのは、商品企画から製造・物流・販売までを一貫して、自社でプロデュースするSPAモデルです。SPAといえば「ユニクロ」や「GU」を展開するファーストリテイリング、MUJIブランドの良品計画などが有名ですが、ニトリのように、物流機能まで自社で行っている例はほかには見当たりません。

同社のビジネスモデルは製造小売(SPA)の一形態ですが、物流機能も自前で行っている点で、より進化したモデルと考えることができます。

同社が扱う商品は、店舗からそのまま持ち帰ることができないような大型の家具やインテリア雑貨が中心です。店舗で代金を精算すれば、それで終わりではなく、お客様の自宅まで届け、商品を設置して初めて利用できるようになる、という商品が多く、物流(=商品の配送)なくしては成立しないビジネスです。

以前に、SPAモデルのファーストリテイリング、良品計画と、ニトリの経営数値を比較したことがあります。その際に、ニトリと他の2社とで大きな違いになっていたのが「在庫回転数」でした。ニトリが「5.04」だったのに対し、ファーストリテイリングが「3.29」、良品計画は「2.30」でした。

ファーストリテイリングや良品計画は、1人で何度も買う商品を扱い、マーケティングに長け、商品開発力にも定評がある会社ですから、在庫のムダを抑えられると考えやすいのですが、ニトリの場合は家具・ホームファッションという購買頻度の低いカテゴリーを扱っているわけですから、この在庫回転数の高さは驚くばかりです。

一貫物流による在庫管理を可能にしている独自の物流システム、自前の物流体制により、商品在庫の効率的な活用を進めているニトリの強さの一端が、この数値に表われていると思います。

ニトリグループでは、大物家具を含めフルラインアップを扱う「ニトリ」、ホームファッションのみを扱う「デコホーム」、小型店フォーマットの「ニトリEXPRESS」に、ネットショップ「ニトリネット」を加えた4つの販売チャネルを展開しています。

雑貨類など店舗からそのまま商品を持ち帰ることができますが、大物家具のように組立や設置が必要なものは別便でお客様の自宅まで届けます。また、ネットショップ(ニトリネット)から購入できる商品もあります。その場合、商品の受け取り場所を店舗に指定することも可能です。デコホームには、ニトリで扱っていないオリジナル商品もあります。

これらの商品を、受け渡し方法、購入場所の違いによって、物流経路をはっきりと分けて管理しているのがニトリの特徴です。商品の形態によって、物流センター(DC)、配送センター(営業所)、発送センターをそれぞれ活用し、お客様の手元に届けます。

物流センターは、海外の工場から輸入した商品の受け入れ・保管を行い、受注情報に基づき、全国の店舗・営業所に商品を供給します。国内7カ所にある発送センターではニトリネット(ネット通販)経由で受注した商品の全国発送を行います。店舗で購入した商品をお客様の自宅へ届ける場合も発送センターが対応します。配送センター(営業所)は国内78カ所に拠点があり、日本全国をほぼカバーしています。

店舗受取りが可能な商品は、物流センター(または国内メーカー)から店舗に商品が送られます。ネット通販の場合は、物流センター(または国内メーカー)からネット通販の物流機能である配送センターに届けられ、そこで注文に応じてピッキング、梱包作業などが行われ、宅配事業者を経由してお客様宅に届けています。

組立・設置が必要なソファや食器棚などの大型家具は、物流センター(または国内メーカー)から、配送センター(営業所)に入り、そこから専門スキルをもった2人のセールススタッフがお客様の下に商品を届け、組立、設置を行います。

ニトリでは、2016年12月より、都市型店舗にある店頭在庫と、ネット通販発送センターにある在庫情報とをリアルタイムで一貫管理するようになりました。そのおかげで、ネット通販で注文した商品の最寄り店舗での受け取り、店舗で商品を確認しながらのスマホアプリからの注文、店舗で購入した商品の自宅配送といった、さまざまな買物スタイルにも、店舗や発送センター・配送センターの在庫を効率的に活用し、スピーディに対応することが可能になりました。

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